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この論には様々な反論と論争が提起されるだろうが、何よりもロシアに戦争責任の免罪符を与えているという問題が目立つ。

2023-02-05 | 世界の変化はすすむ

[レビュー]ウクライナ戦争は一体いつ始まったのか

登録:2023-02-04 02:11 修正:2023-02-04 09:58

 

米国・西側世界の責任を問うイ・ヘヨン 
多極体制へと移行する世界秩序を深掘り 
「ロシアに免罪符」と批判される可能性も  

『ウクライナ戦争と新世界秩序』イ・ヘヨン著、サゲジョル刊、1万8000ウォン
 
 
1月28日、ウクライナのキーウ近郊ブチャのある建物の壁にイタリア出身の都市芸術家「TVBOY」が描いた署名入りグラフィティ・アート。開戦後、ロシア軍が占領し後に撤退したブチャでは、ロシア軍が民間人を集団虐殺したことが明らかになり、ロシアに対する国際社会の批判世論が強まった/EPA・聯合ニュース
 
 
        ウクライナ戦争と新世界秩序』イ・ヘヨン著、サゲジョル刊//ハンギョレ新聞社

 戦争は1年前に始まった。2022年2月24日、ロシア軍がウクライナに進撃し、わずか1日で首都キーウを包囲することで始まったロシア-ウクライナ戦争(以下ウクライナ戦争)は、数回にわたって様相を変え、いつしか1年がたとうとしている。戦争の原因と経過、解決策をめぐって様々な立場が交錯し、論争と対立も生じている。国際政治経済が専門の韓神大学のイ・ヘヨン教授の新著『ウクライナ戦争と新世界秩序』は、その中でも戦争の根本的な原因を西側世界とロシアの確執に見出すという方向性を持つ地政学的分析を代弁する。一言で言えば、米国が主導してきた「グローバル一極体制」がロシアを敵とみなし、締め付けた結果、戦争が起きたという主張だ。これはロシアの膨張主義または帝国主義に注目したり言及したりするアプローチの対極にあり、解釈と解決策をめぐっても激しい論争が生じている。本書は「ナラティブの戦場」に参戦している一方の陣営の思考構造を点検することを目的として読むのが適切だ。

 著者は、この戦争を主導しているのは「自由主義の覇権の拡張」を目論む「ネオコン」だと主張する。ウクライナとロシアという2つの国の戦争というより、米国と西側世界がウクライナを前面に押し立ててロシアと繰り広げている「代理戦争」だというのだ。2000年代に本格化し、ウクライナにまで順番が回って来た「NATO(北大西洋条約機構)の東進」は、著者があげる戦争の直接的な原因の一つだ。「NATOの東進あるいは膨張はロシアにとって実存的脅威となるという命題は、遠くは1991年の冷戦解体後から、近くは2014年のマイダン革命後に至るまで、ロシアの外交政策はもちろん、今繰り広げられている戦争の開戦事由(casus belli)の最重要部分だ」。冷戦解体当時、米国と西側世界はソ連に「NATOはただの1インチたりとも東進しない」と約束したが、これは「空約束」となり、東欧諸国だけでなく旧ソ連諸国までもが続々とロシアを包括しない欧州の安保システムに加入していった。

 その中でも「内戦と領土分割、新冷戦」などの危険性を抱えるウクライナのNATO加盟は、「モスクワにとって受け入れられない」唯一の例外的な安保リスクである一方、まさに同じ理由で、ネオコンの主導する「21世紀米国の大戦略の最大目標」に合致すると著者は解釈する。唯一の覇権国家として一極体制を維持しようと目論む米国にとって、最も危険な地政学的シナリオは「同時性」、すなわち挑戦してくる中国とロシアの両国と二つの戦線において同時に戦争するというものだ。一言で言えば、ネオコンがウクライナをテコとしてロシアを締め付け、ウクライナで戦争を「誘引」してその力をそぎ、西ではなく東に追い込んで中国と競争させる戦略を練ったというのだ。

 
 
             NATOの東進=サゲジョル提供//ハンギョレ新聞社
 
 
             サゲジョル提供//ハンギョレ新聞社
 
 
            ロシア制裁参加国=サゲジョル提供//ハンギョレ新聞社

 著者は、この戦争には「内戦」の性格があるということも努めて浮き彫りにする。近代になってから固有のアイデンティティを形成したウクライナ内部には、大きく分けて3つのアイデンティティがあると考えられる。ウクライナ西部ガリツィアを中心にウクライナ語を使うウクライナ人、主に中南部と東部に住むロシア語を使うウクライナ人、最後に種族的にもロシア人に分類される人々などだ。著者は、ソ連解体と独立の後、「ガリツィア・パラダイム」(民族主義)と「東ウクライナ・パラダイム」(多宗教・多種族・多文化)はある程度の妥協の中で共存してきたが、2004年の「オレンジ革命」から本格的に対立がはじまり、2014年の「マイダン革命」を経て、「ドンバス内戦」で克服できない内部分断が固定化したとする。特にマイダン革命後は露骨な民族主義・人種主義を動力として「後進的なロシア」を「清掃」しようと目論む「ネオナチ」政治勢力がウクライナにおいて過剰に代表された脈絡に注目し、その背後にいる米国を疑う。「米国は、敵の敵は味方だという理由で、またはウクライナの民主化の支援を口実として人種主義、白人優越主義、反ユダヤ主義を標榜するナチス集団の後ろ盾となった」

 このように見ると、戦争は2022年2月ではなくドンバス内戦の起きた「2014年に始まっており、今はその時から続いている戦争の一経過点」だと著者は主張する。このような地政学的解釈は、事態のより大きな意味を問う企画へと流れ込む。ウクライナ戦争は米国が主導してきた一極体制の崩壊へとつながり、今後の世界秩序は「多極」体制へと移行するだろうという見通しだ。その時、中国とロシアは米国・西側が主導する一極体制に抵抗し、多極体制の扉を開く主な行為者となると想定される。「今後、世界は西側(韓国を含む)対BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)とグローバルサウス(主に南半球に集中する低開発国)へとブロック化される可能性が高い」とし、著者は「『国際関係の民主化』という未曾有の課題を提起したという点で、中ロの新たなプロジェクトは評価に値する」と述べる。このような地殻変動の中で韓国は「非アメリカ化」を通じてもう少し「戦略的自律性を発揮する中間地帯あるいは中立空間の創出」へと向かうべきだ、とも注文する。

 
 
ロシアによるウクライナに対する攻撃が続いていたた1月10日、ウクライナのバフムートでウクライナ軍が対空兵器を発射している/ロイター・聯合ニュース

 この論には様々な反論と論争が提起されるだろうが、何よりもロシアに戦争責任の免罪符を与えているという問題が目立つ。戦争の一方の側であるロシアを「悪魔化」せずに歴史的起源を検証し、米国と西側世界の責任を暴き、問うことは、本書の執筆意図どおり非常に重要なことだ。しかし、歴史的な起源は直ちに戦争のアリバイとはなりえない。この戦争は確実に2022年2月24日のロシアの侵攻で始まった。米国の企画を批判することを目的として、ロシアの企画を単なる「対抗」の観点からのものと解釈するのもバランスがとれていない。この戦争を「『大ユーラシア・フレームワーク』というビッグピクチャーの障害を取り除く過程」と考えるロシア自らの企画とは、果たしていかなるものか。これは、「多極」を掲げたからといってロシアと中国の諸行為にそれにふさわしい意味づけができるのかという、究極の疑問へとつながる。何よりも、もう一方の側であり侵略の被害者であるウクライナの声は見出せない。ウクライナの主権と自決権についての議論は重要ではないのか。

チェ・ウォンヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

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