


俳優になることを夢見ているパン職人のピエトロは、ローマにある古い屋敷に引っ越す。そこには、戦時中に謎の死を遂げた舞台俳優たちの幽霊が棲んでいた…
イタリアンイケメン、エリオ・ジェルマーノ目当てで観たのですが、思いのほか愉快で心あたたまるコメディでした。
幽霊に振り回される主人公…というのは、古今東西の映画やドラマでよくある設定で、この映画もそれほど飛びぬけた斬新さはないのですが、幽霊よりも主人公のピエトロのほうがヤバい、というのがこの映画の面白いところでしょうか。

ピエトロくん、はじめはちょっとシャイなフツーのイケメン、かと思ってたのですが。乙女なしぐさや表情が可愛すぎる!もしかして?…やっぱゲイでした(笑)。恋人を招待するために、越してきたばかりの新居をイソイソ磨き上げたり、手料理をウキウキこしらえたり。やって来た彼氏(も、イケメン)の前で、ドキドキときめいてる様子が、これまたso cute!しかし…男は彼氏などではなく、俺につきまとうのはやめろ!と抗議に来たストーカー被害者だった




で、こっぴどくフラれて傷心のピエトロを励まし慰めてくれたのは、屋敷に棲みついてる劇団ゴースト。ピエトロが彼らを怖がったりウザがったりしてたのはちょっとの間だけで、すぐに意気投合して和気藹々な同居生活。俳優志望のピエトロに演技指導してくれたり、ゴーストたちはみんな楽しくていい人ばかり。ふとっちょの少年が特にいい味だしてました。周囲の人間よりもゴーストに気を許して馴染んじゃってるピエトロ、やっぱ変な子です。

ゴーストはピエトロ以外の人間には見えないので、周囲の目にはゴーストと触れ合ってるピエトロは、独りでわけのわかならいことをしているイカレ男にしか映らない、精神科医のところへ連れて行かれ、妄想幻聴の精神疾患扱いされるのが笑えました。実際にも、私たちには見えないものと対話してる人って、たまにいますよね。ピエトロみたいな場合もあるから、異常者扱いしてはいけません


好きな男には失恋したピエトロですが、イケメン幽霊詩人とロマンティックな感じになったり、ピエトロのことが好きっぽい優しい男前さんが近所にいたり、男運は決して悪そうじゃなかったので安心。ストレートもゲイも、やっぱイケメンは得ですね。臆病でシャイな小動物っぽいキャラは女たちの母性本能もくすぐり、彼女たちに優しくしてもらえるピエトロ。もうちょっと彼が現実的でズルい性格だったら、男も女も手玉にとってオイシい人生を歩めそう。

ピエトロの家で、優雅にのんきに過ごしてる幽霊さんたちですが。実は戦時中に悲劇的な最期を遂げて、成仏できずにさまよってるという事情にしんみり。自分たちが幽霊であるという自覚がなくて、いかにも幽霊みたいな特殊能力(宙を飛んだり何に変身したりといった)もないところが、ファンタジー苦手な私には好感がもてました。舞台衣装のままというゴージャスさも、幽霊らしからぬ華やかさが。
ピエトロ役のエリオ・ジェルマーノが、めっちゃ可愛い!


いつも困ったような泣きそうな顔してるのが、もう萌えMAX!さりげなく、それでいてゲイであることがバレバレな仕草とか、キャマキャマしさもなくナヨナヨしてないけど乙女な演技は、なかなかのクオリティの高さ。さすがカンヌ映画祭で男優賞を獲っただけあって(イクメンの奮闘を熱演した「我らの生活」)、ルックスがいいだけの俳優ではありません。オカマとゲイは違うのです。いつもウルウルしていてる黒目がちな瞳が美しい!「ドゥー・ユー・ライク・ヒッチコック?」でも思ったけど、エリオって何となく妻夫木聡と雰囲気が似てる?男のフェロモンはあるけど、雄臭くはないところとか。背がそんなに高くないところとか。この映画が日本でリメイクされるとしたら、ピエトロ役はブッキー以外に考えられません。イタリア男なのに、あんまし体毛が濃くなさそうなエリオは、日本人の女子にはとっつきやすいイケメンではないでしょうか。パン職人さん、カフェ店員の制服も似合ってて可愛かった。

劇団ゴーストの面々だけでなく、人間側の脇役もみんないい味だしてました。特にピエトロの従姉。めっちゃ面倒見のいいオチャメな人で、あんな姉ちゃんいたらいいな~と思わせるキャラでした。姉ちゃんとデキちゃう精神科医さんも笑えた。ローマの街角とかカフェも趣あって、行ってみたいな~と思いました。


↑エリオ・ジェルマーノ、1980年生まれの現在35歳。有名な詩人を演じた“Il giovane favoloso”が、今年のイタリア映画祭で上映され好評を博しました。一般公開が待たれます!