まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

ギザギザハートのチャリンコ小僧

2013-03-27 | フランス、ベルギー映画
 それは、いつも通り、何の変哲もない生活の中で起きた悲劇でした…
 金曜日の夜、帰宅した私にmy motherが、犬がうるさいので外に出せと命令。しぶしぶ犬を持ち上げようとしたら…
 ピキっ
 いってええええええええええぇぇーーーーーー!!!!!
 こ、こ、腰が!!??
 突然の激痛に、私は動きも言葉も失い、脂汗を流す苦悶の化石人となったのでした… 
 これって、噂に聞くぎっくり腰?!あまりの痛さに、移動はおろか食事も排泄も困難。くしゃみさえ激痛を呼び、ただでさえプチ引きこもりなのに、週末は自室で寝たきり状態に。とほほほ…
 どうなることかと暗澹となってしまいましたが、整体に行って治療してもらったら、痛みは和らぎました。今も違和感はありますが、フツーに動けるようになって安堵♪
 それにしても…若い若いと言われ、その気になって調子ぶっこいてたけど、肉体は嘘をつかない。おまえはもう若くない!真実、現実を直視しろ!という老体からの警告だったのでしょうか。体にガタがきてることを、腰だけでなく心にも痛感させられました…
 整体師さんが、ちょっとダルビッシュ似♪でも既婚者だってさ!けっ

 「少年と自転車」
 カンヌ映画祭でグランプリを受賞した、ベルギーのダルデンヌ兄弟監督作品。「息子のまなざし」「ある子供」「ロルナの祈り」など、ほとんどの出品作が賞を獲得してるダルデンヌ兄弟監督って、まさにカンヌの帝王って感じがします。
 父親に捨てられ児童養護施設に入れられた12歳の少年シリルは、偶然知り合った美容師サマンサに週末だけ里親になってもらうが…
 社会底辺を生きる人々を描き続けてるダルデンヌ兄弟監督。彼らが今回取り上げたのは、親に棄てられた子供の怒りと悲しみ。いたいけな、何の罪もない子供が、大人や社会の勝手な事情と都合で傷つけられる現実って、ほんと直視できない、けど直視しなければならない深刻な問題です。
 面倒みられないからという理由で、施設に入れられたシリル。まさにポイ捨て。犬や猫でももっと丁寧に慎重に扱われるよ。シリルの気持ちや立場など無視。これってベルギーだけでなく、日本だって同じでしょう。子どもの人権って、やっぱまだまだ擁護できてないなあと切なくなりました。虐待や殺害されるよりは、施設に入れられたほうがマシかもしれませんが、それでも親に棄てられるなんて、心を殺されるようなものではないでしょうか…

 シリルが、いじましく痛ましいんだけど…お涙ちょうだい的みなしご物語、じゃないんですよねえ。親に棄てられ、その理不尽さと悲しみで情緒不安定、彼の触るものみな傷つけたいギザギザハートな言動は、理解はできるだけど…見ていてイライラ、ムカっとするのも事実。可哀想な子にこんなこと思うなんて、私って鬼?!こんな子、絶対引き取れない!可哀想とは思うけど、他人事で良かった…という複雑な感情を抱かされたのは、きっと私だけではないはず。とにかくシリル、施設を脱走するわ、お礼も謝罪もしないわ嘘つくわ、優しいサマンサを振り回し迷惑かけまくるわ、不良に加担して強盗するわ、もう手に負えない鬼っ子ぶり。でも、それが現実なんだよなあ。傷ついた子供が、天使のように愛らしく従順なわけないもん。荒んだシリルの姿に暗澹となりますが、それは彼のせいじゃない。汚れた川に放り込まれた稚魚が、まともに育つはずがない…
 ギザギザハートなシリルが、愛を必死に求める姿が悲しい。自分を捨てたパパに会いに行き、冷たく疎まれても拒絶されても不器用にまとわりつく姿は、本当に痛ましいです。あのパパ、ほんと非道いわ。あんな男が親になっちゃいけないんですよねえ。人間が誰でも親になる権利があるわけではない…
 サマンサの不思議な慈愛にも、いろいろ考えさせられます。何のゆかりもない赤の他人、しかもあんなに迷惑ばかりかける悪ガキを?!何があっても動揺せず、静かに力強く優しくシリルの面倒をみるサマンサ。何が彼女にそうさせたのか謎すぎ。彼女に出会えたシリル、本当にラッキーでしたよ。
 悲惨な現実を悲惨に描かず、ドラマチックで感動的なシーンも台詞もなく、終始淡々とドキュメンタリータッチ、なのがダルデンヌ兄弟監督の一貫した作風。ハリウッドのブロックバスター大作とはまさに真逆なのですが、集中力がない私が最後までダレることなく観入ってしまう独特の静かな緊張感があるのも、ダルデンヌ作品の特性と魅力でしょうか。私がダルデンヌ作品で好きなところは、暗闇の中でふと一瞬、そっと仄かに希望の光が見えるようなラストシーン。人を傷つけた報いを受けたシリルが、立ち上がって自転車で走り去るラストシーンも、今までのダルデンヌ作品同様、ああ、きっと大丈夫、この世は絶望だけじゃないと、小さいけど美しい希望を抱かせてくれる余韻を残してくれました。あの独特の、いきなりブツっと切れるようなお約束の終わり方、すごくホッとするんですよねえ。
 シリル役のトマ・ドレ、日本の子役みたいな可愛さで観客に媚びを売るタイプではない、悪いけどこんな子の里親になれない、という怖さや罪悪感を抱かせるリアル&ナチュラルな演技と見た目が秀逸でした。怒りを含んだ無表情が印象的。サマンサ役のセシル・ド・フランスの、静かに頼もしい存在感も良かったです。ダルデンヌ作品の常連オリヴィエ・グルメは、今回は居酒屋の店長役でチョコっとだけ出演。
 シリルの無責任育児放棄パパ役は、ダルデンヌ作品の秘蔵っ子であるジェレミー・レニエ

 少年時代はシリルみたいな役を演じていたジェレミっちも、パパ役を演じるように。実の子を売り飛ばす「ある子供」、ヤク中の「ロルナの祈り」に続いて、またまたダメすぎる若者役。どんどんダメ男になっていくダルデンヌ作品のジェレミっちです。ジェレミっちのガッチビ体格ときれいな金髪が好き

 ジェレミっちのがフランスのポップスター、クロクロを演じた「最後のマイ・ウェイ」日本公開決定
コメント (2)
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