まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

ママの秘密

2017-12-22 | フランス、ベルギー映画
 師走のbeau garçon映画祭③
 「ミモザの島に消えた母」
 アントワーヌとアガット兄妹の母は、彼らが幼い頃にノワールムーティエ島の海で謎の死を遂げていた。中年になってもそのことを引きずり、真実を語ろうとしない父に不満を抱くアントワーヌは、長年封印されていた母の秘密を探り出そうとするが…
 ママの死は事故?自殺?それとも?なミステリーと、父と息子、兄と妹の葛藤や絆を描くファミリードラマが、巧みにブレンドされた佳作です。ミステリーといっても、奇異な連続殺人が起こったり、大ドンデン返しがあったり、華麗なる謎解きがあったりするわけではなく、時の流れで氷が解けていくように真相が見えてくる展開が、地味ながら不自然な作り物っぽさがなく好感。家族愛も、フランス人らしくベタベタしてなくて、それでいて優しさに包まれていて、温かな感銘を受けました。

 ママの秘密、死の真相は、そんなに意外でもショッキングでもなく、でも悲しくて切ないものでした。本当に愛する人との出会いが遅すぎた悲劇ですね。私がママと同じ立場なら、いったいどうしただろう…と考えさせられました。そして、子どもの立場からも。ママの選択を受け入れることができるだろうか。そのような運命とは縁のない私の人生は、本当に幸せで凡庸です。
 日本の2時間ドラマや刑事ドラマだと、死に関する重要な人物は必要以上に怪しく意味深な言動をするけど、この映画ではかなりあっさりとした存在になってました。あくまでアントワーヌ目線で話が進むので、話が散漫にならずにすんでました。誰ひとり悪人はおらず、ママを死に追いやってしまった人たちの心情や立場も、罪深いとは思えませんでした。むしろ人間的というか、当たり前のことと理解できた。もうちょっと寛容さと広い視野があったら、あんな悲劇は起こらなかったんだろうな~。ママにももうちょっと冷静さがあったら、死なずにすんだことだろうに。歯車が悪いほうへと動き出したら、もうどうしようもないものなんですね。たくさんの人たちが苦しんだけど、いちばんの被害者はやっぱアントワーヌとアガットです。どんな事情があるにせよ、子どもを悲しませ傷つけることは罪です。
 アントワーヌ役は、「エル ELLE」でヒロインの隣人を演じてたローラン・ラフィット。

 ええ~!?な役だったエルとは打って変わって、優しそうで温かみがある雰囲気、大人の男だけど少年のようなナイーブさが可愛かったです。エルでは気づかなかったけど、アラブ系なのかな?繊細で不器用だけど誠実な善人キャラ、ちょっと濃い目の風貌は、何となくマーク・ラファロを彷彿とさせました。マークもアントワーヌみたいな役、似合いそう。いい男で、いい役者なローラン・ラフィットは、名門コメディ・フランゼーズの座員で、フランスでは国民的な人気俳優みたいです。73年生まれだから、キムタクより年下!うう~ん、大人ですね~。キムタクも、この映画やエルみたいな作品で、ローラン・ラフィットが演じたような役に挑戦すればいいのに。

 アガット役のメラニー・ロランも、クールだけど芯は優しい感じが素敵でした。メガネっ娘なのが知的ながらも可愛かった。何げないたたずまいやポーズが、すごく絵になるのもフランス女優ならでは。気合いの入ってない、けどセンスのいいファッションも参考になりました。アントワーヌの娘役の子が美人。彼女がアントワーヌのママと同じ秘密と悩みを抱えていて、カミングアウトすることで父との関係が好転する展開が、観客にとって救いのような安堵感を与えてくれます。アントワーヌがママの残した手紙を娘に見せることで、彼女を大人扱いするシーンがすごく好きです。
 ミステリーの舞台となるノアールムーティ島の風景が、とても美しくて行ってみたくなりました。私も島の別荘で暮らしてみたいわ~。アントワーヌ一族のブルジョア生活も、アメリカや韓国の派手で品のない成金と違って、慎ましくありながらもさりげなく贅沢、なところに憧れます。
コメント
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