「事件」
スナックの経営者ハツ子が刺殺死体で発見され、ハツ子の妹ヨシ子の恋人、宏が逮捕される。やがて始まった裁判で、事件は思わぬ展開となるが…
ワタシ的には、同じ野村芳太郎監督の「疑惑」と並ぶ邦画の傑作法廷劇です。この映画の事件そのものは、よくある男女の痴情のもつれなのですが、当人たちにとってはまさに命がけな、ドロドロした情念と愛怨にはただもう圧倒されるばかりです。淡泊な自分だけの世界で完了してる私にとっては、何だか羨ましいほどの情熱です。誰かを本気で愛したら、あんな風に物狂おしくタフに冷酷になれるものなんですね~。愛のためだけに生き、愛のために死ぬなんて、愚かだけど崇高でもあります。巻き込まれてとばっちりに遭う関係者にとっては、いい迷惑ですが…
この映画、とにかくキャストが素晴らしいです!今の邦画ではもう味わえない、強烈な個性と名演の激突を堪能できます。中でも最強、いや、最恐なのが、ヨシ子役の大竹しのぶ。
当時21歳の大竹しのぶ、ヘタすりゃ中学生に見えてしまうほど、おぼこい!純朴で愛らしい、けど、中身は業の深い生々しい女。いろんな映画やドラマで怖い女、ヤバい女を演じてる彼女ですが、この映画のヨシ子が最もゾっとする女かもしれません。美しい悪女などより、ヨシ子みたいな一見平凡で無害で鈍重そうな女のほうが油断できない、闘いにくい強敵になるんですよね~。気が付けば男も、がっつりどっぷりくわえこまれて、支配されてしまう。ピュアそうだけど、実はネットリしたたかなヨシ子のような女にこそ、男も女も用心しなければなりません。
この頃の大竹しのぶは、まさに生ける北島マヤ。傍聴席での不安げな、少女のような可憐さ。虫も殺さないおとなしそうな、あどけない顔で、平然と昂然と嘘をついたり、姉を貶めたりするトゲのあるふてぶてしさ。検事の攻撃に感情を高ぶらせて顔をみるみる紅潮させ、ポロポロこぼす涙とか、法廷での演技はまさに、舞台で独り芝居する北島マヤみたいで圧巻。ラブシーンでは可愛らしいおっぱいぽろんも。
21歳で、スゴすぎますわ~。今の女優には、望むべくもない役者魂、高い演技力。「怒り」も宮崎あおいではなく当時の大竹しのぶだったら、生々しく激烈な映画になってたかも。愛の闘いに勝利し、愛する男を自分のものにしきったヨシ子が見せる、ラストの愛らしい満ち足りた笑顔…女って怖いな~と、戦慄せずにはいられません。ゆえにヨシ子の未来が、すごく気がかり。きっと彼女、幸せにななれないと思う。宏の弱さと罪悪感が愛を壊す、いや、はじめっから宏は姉妹両方とも愛してなかったのでは…そんな男を激烈に愛してしまった姉妹の悲劇。もがいてあがいて傷だらけになっても、結局は…な愛の虚しさに、暗澹となってしまいます。
ハツ子役の松坂慶子も、全出演作品中最高の演技、そして美しさ。今はふっくら優しそうなオバさん女優になってるけど、70・80年代の美女といえば、夏目雅子と並ぶ代名詞だったのが松坂慶子。こぎれいな親しみやすい系がほとんどの今の女優にはない、妖艶で華やかでアダっぽい美貌。場末感もよく出てました。一見勝気なビッチだけど、善良で純粋で一途なトシ子の不幸な人生が、哀れすぎて泣けます。美人なのに器用に生きられないって、もったいない。ラブシーンでは、松坂慶子もきれいなおっぱいぽろん。昔は有名な大物女優でも、必然性があればフツーに脱いでましたよね~。
宏役の永島敏行が、びっくりするぐらい棒読みな大根演技。でもあの素人っぽさが、素朴で頭からっぽな宏のキャラに合ってたかも。それにしても宏、まさに魔性の男です。姉妹を二またとか、ゲス鬼畜すぎる。悪気や邪気なんかまったくないところが、返って性質が悪い男です。超棒読み大根演技な永島さんですが、女優二人とのラヴシーンだけは自然で上手でした
ハツ子の元情夫であるチンピラの宮内役、渡瀬恒彦のチャーミングな名演も賞賛に値します。
この頃のつねぴーは、役者としても男としても脂ののった最盛期。めっちゃカッコいいです!どチンピラを演じさせたら、まさに日本一です。ほんと、どーしようもないクズ野郎なんだけど、愛嬌たっぷりで憎めないんですよね~。煮ても焼いても食えない、ふてぶてしいノラリクラリさが、すごく可愛かったり。ドスのきいた表情や声は迫力と凄気があって、モノホンのヤーさんも真っ青。外道だけど男の色気と不思議な優しさがある宮内を、ちょっとトボけた軽やかさで、かつ暗部も抱えた繊細さで演じてるつねぴーです。電車の中でハツ子との愛の日々を回想してる極道つねぴーの、男の哀愁漂う風情に胸キュン。あんな雰囲気を出せる30・40代の俳優、今いませんよ。
法廷ドラマだけでなく、大竹しのぶVS渡瀬恒彦の演技合戦も見応えがあり。どっちも食えない者同士、嫌悪と共感がないまぜになてるような関係。『おまえ、おぼこい顔して大したタマだな』『あんたほど嘘つきじゃないわ』…ラストに二人が交わす会話と笑顔には、事件の明かされなかった真実が隠されているようでもあって、かなり意味深です。
弁護士役の丹波哲郎、検事役の芦田伸介、裁判長役の佐分利信、名優3人の法廷トライアングル対決も味わい深かったです。証人役で、西村晃、北林谷栄、森繁久弥という大物が登場。小市民キャラがコミカルで笑えます。弁護活動を手伝う教師役、山本圭もカッコよくて好きな俳優。声がいいですよね~。
昭和40年代のムードも濃厚で濃密です。当然ネットも携帯もありません。横浜駅のホームが、木造だった。連れ込み宿とか、昭和~って感じでいいですね~。今でもあんな連れ込み宿、あるのかしらん?
スナックの経営者ハツ子が刺殺死体で発見され、ハツ子の妹ヨシ子の恋人、宏が逮捕される。やがて始まった裁判で、事件は思わぬ展開となるが…
ワタシ的には、同じ野村芳太郎監督の「疑惑」と並ぶ邦画の傑作法廷劇です。この映画の事件そのものは、よくある男女の痴情のもつれなのですが、当人たちにとってはまさに命がけな、ドロドロした情念と愛怨にはただもう圧倒されるばかりです。淡泊な自分だけの世界で完了してる私にとっては、何だか羨ましいほどの情熱です。誰かを本気で愛したら、あんな風に物狂おしくタフに冷酷になれるものなんですね~。愛のためだけに生き、愛のために死ぬなんて、愚かだけど崇高でもあります。巻き込まれてとばっちりに遭う関係者にとっては、いい迷惑ですが…
この映画、とにかくキャストが素晴らしいです!今の邦画ではもう味わえない、強烈な個性と名演の激突を堪能できます。中でも最強、いや、最恐なのが、ヨシ子役の大竹しのぶ。
当時21歳の大竹しのぶ、ヘタすりゃ中学生に見えてしまうほど、おぼこい!純朴で愛らしい、けど、中身は業の深い生々しい女。いろんな映画やドラマで怖い女、ヤバい女を演じてる彼女ですが、この映画のヨシ子が最もゾっとする女かもしれません。美しい悪女などより、ヨシ子みたいな一見平凡で無害で鈍重そうな女のほうが油断できない、闘いにくい強敵になるんですよね~。気が付けば男も、がっつりどっぷりくわえこまれて、支配されてしまう。ピュアそうだけど、実はネットリしたたかなヨシ子のような女にこそ、男も女も用心しなければなりません。
この頃の大竹しのぶは、まさに生ける北島マヤ。傍聴席での不安げな、少女のような可憐さ。虫も殺さないおとなしそうな、あどけない顔で、平然と昂然と嘘をついたり、姉を貶めたりするトゲのあるふてぶてしさ。検事の攻撃に感情を高ぶらせて顔をみるみる紅潮させ、ポロポロこぼす涙とか、法廷での演技はまさに、舞台で独り芝居する北島マヤみたいで圧巻。ラブシーンでは可愛らしいおっぱいぽろんも。
21歳で、スゴすぎますわ~。今の女優には、望むべくもない役者魂、高い演技力。「怒り」も宮崎あおいではなく当時の大竹しのぶだったら、生々しく激烈な映画になってたかも。愛の闘いに勝利し、愛する男を自分のものにしきったヨシ子が見せる、ラストの愛らしい満ち足りた笑顔…女って怖いな~と、戦慄せずにはいられません。ゆえにヨシ子の未来が、すごく気がかり。きっと彼女、幸せにななれないと思う。宏の弱さと罪悪感が愛を壊す、いや、はじめっから宏は姉妹両方とも愛してなかったのでは…そんな男を激烈に愛してしまった姉妹の悲劇。もがいてあがいて傷だらけになっても、結局は…な愛の虚しさに、暗澹となってしまいます。
ハツ子役の松坂慶子も、全出演作品中最高の演技、そして美しさ。今はふっくら優しそうなオバさん女優になってるけど、70・80年代の美女といえば、夏目雅子と並ぶ代名詞だったのが松坂慶子。こぎれいな親しみやすい系がほとんどの今の女優にはない、妖艶で華やかでアダっぽい美貌。場末感もよく出てました。一見勝気なビッチだけど、善良で純粋で一途なトシ子の不幸な人生が、哀れすぎて泣けます。美人なのに器用に生きられないって、もったいない。ラブシーンでは、松坂慶子もきれいなおっぱいぽろん。昔は有名な大物女優でも、必然性があればフツーに脱いでましたよね~。
宏役の永島敏行が、びっくりするぐらい棒読みな大根演技。でもあの素人っぽさが、素朴で頭からっぽな宏のキャラに合ってたかも。それにしても宏、まさに魔性の男です。姉妹を二またとか、ゲス鬼畜すぎる。悪気や邪気なんかまったくないところが、返って性質が悪い男です。超棒読み大根演技な永島さんですが、女優二人とのラヴシーンだけは自然で上手でした
ハツ子の元情夫であるチンピラの宮内役、渡瀬恒彦のチャーミングな名演も賞賛に値します。
この頃のつねぴーは、役者としても男としても脂ののった最盛期。めっちゃカッコいいです!どチンピラを演じさせたら、まさに日本一です。ほんと、どーしようもないクズ野郎なんだけど、愛嬌たっぷりで憎めないんですよね~。煮ても焼いても食えない、ふてぶてしいノラリクラリさが、すごく可愛かったり。ドスのきいた表情や声は迫力と凄気があって、モノホンのヤーさんも真っ青。外道だけど男の色気と不思議な優しさがある宮内を、ちょっとトボけた軽やかさで、かつ暗部も抱えた繊細さで演じてるつねぴーです。電車の中でハツ子との愛の日々を回想してる極道つねぴーの、男の哀愁漂う風情に胸キュン。あんな雰囲気を出せる30・40代の俳優、今いませんよ。
法廷ドラマだけでなく、大竹しのぶVS渡瀬恒彦の演技合戦も見応えがあり。どっちも食えない者同士、嫌悪と共感がないまぜになてるような関係。『おまえ、おぼこい顔して大したタマだな』『あんたほど嘘つきじゃないわ』…ラストに二人が交わす会話と笑顔には、事件の明かされなかった真実が隠されているようでもあって、かなり意味深です。
弁護士役の丹波哲郎、検事役の芦田伸介、裁判長役の佐分利信、名優3人の法廷トライアングル対決も味わい深かったです。証人役で、西村晃、北林谷栄、森繁久弥という大物が登場。小市民キャラがコミカルで笑えます。弁護活動を手伝う教師役、山本圭もカッコよくて好きな俳優。声がいいですよね~。
昭和40年代のムードも濃厚で濃密です。当然ネットも携帯もありません。横浜駅のホームが、木造だった。連れ込み宿とか、昭和~って感じでいいですね~。今でもあんな連れ込み宿、あるのかしらん?