まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

半魚人に抱かれた女!

2018-04-06 | 北米映画 15~21
 「シェイプ・オブ・ウォーター」
 1962年、冷戦下のアメリカ。発話障害のあるイライザは、政府の秘密研究所で清掃員として働いていた。南米から運ばれてきた異形の生物と、いつしか心を通い合わせるようになるイライザだったが、軍人のストリックランドが生物を虐待し、解剖のため殺そうとしていることを知り…
 「パンズ・ラビリンス」などで知られるメキシコのギレルモ・デル・トロ監督作品。本年度のアカデミー賞受賞作を、ようやく観ることができました~。噂にたがわず、とてもユニークで楽しい映画でした。 ロマンチックで切ないラブストーリー、幻想的なファンタジー、ゲロゲロなホラー、プッと笑えるコメディ、意外な展開のサスペンス、そしてドリーミーなミュージカルと、映画のすべてが凝縮された映画、お正月の福袋みたいな映画でした。福袋にはたいてい、がっかりさせられるものや、こんなん要らん!なものが一つか二つ入ってるけど、この映画に詰め込まれているものには、すべて満足しました。どのエッセンスも映画ファンの心をくすぐる、映画への愛にあふれていました。特にモンスター映画ファンには感涙ものなのではないでしょうか。

 高度なCGではなく、着ぐるみ感のある半魚人とか、円谷プロのウルトラマンシリーズを思い出させます。ウルトラマンって、子ども番組とバカにできない深いテーマや社会的メッセージがあるエピソードが、多々ありましたよね。この映画も、現在の不寛容で刺々しいアメリカ社会への、批判や憂慮に満ちた内容になってました。黒人、女性、同性愛者、障害者への狭量で非情な差別や攻撃的な排除。自分の国だけが大事だという考えや行動。60年代と何も変わってない、むしろ今のほうが堂々としてる怖さを、この映画を観てあらためて痛感しました。トランプ大統領そのものな将軍とか、笑えないキャラも痛烈な皮肉となってました。

 楽しいモンスター映画なのですが、子どもは観ちゃダメ!な大人向けのモンスター映画、なところも好きです。イライザのバスルーム自慰とか、半魚人とのラブシーンとか、裸や性的シーン満載。そして、残虐な鮮血描写も強烈。特に半魚人に食いちぎられたストリックランドの指が、ウゲゲ~な存在感です。
 この映画、キャストの好演が素晴らしいです。みんなグイグイと観客の心を引きつける名演!

 イライザ役のサリー・ホーキンス、その女優魂に感服!ただ美しいだけの女優にはまず無理な、大胆かつ力強くも細やかな演技でした。半魚人にも、それ以上に恐ろしいストリックランドにも、たじろぐことなく向き合う不敵とも言える態度や表情、迷いのない行動力、勇気がカッコいい、と同時に、どこか不気味な不穏なもの、女の業も秘めているところが、特異なヒロインでした。フツーの女は、半魚人に欲情したりしませんし脱ぎっぷりの良さにも感嘆。台詞がなく、表情もオーバーな喜怒哀楽を表さないのに、イライザのほとばしる感情が伝わってくる。言葉以上にエモーショルな手話が圧巻でした。「スリー・ビルボード」のフランシス・マクドーマンド同様、サリー・ホーキンスもオスカー受賞に値する演技でした。「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーンよりは、はるかにハイクオリティな演技です。
 今やハリウッドきっての怪優、マイケル・シャノンがストリックランド役を怪演熱演!

 まさに鬼演技!顔だけでもヤバさがハンパないです。早く死んで!と願わずにはいられない悪役。あんな悪いオーラを毒ガスのように噴出できる役者も、そうそういないですよね~。マイケル・シャノンの毒々しい、黒々しい悪や狂気に比べると、日本の俳優の悪役なんてユルいヌルい可愛いもんですよ。ただ残虐で凶暴なだけでなく、ネチっこく陰湿なイヤらしさも瘴気のごとし。イライザやゼルダへの態度、言動など、笑えるほどイヤ~な感じです。何でこんなにイヤな人になったのか、気になったり気の毒になったりするほどに。奥さんとボカシ入りのセックスシーンとかにも度肝を抜かれました。調子ぶっこいて買ったキャデラックを、すぐにぶっ壊されたのが可哀想で笑えた。そのシーンのシャノン氏の表情も絶妙でした。

 イライザの隣人で親友であるゲイの老画家役、リチャード・ジェンキンスのシブい乙女おじさんぶりも、可愛くて切なかった。イライザの同僚ゼルダ役のオクタヴィア・スペンサーは今や、黒人の善い人役やらせたら右に出るものナシな女優ですよね~。あんな優しい誠実な友人たちに恵まれたイライザ、ちっとも孤独な女性ではありません。ソ連の回し者科学者役は、「君の名前で僕を呼んで」での好演も忘れがたいマイケル・スタールバーグ。観てる間は、ぜんぜん気づかなかった。君名僕とは別人!後で知って驚きました。
 半魚人が、モンスターなのに全然キモくなくて、すごくカッコよく見えたのが不思議。長身でスタイルよくて筋肉質。ゆで卵や音楽が好きになるところとか、可愛かった。画家の飼い猫を食べちゃうシーンが、ウゲゲゲかつ笑えた。私ももう半魚人でいい!イライザみたいな素敵な異形の恋に落ちてみたたいものです
コメント (8)
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