


19世紀のアメリカ、マサチューセッツ。捕鯨船の一等航海士チェイスは、船長の座を名門出身のポラードに奪われたことに不満を抱きながらも、新入りの少年トーマスら仲間とともに出港する。やがてチェイスたちは、恐るべき巨大な白鯨と遭遇し…
怪獣みたいな巨大クジラが攻撃してきたり、ストーカーみたいに尾行してきたりするのですが、あまり怖くないんですよね~。ジョーズみたいに、噛みつかれて食いちぎられ海が鮮血で染まる、という痛さや残虐さがないでしょうか。見るからに凶暴そうなサメと違って、クジラさんはデカいだけで悠然と優しそうだし。怒らせなければ友だちになれそう、みたいな親しみやすさが。
この映画で怖かったのはクジラではなく、大海原での遭難、極限状態の漂流です。あれは文字時通りの生き地獄!死んでも体験したくないです。食べ物も水も尽き、じわじわと飢えに苦しむチェイスたち。生き抜くために、とうとうあの禁断の手段に…


当時の捕鯨の仕方とか事情なども、へえトリビア的に興味深く描かれていました。肉ではなく油が目当てだったんですね。私が子どもの頃は、給食によくクジラ肉が出てたよな~。クジラのドロドロ脳内に入って油とるシーンが面白かったです。これでもか!とクジラを乱獲するチェイスたち。あんたらもかつては!と、日本の捕鯨を敵視する人たちに反発したくなりましたが。でもこれって…と、ひどい目に遭うチェイスたちの姿を見ててふと思った。クジラを殺したらこんなことになる!という、反捕鯨メッセージ映画なのかしらん?と、うがった見方もしてしまいました。あの白鯨は、殺されたクジラたちの怨念が結集した妖怪だったのかもしれません…
男だらけの男祭り映画なのも嬉しい。主人公チェイス役は、クリス・ヘムズワース。ロン・ハワード監督に気に入られたのでしょうか、「ラッシュ」に続いてのハワード監督作主演ですね。

男らしく明るくたくましいタフガイ、ヒーロー役が似合います。ゴリラ顔も好きです。もう何でも彼に任せれば安心!な頼もしさにあふれてます。マイティ・ソーのイメージが強いせいか、クジラなんか一撃で倒せるじゃん!なんて思ってしまったり。激ヤセ熱演が話題となりましたが、元々が超マッチョなせいか、痩せても病的ガリガリ感は微塵もなく、スラッとスレンダーなモデルみたいなスタイルの良さでした。少年乗組員トーマスが、漢(おとこ)なチェイスに向ける憧れ、崇敬のまなざしに、ちょっとだけMY腐レーダーがビビビと反応


最年少の乗組員トーマス役は、「インポッシブル」で注目されたトム・ホランド。

「リトル・ダンサー」の頃のジェイミー・ベルにそっくり?舞台版リトル・ダンサーでは、ホランドくんが主役を演じたとか。可愛い、イケメン、という感じではないけど、繊細でナイーブな雰囲気、演技は将来を期待させました。新スパイダーマン役に起用されたというホランドくん、いい男に成長すればいいですね。
チェイスの親友役を、キリアン・マーフィが好演。キリアンのことだから、だんだん自分だけ助かろうとするような卑劣男に豹変するのかな、と期待?してたのですが、いい奴役だったのでちょっとガッカリ(笑)。非業に凄絶ながらも泣かせる最期でした。
収穫だったのは、ポラード役のベンジャミン・ウォーカー。

初めてお目にかかりましたが、ちょっとコリン・ファース似でカッコよかったです。チェイスに一目置きながらも、船長としての気負いやプライド、ライバル心やコンプレックスなど複雑に揺れる男心を、切なく、でも毅然と演じていて素敵でした。無人島で上半身裸になるシーンがあったのですが、いいカラダしてました。チェイスの妻役の女優、この安藤ミキみたいな顔どっかで見たことあるな~と思ったら、「嵐が丘」でトム・ハーディと共演してたトムハ嫁でした。
男祭りの中で、最も私が注目、楽しみにしてたのは、やはりこの人、ベン・ウィショー。

遭難から年月が経ち、唯一生存してたトーマスに、新作執筆のためにインタビューする作家、名作「白鯨」の作者であるハーマン・メルヴィル役のベン子さん。

残念ながら乗組員役ではなく(彼が男だけの船に乗ってたら、ちょっとヤバいことになってたかもしれませんね





「リリーのすべて」「ロブスター」も公開間近!これまたゲイ役のTVドラマ「ロンドン・スパイ」の日本放送も待たれるベン子さん。映画にTVに売れっ子なベンですが、彼の真骨頂はやはり舞台なんだとか。ロンドンのステージで熱演してる生ベン、見たいな~