韓国野党、梨泰院惨事から100日目に「行政安全部長官の弾劾発議」
大統領室「多くの専門家が悪い先例になると指摘」
共に民主党など野党3党は6日、イ・サンミン行政安全部長官の弾劾訴追案を発議した。昨年10月29日、梨泰院(イテウォン)惨事が発生してからちょうど100日目のことだ。
民主党と正義党、基本所得党の所属議員176人はこの日、「国家は国民の生命の安全を守る義務があるにもかかわらず、被訴追者(イ・サンミン行安部長官)は国民159人の生命が寸刻を争う状況でも、義務を著しく疎かにして放任した」として、イ長官の弾劾案を発議した。「弾劾案は発議後初めて開議する本会議に報告しなければならない」という国会法に基づき、キム・ジンピョ国会議長は同日午後2時に開かれた本会議でこれを報告した。
野党は弾劾案で、イ長官が災害・安全管理業務の責任者として関連計画を立て予防措置を講じるべきだったにもかかわらず、これを放棄しただけでなく、惨事後にも何の措置も取らず災害を拡大させ、災害安全法と国家公務員法に違反したとみた。また「国家は災害を予防し、その危険から国民を守るために努力しなければならない」という憲法第34条第6項と、国民の尊厳と幸福追求権を規定した憲法第10条にも違反したと主張した。
イ長官の弾劾案は「本会議報告後24時間以降72時間以内の表決」を義務付けた国会法により、8日の本会議で表決に付されるものとみられる。国務委員の弾劾案は「在籍議員過半数の賛成(150人)」で可決されるが、野党3党が党の方針として発議したため、本会議の議決は通るものとみられる。この場合、史上初の国務委員に対する弾劾案議決で、イ長官は議決書を受け取ると同時に権限が停止される。
弾劾の最終判断を下すのは憲法裁判所だ。だが、初めての事例なので負担が伴ううえ、国民の力所属であるキム・ドウプ国会法制司法委員長が検事の役割である訴追委員を務めることになり、裁判がまともに行われるかも未知数だ。民主党内部で党の方針として採択される直前まで「慎重論」が出たのも、憲法裁が弾劾を認容しない場合、逆風にさらされる恐れがあるという懸念が大きかったためだ。
同日、弾劾案を提出した民主党のパク・ジュミン議員は「イ長官の弾劾で発生する損害と混乱は少ない一方、イ長官が犯した憲法・法律違反行為は非常に大きく、国民の命が犠牲になった。弾劾の必要性が十分に認容されると思う」と述べた。
しかし与党の「国民の力」は「梨泰院惨事に対する検察捜査が依然として行われているうえ、警察の捜査でも職務上違法行為が全く確認されていない」(チャン・ドンヒョク院内報道担当)とし、弾劾案発議の要件を満たしていないと反発した。同党のチョン・ジンソク非常対策委員長は記者団に対し、「弾劾の要件に該当しないにもかかわらず、民主党が党の方針として弾劾を進める目的は『イ・ジェミョン民主党代表をかばう』ことだ」と述べた。
大統領室関係者は記者団に対し、「国会で手続きが行われており、今後多くの手続きが残っているため、大統領室が立場を表明するのは適切ではない」としながらも、「イ・サンミン長官がどのような憲法・法律に違反したのかについて、多くの専門家が指摘しており、憲政史に悪い先例を残すことになりかねないと指摘している」と述べ、不快感を示した。