まつたけ秘帖

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ホロウ・クラウン2 薔薇戦争

2016-10-14 | 欧米のドラマ
 「ホロウ・クラウン 嘆きの王冠」シーズン2を観ました~。ヘンリー5世亡き後に勃発し、数十年にわたって繰り広げられた内乱“薔薇戦争”を描いています。全8話。
 前半は、ヘンリー6世編。父王ヘンリー5世が他界し、生後間もなく即位したヘンリー6世ですが…彼がシーズン1・2通して最も悲惨、可哀想な王さまだったかも。地獄の鬼嫁や佞臣奸臣たちに散々振り回され利用されまくり、挙句の果てにはゴミのように見捨てられ、荒野を彷徨う裸の原人となり果てて…リチャード2世も悲惨でしたが、ヘンリー6世はさらに無残。気が狂うのも当然な目に遭うヘンリー6世を、デリケートに悲しく演じたトム・スタージェスは、イケメンではないけど若いのになかなか魅せる役者っぷり。
 それにしても…薔薇戦争、もうハチャメチャすぎて笑えます。ちょっとは仲良くしようよ~信じ合おうよ~分け合おうよ~と言いたくなるほど、王族も貴族もおのれの権勢欲、野望にとり憑かれてて、ほぼ10分ごとに殺し合いしてますもん。罠や裏切り、陰謀や奸計のオンパレードで油断すると一寸先は闇、一瞬も安心して暮らせない百鬼夜行の王宮は、東京都庁どころじゃない伏魔殿。そこに愛や信頼など微塵もありません。

 ↑可哀想なヘンリー6世。荒野の原人姿がとにかく強烈!
 権力の移り変わりが目まぐるしすぎて、さっきまで天下獲ったでぇ~!!と意気揚々だった人が、5分後にはさらし首になってたり。もうその繰り返しなんですよ。諸行無常な急転直下の展開は、ジェットコースタードラマみたいで飽きさせません。権力って手に入れたら必ず滅びると分かっていながら、みんな血眼になって争奪し合わずにはいられぬ甘い毒リンゴみたいなものなのでしょうか。でもほんと、当時の英国の権力争いって、荒っぽいですよね~。敵の陥れ方が、強引すぎで短絡的すぎ。日本の戦国時代のほうがまだ、公明正大さとか様式美を大事にしてたような。英国の王族貴族、権力のためには手段選ばず、情けも無用、ですもん。卑劣な鬼畜が多すぎ。国民のことなんて、これっぽっちも考えてないし。当時の平民、ほんといい迷惑だっただろうな~。
 シーズン2で最も強烈なキャラだったのは、ヘンリー6世の王妃マーガレット。こいつ、ほんと非道いんですよ!見た目も性格も言動も、野蛮で峻烈。権力掌握のために、猛然と屍を重ねていくマーガレットを激演してるのは、「ホテル・ルワンダ」などでの好演も忘れがたい黒人女優のソフィー・オコネドー。黒人女性がフランス王室出身の英国王妃?!と、意表を突きすぎ。どこかの蛮族の女酋長にしか見えません。周囲が次々と非業な死を遂げて消えていくのに、ボロボロになってもしぶとく生き延びて最後まで毒を撒き散らすマーガレットは、そのあまりの猛烈キャラっぷりゆえにだんだん笑えてくるキャラに。リチャード3世の時代になっても、どこからともなく現れて狂態を見せるマーガレットは、見せ場も多く最初から最後まで出てくる唯一の人物で、いちばん美味しい役だったかも。女優なら一度はやってみたい役なのでは。
 後半は、悪名高いリチャード3世編。この時代が、いちばん陰惨な地獄絵図かも。邪悪な野望のために、肉親や近臣を次々と容赦なく葬り王位に就くリチャード3世は、その極悪非道なモンスターキャラ同様、見た目も怪異な化け物となってます。

 昔でいう、せむし?身体障害が不気味で、これいいのかな~日本では絶対ムリだよな~な役。演じてるのが、今や日本で最も人気がある英国スター、ベネディクト・カンバーバッチ。渾身の大熱演です。彼もまた、舞台俳優としての実力を遺憾なく発揮してます。
 動きが大変そうな身体障害演技も壮絶ですが、こんな卑劣でズルくて冷酷な人間いるのか~とゾっとするような、世の中や人を不幸にするために生まれてきたような、善いところなど一切ない非情無情な悪鬼野郎を、唾がこっちにまで飛んできそうなほど圧巻の大熱演をしつつ、非道すぎて何だか笑えてくる、ちょっとドぎついユーモアをこめて楽しそうにも演じてるバッチさんに、役者やのお~と感嘆することしきりでした。

 劇中、もう非道いことズルいことしかしないバッチさん。カメラ目線になって邪悪な本音を視聴者に告白したり、邪悪なことを考えたりしたりしてる時の顔芸が、ヤバすぎて笑えます。どんどんエスカレートしていく邪悪さが、何だかワクワク感にあふれていたり。

 最低最悪な役をチャーミングに見せなければならないリチャード3世役は、生半可な俳優には演じられない難役でしょう。極悪凶悪な役でも、大真面目だけどどこか浮世離れしててヘンなところが可愛い、というバッチさんならではの魅力も十分に活かされてました。

 ↑可憐で可哀想なリトル・プリンスふたり
 権力争いに敗れて非業な死を遂げる人たちは、因果応報というか自業自得なのですが、巻き込まれただけの無垢な人たち、ヘンリー6世とか、特にリチャード3世に始末されてしまう幼い兄弟ふたり、エドワード5世とその弟が哀れすぎて涙。あの子たち、リチャード3世のコンプレックスを刺激するほど可愛くて賢すぎたのが仇になっちゃいました。ブサイクで頭が悪いガキんちょだったら、死なずにすんだはず…演じてる二人の男の子が、ほんと賢そうで可愛かったから、その悲運に胸が痛くなりました…
 リチャード3世の母役、泣く子も黙る大女優ジュディ・デンチが、貫禄と哀感たっぷりの存在感。その他も、「ダウントン・アビー」など人気英国ドラマに出てる、どっかで見たことあるな~な俳優も、たくさん出演してます。

 上質の舞台を観てるような演技と演出、美しいロケ地の映像や建築物、衣装も、時代劇の素晴らしさを堪能させてくれます。台詞が詩的で格調高く、日常生活でも使いたいほど(笑)。こんな大人が楽しめる日本の時代劇も観たいな~。
 リチャード3世を斃して即位するヘンリー7世は、The Tudorsのヘンリー8世の父。薔薇戦争は終わったけど、王室の内紛はどんどん複雑に血生臭くなっていくんですね~…

 ↑どんな役してもイヤミがなく、ユニークで可愛いバッチさん。彼主演のコテコテおばかコメディが観たい!そんなバッチさんの最新作は、話題のアメコミ映画「ドクター・ストレンジ」です。楽しみ♪
コメント (4)
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