朝日新聞で推薦していた蓮見圭一氏の「水曜の朝、午前三時」を読みました。
1992年、四条直美が脳腫瘍で亡くなります。年明けに告知を受け、築地の国立がんセンターに入院した彼女は、その年の秋に死にます。享年45才。翻訳家や詩人としても知られた彼女は、亡くなる前に病床でニューヨークに留学している娘にあてて4本のテープに自分の人生を録音します。祖父がA級戦犯で、厳格に育てられ、両親の言うことを聞いて真面目に育っていきますが、大学を出て会社に入った頃から自立を夢見るようになり、親が決めた許嫁(いいなずけ)から逃げ出し、会社を辞め、大阪万博のコンパニオンになるため、大阪に旅立ちます。そしてそこで1人の男性と出会い、恋に落ちます。それはおよそ二十年間にも及ぶ密やかな愛で、その愛について、彼女は包み隠さず語りだします‥‥。
まず、物語の構成がうまいなあ、と思いました。余命いくばくもない母が娘に向けて録音したテープの内容をこれから公開します、という冒頭の部分で、嫌が応にも読者の読書欲を掻き立てます。物語も娘に語るという形を取っているので、読者が直接話し掛けられているような錯覚に陥り、物語に引き込まれます。
時代設定も、1970年に開催された大阪万博の頃ということで、私の小学生時代に重なり、当時あこがれだった万博のコンパニオンの華やかな世界に触れられるのも、この小説の魅力でした。
ただ、母が恋した男が韓国籍だというだけの理由で別れてしまうのは、納得がいきませんでした。それまでの物語がとても良かっただけに残念でした。
題名は、サイモン&ガーファンクルの曲名からとったもので、作品上にも70年代を飾った固有名詞が次々と出てきます。この辺も70年代に青春を送った世代には懐かしいものでしょう。
いろいろ書きましたが、読んで損はない小説です。まだ読んでない方には、オススメです。
1992年、四条直美が脳腫瘍で亡くなります。年明けに告知を受け、築地の国立がんセンターに入院した彼女は、その年の秋に死にます。享年45才。翻訳家や詩人としても知られた彼女は、亡くなる前に病床でニューヨークに留学している娘にあてて4本のテープに自分の人生を録音します。祖父がA級戦犯で、厳格に育てられ、両親の言うことを聞いて真面目に育っていきますが、大学を出て会社に入った頃から自立を夢見るようになり、親が決めた許嫁(いいなずけ)から逃げ出し、会社を辞め、大阪万博のコンパニオンになるため、大阪に旅立ちます。そしてそこで1人の男性と出会い、恋に落ちます。それはおよそ二十年間にも及ぶ密やかな愛で、その愛について、彼女は包み隠さず語りだします‥‥。
まず、物語の構成がうまいなあ、と思いました。余命いくばくもない母が娘に向けて録音したテープの内容をこれから公開します、という冒頭の部分で、嫌が応にも読者の読書欲を掻き立てます。物語も娘に語るという形を取っているので、読者が直接話し掛けられているような錯覚に陥り、物語に引き込まれます。
時代設定も、1970年に開催された大阪万博の頃ということで、私の小学生時代に重なり、当時あこがれだった万博のコンパニオンの華やかな世界に触れられるのも、この小説の魅力でした。
ただ、母が恋した男が韓国籍だというだけの理由で別れてしまうのは、納得がいきませんでした。それまでの物語がとても良かっただけに残念でした。
題名は、サイモン&ガーファンクルの曲名からとったもので、作品上にも70年代を飾った固有名詞が次々と出てきます。この辺も70年代に青春を送った世代には懐かしいものでしょう。
いろいろ書きましたが、読んで損はない小説です。まだ読んでない方には、オススメです。