昨日のMLBワールドシリーズ第1戦は11対7でジャイアンツが先勝しましたが、後半でレンジャーズの追い上げがあり、第2戦以降に希望を持たせる内容でした。第2戦レンジャーズが勝てば、レンジャーズ有利の流れになると思います。がんばれ、レンジャーズ!
さて、山田宏一さんの'10年作品『ゴダール、わがアンナ・カリーナ時代』を読みました。山田さんが'97年に来日したアンナ・カリーナさんにインタビューを行い、またやはり'97年に来日したラウル・クタールさん(五月革命までの'60年代のほぼ全てのゴダール作品の撮影を担当された方)にインタビューできたことをきっかけに、ジャン=リュック・ゴダール監督がアンナ・カリーナさんと出会った頃に作ったデビュー作『勝手にしやがれ』から、五月革命によってラジカルに変質していく前まで、つまり『ウィークエンド』までのゴダール作品、名付けて「アンナ・カリーナ時代」のゴダール作品に関して、山田さんが語り尽くしている本です。
ゴダールの作品には「主として彼の感情を描いた」映画の系譜と、「主として彼の思想を描いた」映画の系譜があるとトリュフォーは述べているのですが、山田さんは「アンナ・カリーナをヒロインにした作品はすべて、何よりもまず『感情の映画』としての美しさと真実にかがやいているかのようだ」と述べます。そしてアンナ・カリーナさんへのインタビューを紹介した後、具体的に一つ一つの作品の持つ魅力に山田さんは言及していくのですが、そこで紹介される様々な人々の言葉やゴダールによる映画への引用の指摘、実際に映画に引用された文章や映像、映画の撮影中の様々なエピソードなどの紹介は、まさにたった今ゴダールの映画を見ているような錯覚に陥るほどの素晴らしい文章であり、そしてそうした文章は言及されている作品をすぐ見たいという欲望を掻き立て、それはゴダール作品に留まらず、リチャード・クワイン監督の『殺人者はバッヂをつけていた』('54)、オットー・プレミンジャー監督の『堕ちた天使』('45)、ニコラス・レイ監督の『にがい勝利』('57)、ボリス・バルネット監督の『帽子箱を持った少女』('27)、アンソニー・マン監督の『西部の人』などの映画、またアルフレッド・ジャリの『ユビュ王』、ルイ・アラゴンの『死刑執行』などなどの文学作品にも及ぶものでした。そして山田さんの書く魅力的な文章、例えば「映画は見る者のまなざしを眠らせ、私たちの欲望に従って動く世界を夢みさせる」(P.160)といった文もあふれんばかりに書かれています。
ゴダールのアンナ・カリーナ時代の作品を語った本ということにとどまらず、「映画」そのものを語った本、「映画」への愛に満ち満ちた本として、私の生涯の一冊に加わるであろう本でした。映画ファンなら限り無い喜びを得られる希有の本です。正真正銘、文句無しにオススメです。
なおもっと詳しい内容を知りたいという方のために、私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)の「Favorite Books」にここに書き切れなかった情報をアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。
さて、山田宏一さんの'10年作品『ゴダール、わがアンナ・カリーナ時代』を読みました。山田さんが'97年に来日したアンナ・カリーナさんにインタビューを行い、またやはり'97年に来日したラウル・クタールさん(五月革命までの'60年代のほぼ全てのゴダール作品の撮影を担当された方)にインタビューできたことをきっかけに、ジャン=リュック・ゴダール監督がアンナ・カリーナさんと出会った頃に作ったデビュー作『勝手にしやがれ』から、五月革命によってラジカルに変質していく前まで、つまり『ウィークエンド』までのゴダール作品、名付けて「アンナ・カリーナ時代」のゴダール作品に関して、山田さんが語り尽くしている本です。
ゴダールの作品には「主として彼の感情を描いた」映画の系譜と、「主として彼の思想を描いた」映画の系譜があるとトリュフォーは述べているのですが、山田さんは「アンナ・カリーナをヒロインにした作品はすべて、何よりもまず『感情の映画』としての美しさと真実にかがやいているかのようだ」と述べます。そしてアンナ・カリーナさんへのインタビューを紹介した後、具体的に一つ一つの作品の持つ魅力に山田さんは言及していくのですが、そこで紹介される様々な人々の言葉やゴダールによる映画への引用の指摘、実際に映画に引用された文章や映像、映画の撮影中の様々なエピソードなどの紹介は、まさにたった今ゴダールの映画を見ているような錯覚に陥るほどの素晴らしい文章であり、そしてそうした文章は言及されている作品をすぐ見たいという欲望を掻き立て、それはゴダール作品に留まらず、リチャード・クワイン監督の『殺人者はバッヂをつけていた』('54)、オットー・プレミンジャー監督の『堕ちた天使』('45)、ニコラス・レイ監督の『にがい勝利』('57)、ボリス・バルネット監督の『帽子箱を持った少女』('27)、アンソニー・マン監督の『西部の人』などの映画、またアルフレッド・ジャリの『ユビュ王』、ルイ・アラゴンの『死刑執行』などなどの文学作品にも及ぶものでした。そして山田さんの書く魅力的な文章、例えば「映画は見る者のまなざしを眠らせ、私たちの欲望に従って動く世界を夢みさせる」(P.160)といった文もあふれんばかりに書かれています。
ゴダールのアンナ・カリーナ時代の作品を語った本ということにとどまらず、「映画」そのものを語った本、「映画」への愛に満ち満ちた本として、私の生涯の一冊に加わるであろう本でした。映画ファンなら限り無い喜びを得られる希有の本です。正真正銘、文句無しにオススメです。
なおもっと詳しい内容を知りたいという方のために、私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)の「Favorite Books」にここに書き切れなかった情報をアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。