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ジョン・フォード監督『タバコ・ロード』

2007-07-11 15:42:46 | ノンジャンル
 久しぶりにDVDでジョン・フォード監督の'41年作品「タバコ・ロード」を見ました。ニンフォマニアック(色情狂)のジーン・ティアニーを見るのが目的です。
 100年前には豊かな農地が広がっていた土地もすっかりやせて、富豪だったレスター家の子孫は赤貧の暮らしを小屋でしています。オンボロ車で売れない薪を売るジーター(チャーリー・グレープイン)は、隣人のヘンリーと挨拶し、夫を亡くしたベッシーが帰って来て、一日中聖歌を大声で歌っていることを聞きます。妻のエイダと娘のエリー=メイ(ジーン・ティアニー)と息子のデュードが待つ我が家へ帰ると、ちょうどそこへカブの入った袋を背負ったラブ(ワード・ボンド)が現れ、ジーターの娘でラブの嫁のパールが、少しも口を聞かないと愚痴ります。13才だから、とジーターが言う間に、エリー=メイが色気むんむんでラブにすりより、彼女と抱き合った瞬間にエイダとデューダが石をラブにぶつけ、カブの袋を強奪します。そんなところに銀行家の息子ティム(ダナ・アンドリュース)が帰郷し、ジーターは金を貸してくれると狂喜しますが、貸金の回収と土地の地代の回収に来た、と言われ、しかも今度の日曜までに100ドル払わないと土地も取り上げられてしまう、と聞き、絶望しますが、帰り際にとうもろこしを1ダースもらうと途端に元気を取り戻します。ベッシーはデュードと結婚し、持金800ドルを全部注ぎ込んで車を買い、全国に伝道の旅に出る、といいますが、デュードの乱暴な運転でアッと言う間にポンコツになってしまいます。ジーターは救貧農場へ行きますが、規則に縛られた様子を見て行く気をなくし、帰ってくると、ラブが縛っていたパールが逃げ出したと泣きついてきます。ジーターは替わりにエリー=メイを連れて行ってもらいます。銀行の頭取が来て、日曜日に家の引き渡しを告げ、ジーターとエイダは救貧農場へ歩いて向かう途中、ティムに出会い、車に乗せてもらいます。着いた先は我が家でした。ティムが半年分の地代を払ってくれ、種や肥料の資金も渡してくれます。ジーターはこれからの夢を語りながら、犬を抱いて眠りにつきます、という話です。
 生活の悲惨さを常に流れる楽し気な音楽が救っています。物語としては「怒りの葡萄」に似ていますが、人気のない家のショットや、歩く二人を撮った遠景のショットなど、決して「怒りの葡萄」に引けをとらない出来だと思います。それからジーン・ティアニーですが、意外に出演シーンが少ないのに驚きました。背景ではなくストーリーの全面に出て来るのは2シーンだけです。しかし、この色情狂ぶりは一見の価値ありです。まだご覧になっていない方、ぜひご覧ください。

オースン・スコット・カード『シャドウ・パペッツ』

2007-07-10 15:25:45 | ノンジャンル
 吾妻ひでお氏が「クライマックスにカタルシス」を感じたというオースン・スコット・カードの「シャドウ・パペッツ」を読みました。エンダー・シリーズの第三作目だそうです。
 ビーンは覇権政府のトップ=ヘゲモンであるピーターのもと、勢力をインドまで拡大した中国で捕らわれている極悪人アシルを奪回する軍事作戦に反対しますが、彼の部下のスリヤウォングに命令し、奪還に成功します。ペトラは愛するビーンと行動を共にし、守ってほしいと言いますが、ビーンはかえって危険が増すと反対します。ピーターの母テレサはアシルに暗殺される危険から夫とともに避難するように言われますが拒否し、逆にアシムを暗殺しようとしますが、失敗します。。スリヤウォングの警告でヴァーロミは故郷のインドに向かい、道に石を並べて壁を作るという中国に対する抵抗運動を始めます。アシルはピーターに協力を約束します。遺伝子操作の権威アントンは遺伝子操作を受けたビーンに、ペトラとの間に子供を作るよう説得し、同意を得ます。ピーターの父はアシルを罠にかけようとしますが、なかなかしっぽを出しません。ビーンとペトラは結婚し、遺伝子操作をした受精卵を多く持つヴォレスキのところへ行き、受精卵を着床させた後、二人は別れます。ビーンはテレサ夫妻にアシルが危険なので、すぐ避難するようにというメールを受け、ピーターと共にブラジルを脱出し、アメリカに向かう飛行機の中から政府の拠点を移すことを発表し、一方アシムは横領の罪でピーターを指名手配し、軍の最高司令官にスリヤウォングを指名します。ペトラはインドネシア人のグループによってダマスカスに向かい、ビーンも二人の暗殺者からこのグループに救ってもらいます。ペトラはカリフとなった旧友アーライと再会し、後から到着したビーンはペトラの受精卵でアシムをおびき出し殺す、と言います。アラブ人は周囲の国と協力し、中国への侵攻作戦を決行します。宇宙ステーションにいるピーター親子らは囮のシャトルを中国に撃墜させ、その間にブラジルに戻ることにします。ウイグル地区では大規模な反乱が起き、中国のハン・ツーはイスラム教国の攻撃だと主張しますが、周囲に一笑に付され、ピーターはヴァーロミに戦闘開始を命じ、インド内の中国の拠点を占領します。インドシナ上陸作戦も成功し、中国は窮地に陥ります。アシルはヴォレスキから奪った受精卵を返すとビーンに行って来ますが、罠と知りながらビーンは指定された場所にピーターと共に行きます。スリヤウォングとアシムが現れ、アシムはビーンを射殺しろとスリヤウォングに命じますが、彼はアシムに剣を渡します。この裏切りのために、スリヤウォングは今までアシムの味方のふりをしていたのでした。ビーンはアシムを射殺します。ビーンのメールで、ペトラのいるダマスカスは、スンニ派とシーア派が和解し、ダマスカスを首都とするイスラム国ができたことで、お祭り騒ぎです。ブラジルでペトラはビーンと再会し、ピーター、テレサらと共に未来の世界を語り合います、という話です。
 クライマックスというのは、ラストでの中国への総攻撃が始まるところだと思いますが、私はそれほどカタルシスは感じませんでした。登場人物が多く、それぞれの行動を追って行くので精一杯で、小説を楽しむところまで行きませんでした。SF好きで政治サスペンスが好きな方にはオススメです。

津原泰水『綺譚集』

2007-07-09 15:28:20 | ノンジャンル
 吾妻ひでお氏の推薦する津原泰水氏の『綺譚集』を読みました。13の短編からなる本です。
「天使か痛い」では、神経を病んだ主人公は、少女が自転車ごと車にはねられ、その無惨な死体を写真に撮る話。
「サイレン」では、サイレンが鳴る度に町の者が一人消えて行く町で、射精を求める弟と憎悪にあふれる姉が祖父を殺しますが、姉の胸に顔をうずめ射精した後、意識を無くした弟が気付くと姉がいなくなってるという話。
「夜のジャミラ」では、イジメられる約に満足して自殺した少年が動物と合体した矢島君の霊と合体し、ジャミラのような姿になり、矢島君を僕の自殺の原因だといった奥村さんとも合体しようとする話。
「赤假面傳」では、私は画家で生物の美を腹一杯に吸い込んで、一気呵成に絵を描きます。年下の美少年・稲生も赤い仮面をつけて美を吸い取り殺してしまいます。大作のために6人の麗人の命を奪った私の前に稲生が現れ、私は今自分の中にある美のエネルギーを稲生に授けてやろう、と思うという話。
「玄い森の底から」では、書の大家にほれ、最後に子供を産んでほしいとまで言われた私は、内弟子の嫉妬をかって、首を絞められ、殺されながら犯されます。虫のすみかとなった私の肉体は、内弟子に毒をもられ続けている先生が心配で、先生の家をめざしますが、内弟子に灯油をかけられ焼かれてしまう、という話。
「アクアポリス」では、学校の帰りに女の子が池に落ちて死にます。同級生が夏に沖縄に帰ると、彼女が言っていたのを思い出し、死体を海に流します。が、翌日彼女は普通に学校に来て、アクアポリスが沖縄に運ばれて行った日に彼女も消える、という話。
「脛骨」では、交通事故で右足を切断したホステスを見舞った、同じ店で働くバンドマンが、行方不明だった彼女の足を見つけます。三十年後、入院した彼女に足の骨をバンドマンが返す、という話。
「聖戦の記録」では、兎を愛好し、犬を目の敵にしているヒロスエリョウコを中心とした老人集団から飼い犬のイシダイッセイに投石されたおれは幼馴染みのソリマチタカシと兎を殺害し、死体を木に吊るします。するとおれたちの犬が惨殺され、おれたちはヒロスエリョウコを殺す、という話。
「黄昏抜歯」は、歯を治療する話。
「約束」は、観覧車に間違って乗ってしまった男女が一目惚れし、その夜急死した男が女が死ぬまで霊となって見守る、という話。
「安珠の水」では、娼婦の女がプールで女の子を産み、海岸を転々として男に出会いますが、住む家がほしいと言うと、売女よばわりされて金をくれます。ある日、海藻だらけの人影から娘の声がしますが、それは単なる海藻の固まりで、なぜかテレビに娘が出ていた、という話。
「アルバトロス」では、近親相姦の町に白い兵隊がやってきます。上の姉の夫は殺され、彼女は僕とセックスします。彼女は地雷でバラバラになり、僕はしたの姉とシックスナインに明け暮れます。そして「少佐」をフェラチオし、フィストアナルファックをする、というエロ小説。
「古傷と太陽」では、石垣島出身ということで付き合った男は、夜になると腹の傷痕が開いて、青い光を発します。その傷は以前女を殺した時に受けた傷でした。男は女と別れようとしたところ、首のない女の腹の中に頭をつっこんで死んでしまいます。女の頭は石垣島にあるらしい、という話。
「ドービニィの庭で」は、ゴッホの描いた「ドービニィの庭」を再現するように頼まれ、妹は注文主の子供を産みますが、絵の強烈な緑と同じ色をした異物が産まれて来る、という話。
「隣のマキノさん」は、虫相手に地雷を庭に埋め、有刺鉄線で庭を囲み「立ち入り禁止」の札をつけているマキノじいさんの話。
 ということで、おどろおどろしい話ばかりで、その上文章も難解で、物語の意味不明なものばかり。なんでこんな話を書くんだろう?と首をひねりまくりました。まあ、面白いかな、と思ったのは「「赤假面傳」と「聖戦の記録」ぐらいでした。おどろおどろしい物語の好きな方には、オススメです。

中島らも・鮫肌文殊『イッツ・オンリー・ア・トークショー』

2007-07-08 16:29:11 | ノンジャンル
 故中島らも氏と鮫肌文殊氏がゲストを呼んで舞台でトークショーをしたものを本にしたものです。吾妻ひでお氏が「2」の方を推薦していたので、「1」の方を先に読んでみました。
 室井祐月女史の前に男性陣タジタジの図があったり、らも氏がやたらケンカ越しで野坂昭如氏と今にもケンカが始まりそうでドキドキしたトークバトルが特に印象的でしたが、それ以外では、大村アトム「ガンジー(石原)さん、喪服は持ってはったんですけど、黒の革靴を持ってない。で、思い切りはって靴屋行ったんやけど、家にビーチサンダルしかなかったんで、喪服着て、ビーチサンダル履いて靴屋の人に『革靴ください』言うて。」(P.13)、鮫肌「僕ら、新宿のシアタートップスの舞台に出てましたからね。いま思うと信じられませんけど(笑)。リリパットが中華芝居を始めたときに、僕とガンジーさんが棒を振り回しながら戦うというシーンがあったんですけど、ボロボロで客席から失笑がもれてたもんね。アンケートに「あいつら誰や?即刻やめさせろ!」と書いてあって(笑)。旗揚げメンバーやっちゅうねん!」(p.26)、鮫肌「(前略)ガンジーさんがボコボコになったっていうと、日比谷野外音楽堂の話もあるじゃないですか。「じゃがたら」ってバンドのボーカルだった江戸アケミさんが亡くなったときの追悼ライブに行って。また、このオッサンが「じゃがたら」好きなもんやから、アホほど酒飲んでですね。「アケミー!」とか言うて一人で騒ぎまくってたんでしょうね。あまりほえるもんやから、横にいた客がブチ切れて「てめえ、うすせぇんだよ!」ってボカッと。」ガンジー「ベロンベロンやったから、なんも憶えてないんやけど(笑)。」鮫肌「気がついたら、ライブは終わってて。血まみれで横たわっていた、と。雨の野音ですよ。ザーザー降りで。」ガンジー「また見てきたようなことを。(笑)」(p.32)、ガンジー「おかげさんで。(髪の毛が)あっという間になくなりましたけど。美容室で『ロッド・スチュワートにして』って言ったことあるから。」らも・鮫肌「んっ‥‥(笑)」ガンジー「なにがおかしいの!」鮫肌「誰がロッド・スチュワートやねん!」ガンジー「わしや、わし!」らも「ヘラはいってきた(笑)」ガンジー「らもさん、なんて注文します?」らも「おれは昔の話やから、だーれも知らんと思うけど、『トワ・エ・モワみたいに』って。」鮫肌「それもかなりやね。(笑)」ガンジー「ほんで、ちょっと髪の毛も弱ってきたころ、『松山千春にして』って言うたわ。」鮫肌「いまの?」ガンジー「いや、『季節の中で』『長い夜』とか流行ってた頃。まだ髪の毛あってんけど、なんか妙にひかれるものがあってんね。」(P.50~51)、大槻ケンジ「僕はそんな鮫肌さんの気持ちがわかるというか、八○年代のパンク界では『人前で脱げる』『ウンゲロができる』っていうことでヒーローになれた時代があったんですよ。」鮫肌「そうですね。いま『プロジェクトX』で感動的なナレーションをしている田口トモロヲさんだって渋谷のライブハウス『ラ・ママ』のステージの上でウンコしてましたからね。」(p.64)、らも「おれが見た中で一番すごいケンカっていうのは、氷屋VSサラリーマン。氷屋は、鉤づめ持ってて、もう一方の手にはノコギリ持ってるわけよ。でも、その氷屋は気が弱いねん。サラリーマンの方は横山やすしみたいな感じの、昔ボクシングかなんかやってたみたいなヤツで。サラリーマンが飛びかかろうとすると、氷屋がオオッ!て声を出して相手を威嚇する。その戦いが約十二分続いた。」大槻「時間、計ってた!」らも「うん。」(p.69)大槻「俺、高校卒業した頃かな、「もう子供じゃない」ってモヒカンにしたんですね。ところが、斜めにズレちゃって。前だけ残して全部剃ったんですよね。そしたら、たこ八郎みたいになっちゃって(笑)。実家に住んでましたから、帽子をかぶって家族とごはんを食べてたんだけど、親父が黙って帽子をとったんですよ。食卓は見事にシーンと水をうったみたいに静まりかえりましたよね(笑)。そのあと近所で「大槻さんとこの息子はムショ帰りだ」とか「いや違う、あれは宗教だ」「「いや違う、あれはただのバカだ」って噂が飛び交ってたんだけど、三番目が正しかったんですね。しばらくいたたまれない日々が続きましたよ。」(p.74~5)
 これ以外にも笑える話、満載です。無条件でオススメです。

みなもと太郎『漫画の名セリフ お楽しみはこれもなのじゃ』

2007-07-07 15:14:45 | ノンジャンル
 吾妻ひでお氏が「資料として置いときたい」と評したみなもと太郎氏の「漫画の名セリフ お楽しみはこれもなのじゃ」を読みました。みなもと太郎氏自身有名な漫画家で、「ホモホモセブン」はNHK・BS2の「マンガ夜話」でも取り上げられました。この本は、和田誠氏が映画の名セリフとその解説を右ページに、その映画のイラストを左ページに、というい構成で書かれた「お楽しみはこれからだ」のマネ本です。
 ただ、この本は漫画の名セリフ集というよりも、漫画史を述べ、今となっては忘れられてしまった有能なマンガ家を発掘している貴重な本でもあって、貸し本屋時代にマンガを読みあさっていた人は、とても楽しめる本になっています。これについては、解説の米沢嘉博氏がこのように書いています。「(貸本屋で圧倒的人気作家だったさいとう・たかを、女の子たちの支持を集めていた小島剛夕、カッコ良さの極致だったありかわ栄一については誰も語らない。そんなことをきちんと書いてくれたのは、みなもとさんだけだったといってもよい。(中略)貸本だけではない。そこでは、誰もが語ったことのない若月てつや、藤木輝美、夢野凡天、下山長平などの作家が取り上げられ、水野英子はもとより、矢代まさこや西谷祥子などのブームいぜんの少女マンガについてまで言及されている。(中略)忘れられていた作家、作品、誰も覚えていないのだけれどもずっと気にかかっていた作家‥‥そんなものが、鋭いコメントとツボを押さえた引用、そして愛情あふれる想いを込めて、次々とお皿の上に並べられていく。」
 ということで、初めて見るマンガがたくさん出て来るのですが、私が中でも面白いと思ったのは、戦後すぐの作家南部正太郎氏で、「オチの四コマ目になると常に誰かしらが目をむき、身体は波打ち、青ざめて歯を喰いしばり、あらぬ姿でみもだえ、明らかに精神が破滅の極限まで追いやられてしまう」というシュールなマンガで、著者はムンクやルソーの絵に共通するものをそこに見るのです。そして著者が絶対にこの作家について語りたいと思っていたという楠勝平氏。死の影が全編に色濃く出ているのですが、人間に対する深い洞察がなされていて、漫画史を語る上で忘れてはならない人のようでした。また戦前の少女マンガというのもインパクトがあって、藤木輝美「おおきなアカちゃん」の中のセリフ「みどりの小山に赤いやね お城のようなご門まで のぼるカイダン百七ツ アレーおったまげた」というなんとも素朴なセリフに時代を感じました。
 もちろんこの本の題名が「漫画の名セリフ」なので、笑える名セリフも数々ありましたが、これを全部あげると、とんでもない長文になるので、代表して赤塚不二夫「天才バカボンのおやじ」から一つ。「こいつは今年から英語しか使わないと誓いをたてたんです」「イエーッシ イエーッシ イエーッシ」「英語はうまいのか?」「それが ぜんぜんできないんでーす」「できないのに しゃべるとは エライなあ」
 ということで、マンガ好きな方、必携です。