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中野美代子『中国の妖怪』

2010-10-11 18:28:00 | ノンジャンル
 俳優の池部良さんの訃報を知りました。享年92才だそうです。私にとっての池部さんは、『昭和残侠伝 死んで貰います』を始めとするマキノ雅弘監督の任侠映画における、死地に向かう色気を孕んだ圧倒的なイメージとして脳裏に刻まれています。心よりご冥福をお祈りいたします。

 さて、中野美代子さんの'83年作品『中国の妖怪』を読みました。
 紀元前5世紀ごろから3世紀ごろの間に中国に存在した中山王国の遺物の分析から始まって、鹿の角は再生することから、龍などの角は聖性のシンボルとなっていたことが先ず述べられます。そして、模様の基本モチーフから龍が生まれ、蛇の生命力がそれに与えられて、文様として増殖を開始し、一方「龍」という文字が生成され、同時に龍は文様の中から抜け出して絵画や彫刻など造形美術の主役として独立していくことが語られます。そして中国の夜空における龍の存在にも言及され、ヨーロッパのドラゴンとの比較もなされます。次に、中国の世界を象徴する蒼龍・白虎・朱雀・玄武の四神あるいは四獣について語られ、麒麟と一角獣、人面獣、人魚、鬼などについても語られます。
 様々な文献に通ずる博覧強記ぶりにはやはり驚かされ、具体的な事例で物事を説明していく手法には説得力がありました。図版も豊富に掲載されていて、それを見るだけでも楽しめます。中国に興味のない方にもオススメです。