


大臣のポストを目前としていたエリート官僚のスティーヴンは、パーティで出会ったフランス人女性アンナに強く惹かれる。アンナは息子マーティンの恋人だった…
今は亡きフランスの名匠ルイ・マル監督が、イギリスで撮った晩年の作品。
トリュフォー監督の名作「隣の女」とか、のっぴきならぬ恋に身を滅ぼす男女の悲劇って、私の大好物なんです。この映画も、美味しゅうございました。やっぱいいですね、ドロドロって♪まさに他人の不幸は蜜の味ってやつですわ

魔性の女が、父と息子両方とヤりまくるんですよ。親子どんぶりってやつですね

スティーヴンののめりこみようは、まさにセックス中毒状態。もう辛抱たまらん!と、ハアハア憑かれたようにアンナとヤリたがるスティーヴンは、痛々しくて滑稽でもあります。童貞卒業したばかりの中坊だって、あそこまでヤリたがらんぞ。アンナとデキてからは、仕事中も家族といても上の空、頭と下半身はアンナのことで悶々&ギンギン。すっかりタガが外れてしまうスティーヴン、悪い意味で元気すぎる熟年です。でも、表向きは上手に取り繕ってて、毛ほども周囲には不倫を感知させないスティーヴンの、スマートな大人の狡さは素敵でした。それにしても…実際にも不惑の熟年男性が、何でこんなことを…な愚かしい痴情のもつれ事件を起こしますよね。真面目で賢い人ほど、落ちる穴は深くて暗い。破滅的な情熱を知ってしまったスティーヴンは、不幸な男なのでしょうか。身を焦がすような情熱を知らないまま、平和に無難に生きることのほうが、人間としては幸せなことなのでしょうか。

スティーヴン役のジェレミー・アイアンズ、その美紳士ぶりにうっとり!まさに理想的な英国ジェントルマン!スラっとした長身、非メタボな引き締まったアスリートみたいな裸。スーツの着こなし方、趣味のよさはまさに世界トップクラス。カジュアルな服装も上品で優雅。彼が着れば、ユニクロだって最高級品に見えるでしょう。やはりファッションは着る人によってクオリティが決まります。アイアンズおじさまが醸すエレガンスと知性、そして退廃は、まさに大英帝国の美そのものと言えましょう。ハリウッドや日本の大物熟年俳優がいくら頑張っても、絶対に備えることのできない魅力です。

ほんと、どんなシーンでも絵になるアイアンズおじさま。雨そぼ降るロンドンの街を歩いてる姿、キッチンで立ったまま朝食を食べてる姿、オフィスでぼんやり座ってる姿etc.何でもないシーンでさえ美しい。愛欲に溺れる姿も、破滅まっしぐらな中にあっても、決してボロボロヨレヨレになったりしないんです。見た目の魅力と違い、優雅さとか気品って色褪せることのない天性の美質なんだな~と、アイアンズおじさまを見ていて思いました。

そんな優雅で気高い紳士アイアンズおじさまがカマす、そこまでやりますか!な衝撃シーンに目がテン。先述したアクロバットな全裸愛欲ファックシーンもそうですが、ラスト近くの全裸でらせん階段を駆け下りるシーンが特に強烈でした。ヘタすりゃ滑稽になりかねないリスキーな演技でさえ、躊躇なく果敢に挑む役者魂を尊敬せずにはいられません。大したことない役者に限って、アレもできないコレもしたくないと自分を守ってばかりなんですよね~。
アンナ役のジュリエット・ビノシュが、これまた強烈なんです。

美人でもセクシーでもない、こんなイモ女に何でそこまでハマるかな?!と、観た人(特に女性)の99%は納得できないヒロインかもしれません。たぶん、彼女の本当の魅力は女には解からないのかもしれません。事実、美人でセクシーな女とは上手く遊べても、どうしてこんな女に!?な女にボロボロにされてしまう男、いますよね。ニコール・キッドマンとかシャーリーズ・セロンは美人すぎて、非現実的で無味無臭なロボットみたいじゃないですか。たぶん男のほとんどは、ニコキさんやシャー子さんよりも、生々しくにおいそうなビノシュとヤリたいと思うのでは。
アイアンズおじさまと違い、JBさんは何を着てもダサい。スタイリッシュなおしゃれなファッションのはずなのに。フランス女優らしからぬ垢抜けしてなさです。でも、放出してる妖しさ、不可解さはハンパないです。狂おしいスティーヴンに対して、まるで菩薩さまのように静かに優しく寛容、でもネットリした糸で彼をがんじがらめにしてるクモ女のような怖さも。ほぼ無表情だけど、ふと見せる微笑が謎めいてて男心をそそる。双子の兄との悲劇的な過去さえも、男を惹きつける魔力なってたり。『破滅を知った女は危険よ。どんなことがあっても生き残るから』…アンナと会った瞬間に彼女を警戒、嫌悪したスティーヴンの妻の台詞が印象的でした。そんなつもりはまったくないのに、男たちを破滅に導くアンナみたいなファムファタール、ちょっと憧れます。それにしても…アンナみたいな、秘部に麻薬でも仕込んでるとしか思えないほど名器女って、大変だな~と思います。男がほっといてくれないのも、かなりしんどいだろうな~…
実際にも、あまたのイケメン男優と浮名を流した最強モテ女のJBさん。男には抗いがたい魅力の持ち主なのでしょう。私生活や役のせいで、嫌い!苦手!という女性が多いけど、私は大好きです。その女優魂は、日本の自称女優CMタレントに見習ってほしいほど。フランス語と英語を自在に操る語学力もカッコいいし。吸い付きそうなほどのしっとりした白い肌は、男を惑わすのも理解できるほど煽情的。

主役二人以上に印象的だったのが、スティーヴンの妻役の名女優ミランダ・リチャードソン。名作「クライング・ゲーム」と同年のこの作品で、彼女はオスカーにノミネートされました。完璧な良妻賢母がふと見せる不安や不審の表情が、さりげなくて巧い。そして恐ろしい悲劇の後、夫にぶつける痛烈な激情と冷酷さ。アンナとはまた違った女の怖さにゾっとしました。アンナのママも、無邪気すぎるがゆえに因業な女で怖かった。頭からっぽなくせに、男女の秘め事には敏感。娘とスティーヴンの関係も一瞬で見破ったりして怖い。とにかく、女たちが怖い映画でした。マーティン役のルパート・グレイヴスが、可愛い!でもすごい可哀想な役

スティーヴン一家の優雅で上品なライフスタイルも、イギリスの上流社会って感じで素敵でした。屋敷の内装とか食器からして、ハリウッドや韓国の成金とは違う趣味のよさ。ルイ・マル監督は、実際にもフランスのブルジョア出身だとか。庶民が想像したり調べたりして作るハイソサエティとは、一線を画してるのも道理です。あと、ロンドンの街並みや公園とかも、そぞろ歩いてみたいな~と思わせる美しさでした。