gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

蓮見圭一『水曜の朝、午前三時』

2006-11-20 16:15:02 | ノンジャンル
 朝日新聞で推薦していた蓮見圭一氏の「水曜の朝、午前三時」を読みました。
 1992年、四条直美が脳腫瘍で亡くなります。年明けに告知を受け、築地の国立がんセンターに入院した彼女は、その年の秋に死にます。享年45才。翻訳家や詩人としても知られた彼女は、亡くなる前に病床でニューヨークに留学している娘にあてて4本のテープに自分の人生を録音します。祖父がA級戦犯で、厳格に育てられ、両親の言うことを聞いて真面目に育っていきますが、大学を出て会社に入った頃から自立を夢見るようになり、親が決めた許嫁(いいなずけ)から逃げ出し、会社を辞め、大阪万博のコンパニオンになるため、大阪に旅立ちます。そしてそこで1人の男性と出会い、恋に落ちます。それはおよそ二十年間にも及ぶ密やかな愛で、その愛について、彼女は包み隠さず語りだします‥‥。
 まず、物語の構成がうまいなあ、と思いました。余命いくばくもない母が娘に向けて録音したテープの内容をこれから公開します、という冒頭の部分で、嫌が応にも読者の読書欲を掻き立てます。物語も娘に語るという形を取っているので、読者が直接話し掛けられているような錯覚に陥り、物語に引き込まれます。
 時代設定も、1970年に開催された大阪万博の頃ということで、私の小学生時代に重なり、当時あこがれだった万博のコンパニオンの華やかな世界に触れられるのも、この小説の魅力でした。
 ただ、母が恋した男が韓国籍だというだけの理由で別れてしまうのは、納得がいきませんでした。それまでの物語がとても良かっただけに残念でした。
 題名は、サイモン&ガーファンクルの曲名からとったもので、作品上にも70年代を飾った固有名詞が次々と出てきます。この辺も70年代に青春を送った世代には懐かしいものでしょう。
 いろいろ書きましたが、読んで損はない小説です。まだ読んでない方には、オススメです。

岡崎京子『ヘルタースケルター』

2006-11-19 18:44:09 | ノンジャンル
 手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞した岡崎京子さんの「ヘルタースケルター」を読みました。
 整形に整形を重ね美しい肉体を得たりりこは、若い女性に絶大な人気を誇るトップモデルです。しかし、私生活は酒とドラッグと男にまみれた乱れたもので、肉体も定期的に再手術を受けないと整形による副作用で崩れてきてしまいます。
 結局、りりこは精神的にも肉体的にも崩壊し、彼女の泊まっていたホテルには、彼女のものと思われる血のりと一個の眼球が残されたまま、消息を絶ってしまいます。
 そして数年後、りりことライバル関係にあった吉川こずえは、ロケでメキシコに行き、そこでフリークス(怪物)が次々に出るショウの出演者の1人として、チャイニーズドレスを着た片目のりりこに再会するのでした。
 岡崎さん独特の崩れた女性の表情のすごさは、やはり圧倒されます。世界としては「Pink」に共通するものがあると思うのですが、こちらの方が主人公の生き方がすさまじく、確信犯的なところがあるだけに、救いようがないのですが、ラストで崩れた美貌を武器にたくましく生きる主人公を見せたところに、一筋の光がさした気がします。
 岡崎さんのファンの方で、まだ読んでいない方には、オススメです。

ヴィム・ヴェンダース監督『ランド・オブ・プレンティ』

2006-11-18 16:48:41 | ノンジャンル
 一時遠ざかっていたヴィム・ヴェンダース監督の映画を久しぶりにWOWOWで見ました。'04年作品の「ランド・オブ・プレンティ」です。
 舞台はアメリカの中部。ベトナム戦争の悪夢から抜けだせず、9・11の同時多発テロから、テロリスト退治に乗り出した男。彼は大きなバンを改造し、周囲を監視し、完全武装できるだけの武器も車の搭載しています。そんな彼のところへ、ヨルダン川西岸から妹の子供(といっても、年頃の娘)がやってきます。彼女は教会で働くようになりますが、そんな折り、男が前から目をつけていたアラブ人が彼の目の前で殺され、彼はそのアラブ人が死ぬまぎわに言った地名を手がかりに、テロリストの探索に向かいます。そこは、貧乏な人々が暮らすキャンピングカーのプールで、死んだアラブ人の親類はテロリストとは何の関係もない人でした。彼は途方に暮れ、姪と話をします。ベトナムのこと、同時多発テロのこと。すると姪は、同時多発テロの映像がヨルダン川西岸で流された時、民衆は喝采の声を上げたことを話します。男は「そいつらはテロリストか?」と聞きますが、姪は「一般の人々よ。そこが悲しいところなのよ。皆、アメリカのことを憎んでいるのよ」と話します。男には、そのことが理解できません。目的を失った男と憎しみの連鎖を止めたいと思う姪は、二人バンに乗り、どこへ続くのか分からない道を進んで行くのでした。
 途中までは、男の異常さが目を引きますが、死んだアラブ人の親類と話をするあたりから、人間性を取り戻し、最後の姪との会話で本来の心を取り戻します。
 同時多発テロ以降のアメリカを描いた一本の映画として、見る価値はあると思います。

グループホームの体験その2

2006-11-17 21:19:08 | ノンジャンル
 今日は、昨日と同じグループホームの別棟に行ってきました。ここにもいました、名物おじさん!勝新太郎似の叔父さんなんですが、徹底した男嫌い。男の実習生はそばにも寄せないそうです。逆に徹底した女好き。若い女性が来ると、放送禁止用語の連発、しかも手もだしちゃうらしく、過去に女の実習生がトイレに逃げ込んだという逸話の持ち主です。私は彼に招かれて、隣に座るという快挙を達成しました! この叔父さんは、すけべなだけでなく、大声で歌は歌うし、しょっちゅう泣くし、とにかく忙しい人でした。
 昨日は初日ということもあって、控えめに見ていましたが、今日はかなり批判的に見れるようになりました。少なくとも、このグループホームは三つの問題点を抱えていると思いました。
 一つ目は、人をやたら叱ることです。スタッフがスタッフを叱り、また何と利用者さんを叱るのです。私達の人生の先輩をくだらないことで叱るスタッフには反感を覚えました。
 二つ目は、自分でできることは自分でやってもらうといいながら、入浴の際は本人は前半身を洗うだけで、他は全部介助者がやってあげていました。何か事情があるのでしょうか?
 三つ目。人に優しくない事です。私が帰りがけ、指導者の人に「今日はどうでした?」と聞かれたので、「あまり仕事をしませんでした」というと、「そうですね。利用者と一緒にテレビを見ていたけど、テレビを見ていてはいけません。利用者とコミュニケーションをとるようにしないと。このままでは、通用しませんよ。」と言われ、バタンとドアを閉められました。テレビを見たのは、4時から皆が相撲の中継を見ていたからで、私は私なりに場を盛り上げ、声をだして、周囲の方たちとコミュニケーションを図っていたのですが、それをまったく評価してもらえませんでした。また、皆が熱心に相撲を見ている時、個人的に話し掛けたりしたら、返って迷惑でしょう。それに最後には、「でもこの体験を活かして頑張って下さいね」ぐらい言えないかなあ。まあ、こんな人が働いているグループホームもあるということで、皆さん慎重に施設は選びましょう。

グループホームの体験

2006-11-16 20:10:59 | ノンジャンル
 今日は、ホームヘルパー2級取得講座の現場実習として、俗に言うグループホーム(老人性認知症疾患療養病楝)に行ってきました。いわゆる死ぬまで面倒を見てくれる老人ホームで、認知症の方を対象にした施設です。
 入ってすぐに気付いたのが、わずかな大便の匂い。これは私が到着した直前にトイレの時間だったことが原因で、スタッフの方も匂いを消すために空気清浄機を置いたり、換気に気をつけたりと、様々な努力をされていました。
 行ってすぐに頼まれたのが掃除機がけでしたが、9人の方々が皆個室を持ち、掃除の際に見たところでは、とても清潔で、整理整頓も行き届いたものでした。利用者の方がそうしているのか、スタッフが助けているのかは尋ねませんでしたが、ちょっと驚くほどの美しさでした。
 さて、いよいよ認知症の方とのお話しです。認知症の一番分かりやすい症状は、もの忘れです。さっき言ったことを、何度も言います。それにイライラせず、対応してあげられるかどうかが、認知症の方と仲良くなれるかどうかのポイントです。私は父が認知症なので、その点に関するとまどいはなく、何人かのおばあちゃんと仲良しになり、1人の方からは「ぜひ自宅に遊びに来てください」とまで言われました。ひとり徘徊をするおじいさんがいて、この方はほっておくとどこでも行って物をいじくり回したり、壊そうとしたりするので、目が話せないのですが、どうしても椅子に大人しく座ってくれないので、私が手をつないで一緒に座ると、結構長い間座ってくれていました。やっぱり寂しさが徘徊の原因の一つになっているのでしょうか?
 それからグループホームの特徴として、暇な時間、利用者が何もやらない時間というのが結構長くありました。健康な人なら本を読んだり、おしゃべりしたり、テレビを見たりするところを、症状が進んだ方はただソファに腰掛けてボーとしてるんですね。こういう方とは話す話題もなかなか思い付かず、対応に苦慮しました。
 そして最後に一つ。このような生活施設では利用者さんの帰宅願望が強いので、それに類した話題はタブーだとスタッフの方から言われました。利用者さんと話してると、私は毎晩自宅で寝るとか、今日は自宅で寝るとか言うのですが、全部嘘というか妄想なんですね。
 そこで一言。生活施設に親を預けている家族の皆さん、なるべく多くグループホームの親を訪ねてあげてください。皆さん、家族の方にとても会いたがっていますよ。