まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

友だちのままでいられたら…

2016-10-21 | 北米映画 08~14
 「THOSE PEOPLE」
 ニューヨークの美大生チャールズは、幼なじみの親友セバスチャンへの愛を胸に秘めていた。そんな中、チャールズはピアニストのティムと出会い、恋人関係になる。それに嫉妬するセバスチャンに、チャールズは困惑しながらも想いを抑えきれなくなり…
 なかなか良質のBL映画でした~。深刻すぎず、ライトすぎない、BLにありがちなファンタジーに近い非現実的な設定でもなく、打ちのめされちゃうほどシビアに現実的でもない。何もかもが丁度いい塩梅。男同士じゃなくフツーの男女にしてもおかしくない、ごく普遍的でもあるラブストーリーでした。二人の男の間で揺れるヒロインが、単に男になってるだけ。BLじゃなかったら、ありがち、陳腐な設定とも言えるかもしれません。

 チャールズはゲイであることを全然隠しておらず、周囲も当たり前のように受け入れてる。時代はほんと変わりましたね~。私が小さい頃なんて、ゲイは秘してこそ花、みたいな扱いでしたし。ひと昔前と違って、ゲイだからっていつも十字架のように罪悪感や自己嫌悪を背負ってたり、差別偏見に苦しむ姿ばかりの映画じゃない。むしろ、ゲイだからこんなに魅力的、男女の愛にはない優しさや感受性にあふれてる、と言わんばかりの作風の映画も、どんどん作られてほしいものです。

 チャールズとセバスチャンの、友だち以上恋人未満なもどかしく危うい関係が、腐には萌え~です。チャールズは恋人になりたいけど、セバスチャンにはその気がないと思い込んで、それを尊重してる。セバスチャンは、チャールズの気持ちに気づいてないフリをして、親友のままでいようとする。恋心は拒絶するけど、誰よりもチャールズを大切にして決して離そうとしないセバスチャン、ズルいな~。三島由紀夫の「禁色」にあった台詞、『愛する者はいつも寛大で、愛される者はいつも残酷』…まさにチャールズとセバスチャンの関係に当てはまります。
 好きだけど失いたくないので、友だちのままで我慢、なチャールズは解かりやすいキャラなのですが、セバスチャンは複雑で屈折していて、そこが面白かったです。単に素直じゃなくてガキっぽいだけ?かとも思ったが。自分のものだと信じ切って安心してたら、それが他人にものになった途端に動揺して、俺のもんなのにー!とダダこねる男、よくいますが。セバスチャンがそんなありがちの男に見えたのが、ちょっと残念。もっと何だろう、魔性に近い美貌や性的魅力とか、ワガママだけど放っておけない、守ってやりたくなる母性本能をくすぐる魅力があったら、チャールズがふっきれないのも理解できたでしょう。でもラストの、チャールズをティムに奪われ失おうとしていることへの嫉妬と不安で、取り乱し激情的になるセバスチャンは、情けなくも哀れで切なかったです。結局、セバスチャンの苦しみのほうが重かったのかもしれない。友情を壊したくない気持ちや努力は、むしろセバスチャンのほうが切実。受け入れられない想いを受け入れないと、大切な人は自分から離れていく…チャールズの恋はセバスチャンにとって、すごいプレッシャーだったことでしょう。

 セバスチャンとのめんどくさい腐れ縁的愛も腐には興味深いものでしたが、ティムとのロマンティックで優しい恋愛も萌え度が高かったです。ティムが、めっちゃいい男なんですよ~。優しくて包容力がある大人の男、しかもピアニストときたもんだ。私なら迷わずにティムを選びますよ。優しいけど、セバスチャンのことですごく嫉妬してくれるところも、愛される醍醐味だわ~と、チャールズが羨ましくなった。チャールズって、愛されるよりも愛したい~♪by 近畿キッズ なドMゲイですよ。男たちの三角関係修羅場!もありつつ、セバスチャンもティムも超いい奴!チャールズは幸せな男だな~と、爽やかなハッピーエンドにホっとしました。

 チャールズ役のジョナサン・ゴードンは、ちょっと濃いめの優しそうな男子。仕草や表情が、自然にゲイゲイしくて可愛かった。セバスチャン役のジェイソン・ラルフは、ちょっと若い頃のマット・デーモン似で、わりと好きなタイプかも。でも、セバスチャンはナイーブな美青年、もしくは退廃的な男が演じるべき役なんですよね~。ティム役のハーズ・スレイマンは、エキゾティックな男前でした。男同士のラブシーンも、大胆だけど生々しくなく、優しく甘美で腐向けです。

 BLだけでなく、チャールズとセバスチャンを見守る仲間たちとの友情も、サラっとしつつ厚くて好感。ちょっと名作「セント・エルモス・ファイヤー」を彷彿とさせました。仲間のひとりであるノンケの男の子が、ほとんど台詞もなくただいるだけに近い存在なのに、いちばんイケメンだった。セバスチャンがワケアリ大金持ちの息子、という設定なので、ニューヨークの富裕層が暮らすマンションやパーティなど、ハイソな雰囲気も楽しめました。
 この映画、日本でリメイクするとしたら、セバスチャン→池松壮亮、チャールズ→岡田将生 、ティム→小澤征悦、 がいいかも♪
コメント (2)
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