イエジー・スコリモフスキ監督『身分証明書』

　イエジー・スコリモフスキ監督の長編デビューである'64年作品『身分証明書』を渋谷のシアター・イメージフォーラムで見ました。
　アンジェイ（イエジ－・スコリモフスキ）は兵役試験を受けさせられて合格し、翌日の朝の出発を命じられます。街で女性と知り合ったり、様々なエピソードが重ねられますが、結局翌朝アンジェイは列車に飛び乗って旅立つのでした。
　冒頭の夜のシーンで、様々な登場人物が動くのを移動撮影で捉え、ドラム缶の焚き火で大きな人影が巨大な壁に映るのを見て、スコリモフスキはただ者ではないと思いました。それ以外にも、電話をする主人公のバックで窓越しに車が何度も前進後退を繰り返したり、部屋の中の主人公と女性のバックで、窓から屋根の上を行ったり来たりする煙突掃除の男がいるなど、前景後景で別の動きのあるシーンが目立ちました。また、乗り物に主人公が飛び乗ったり飛び降りたりというシーンも度々目にしました。ストーリー的には何ということもない映画ですが、映像で魅せてくれたと思います。'60年代のヌーヴェルヴァーグの雰囲気を知ることもできてオススメです。