まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

開発された女

2018-04-12 | 日本映画
 「化身」
 文芸評論家の秋葉は、田舎出身の若いホステス霧子を愛人にする。霧子は秋葉の愛撫と庇護によって、美しく洗練された女へと成長するが…
 原作は渡辺淳一の小説。渡辺センセイの作品の映画化といえば、大ヒットし流行語にもなった「失楽園」が有名ですが、この作品も同じ黒木瞳が主演です。当時26歳、宝塚を退団した直後の映画初主演作で、実に思い切りのいい脱ぎっぷり、濡れっぷりを披露しています。無名の新人女優や売れない女優ならまだしも、宝塚の娘役のトップとして輝かしいキャリアを築いていた黒木瞳がどうしてここまで?と、当時のファンはざぞや困惑したのではないでしょうか。でも、70・80年代は松坂慶子とか大竹しのぶとか十朱幸代とか、多くの大女優は当たり前のように脱いで濡れてましたし、きっと黒木さんもそういう鮮烈な印象をスクリーンに刻める大女優を目指したのではないでしょうか。そんな彼女の女優魂には感服。今の人気女優は、きれいで可愛いだけで、ほんとつまんないです。

 で、この映画の黒木さん、当然のことながら若い、そして可愛いです。現在は小ぎれいなブリッコ熟女、といった感じの黒木さんですが、この映画の彼女も熟女じゃないことを除けば、今とほとんど同じです。清純で可憐で、まさに宝塚の娘役そのものです。そして、すごいブリッコです。あんな喋り方、仕草をする女性って、実際にもいるのでしょうか。私は会ったことありません。大胆すぎる全裸は、まったくエロくありません。アンなことコンなことされたりしたりの黒木さんですが、ガリガリに近い痩せた肢体と貧乳のせいで、何だか痛々しかったです。でも、ボカシ入りのセックスシーンでのエクスタシー顔や声など、かなり頑張ってました。

 やぼったい田舎娘が、男の愛で磨かれて都会的で華やかな女に変貌していく、という設定なのですが。あまり洗練されたようには見えず、ファッショナブル(死語)なつもりっぽい衣装にも苦笑。80年代の売れないB級アイドルのステージ衣装みたいな服とか、ある意味特異で超個性的ではありましたが。

 秋葉役の藤竜也が、いい男!熟年の色気たっぷりで、エロいです。おじさんなのに、非メタボな引き締まった肉体美に驚嘆。美尻も眼福でした。ダンディーだけど、どこかコミカルなところがスケベな中年おやじ感を希薄にしていました。独特の喋り方とか、ちょっとトボけた演技とか、かなり笑えます。当時45歳の藤氏、今のキムタクと同じぐらいなんですよね~。信じがたいです。キムタクも、秋葉みたいな役に挑戦すればいいのに。藤さんは最近もTVドラマに出演したり、お元気そうで何よりです。

 山口百恵や中森明菜の大ヒット曲を作詞した阿木燿子が、秋葉の愛人役を好演。女優とは違う独特の演技、雰囲気。上品なマダム感と熟れた色香、黒木瞳と違って高級感があるファッションも素敵でした。何と濡れ場では彼女も脱いでます。彼女と黒木瞳が恋のライバルではなく、共感で結ばれて親密になる不思議な関係が、ちょっと精神的レズビアンみたいで面白かったです。

 秋葉の友人役で梅宮辰夫、秋葉の元妻役で三田佳子、秋葉の母役で淡島千景が出演しています。秋葉家の家政婦役の杉山とく子とか、懐かしい顔も。
 金とステイタスのある男が、無垢な娘を自分好みの淑女に育てる、という源氏物語やマイ・フェア・レディみたいな調教物語なのですが、秋葉はただセックスして資金援助してるだけで、霧子の美質を引き出したり磨いたりすることはしてないのが、ちょっと物足りなかったです。脚本の問題?原作はどうなのでしょう。この映画の秋葉と霧子は、小金持ちの初老男性が若い女に騙されて、みたいな世間でよくあるセコい痴情のもつれっぽくなってたのも残念。でも、渡辺センセイはやっぱ究極のフェミニストなのでしょうか。女のほうが、男より賢く強い。ラストの秋葉へ告げる別れ話、ズルいな~悪い女だな~でも優しいな~私も男に言ってみたいと思わせる、いい女にしか言えない台詞でした。さんざん振り回されて傷つけられたけど、楽しい甘い夢を見ることができた秋葉は、まさに男のファンタジーを体現したかのよう。男は愚かで可愛い。これも渡辺センセイの男性観でしょうか。
コメント (4)
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