まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

たっくるせ!

2018-04-03 | 日本映画
 「沖縄やくざ戦争」
 返還直後の沖縄。国頭組の中里は、組長の理不尽なやり方に不満を抱いていた。内紛で混乱する沖縄やくざの隙を突いて、本土の暴力団は侵攻を仕掛けてくるが…
 広島といえばやくざ、というイメージを世に植え付けた「仁義なき戦い」。後に伝説となるやくざ映画の金字塔は、公開当時大ヒット。それに味をしめた東映は、広島だけでなく大阪や九州など、各地を舞台にしたやくざ映画を次々に制作。そろそろネタ切れになりかけたところ、当時実際に暴力団の抗争が激化していた沖縄に白羽の矢が立てられました。さぞかし生々しく緊迫した、命がけのロケが敢行されたのかな~と思いきや、映画業界の複雑な事情のせいで、撮影のほとんどは京都で行われたのだとか。あんまし沖縄っぽくないな~と思いながら観ていたのですが、後でそういったエピソードを知って納得。有名になった広島弁の台詞と違って、沖縄弁はほとんど使用されなかった(難しすぎたからだとか)のも、ここいったいどこ?感を強くしてました。唯一、『たっくるせ(叩き殺せ!)』という方言が頻繁に口にされていました。

 で、この沖縄編。「仁義なき戦い」同様、いや、それ以上に内容といい演出といい雰囲気といい演技といい、すべてにおいて現在では制作実現不可能なトンデモ映画でした。もうハチャメチャすぎて、ギャグ漫画の世界です。返還直後とはいえ、ここは本当に法治国家の日本?!と目がテンになるほど、アナーキーかつクレイジーなんですよ。警察も一般人も、あってなきのごとし。やりたい放題に大暴れするやくざたちに絶句、そして爆笑。最初から最後まで、みんな阿鼻叫喚の大騒ぎ。ハイテンションすぎて、何だか楽しそう!ちょっとトム・ハーディ主演版の「マッドマックス」とノリが似てる。き◯がいちっくな笑いは、岡田あーみんの漫画も彷彿とさせます。
 主要キャラが、次々と過激に壮絶にくたばっていくのも、シリーズのお約束。それぞれの死にざまが、これまたトンデモすぎて笑いを狙ってるとしか思えません。悲惨で残虐なのに、なぜか陰惨さがないところが、韓流のやくざ映画と違うところ。同じ泥臭く血生臭くても、日本のやくざには独特の美徳である仁義とか任侠といった人間臭さがあるけど、韓流やくざはとことん下劣で非情で、まさに外道。暴力描写も、エグすぎて笑えません。その点、この映画のバイオレンスは、どことなくユーモラスな味わいもあって、うげげと眉をひそめつつも笑えるんですよね~。特に掟を破った組員が、制裁を受けるシーン。ち◯こ切断!死んだほうがマシな非道さですが、なぜか笑えて仕方なかった。

 「仁義なき戦い」シリーズでおなじみの俳優たちが、熱く濃ゆく激突!みんな大真面目だけど、すごく楽しそう。毒にも薬にもならん演技や、ちまちました小器用な演技しか最近は見られないので、この映画のぶっとんだ、型にはまらない破天荒かつ鷹揚ともしている演技は、返って目に新鮮です。そして、俳優たちの荒々しい迫力と男くささには圧倒されるばかり。今のポリティカルコレクトネス俳優たちには望むべくもない魅力。中里役の松方弘樹と国頭役の千葉真一の激演が圧巻。特にサニー千葉の、イカレたカンフー極道ぶりが強烈。死に方もぶっとんでて爆笑。若い頃の男前なサニー千葉、どこな~くですがマッケンユーに似てますね。やはり血は争えません。でもマッケンユーには、絶対に無理な演技と存在感でした。
 キャストの中で最も目立っていたのは、やはりこの男、渡瀬恒彦

 「狂った野獣」と同年の映画なので、当時32歳の渡瀬さん。若い!いい男!そして、役のおかげもあって、すごく可愛い!腕っぷしと度胸は右に出るものなしだけど、すごくひょうひょうとしてて愛嬌たっぷりなキャラを、おちゃめに演じてる渡瀬さん。笑顔のピュアさときたら!文無しなのにヤろうとして娼婦に拒まれつつ、なんだかんだでヤっちゃうシーンの渡瀬さんが、超可愛くてセクシー!パンツ一丁姿の浅黒い肌とガッチリしたカラダ、レイプまがいのエッチのエロいこと!娼婦がメロメロになるのも当然。彼女を殴って貯金箱を奪うシーンも、クズすぎるけど笑える憎めなさ。

 長身でスタイル抜群なところもカッコいい渡瀬さん。Tシャツ&帽子も可愛かった。得意のスタントなしカーアクションも、今の映画にはない粗削りな魅力が。とにかく若々しくイキがよくて男くさい渡瀬さんの姿に、あらためて彼が不世出の役者であることを思い知りました。

 その他、カリスマ兄貴な梅宮辰夫、セコくてズルい成田三樹夫、朴訥で昔気質な室田日出男が、お約束なキャラを好演。晩年はおちゃめなおじさんとして人気だった地井武男が、狡猾な悪役だったのも面白かった。彼らのギラギラした脂ぎった存在感も、こぎれいで薄っぺらい今の俳優にはない独特な魅力です。サニー千葉と辰っつあん以外の主要キャストは、今はもう彼岸の住人になってしまってることが切ないです。千葉さんはお元気そうですが、辰っつあんは病床にあるとか。心配ですね…
 東映のやくざ映画といえば。もうすぐ公開される「孤狼の血」も楽しみですが。タイトルもキャストも、いまどきな感じ、こぎれいでライトな女性向けっぽくて、70年代のやくざ映画ファンには失笑ものな映画になってそうな予感…
コメント (6)
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