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1  志位委員長の新春トーク ( 3日まであります。)

2009-01-01 | 市民のくらしのなかで

 

「ルールある経済社会」への

 

                  一歩を踏み出す年に

 

            志位委員長の新春トーク

 

聞き手 奥原 紀晴 赤旗編集局長   大内田わこ 編集局次長

 


 奥原紀晴編集局長・大内田わこ局次長 明けましておめでとうございます。

 志位和夫委員長 おめでとうございます。

雇用・生活――社会的反撃が始まった

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(写真)右から志位和夫委員長、奥原紀晴赤旗編集局長、大内田わこ編集局次長

 奥原 昨年は、情勢の激動と変化という点でも、党の活動という点でも、文字通り疾風怒濤(しっぷうどとう)の年でした。一年をふりかえって、一番印象深く残っていることはなんですか。

 志位 昨年末のNHKニュースのトップで「ついに労働者が立ち上がりました」と報じました。いすゞ自動車で、違法解雇撤回を求め、期間・派遣労働者のみなさんが労働組合をつくって立ち上がったというニュースです。このニュースが一番うれしかったですね。

 日本共産党は、二〇〇六年の第二十四回党大会で「社会的連帯で反撃を」ということを打ち出し、暮らしと平和のあらゆる問題で連帯してたたかい、世の中を変えていこうと呼びかけました。昨年は、世界金融危機と景気悪化による、暮らしの非常な危機のなかで、それに「負けていられない」という本格的な社会的反撃が始まった年といえると思います。

 奥原 危機は深刻だが、明るい展望もみえてきた。

 志位 そうです。雇用問題でも、後期高齢者医療制度でも、農業再生でも、あらゆる分野で反撃が始まった。平和と憲法を守る運動もさらに広がった。ここがやはり一番うれしいし、印象的です。あまりにひどい生活苦、人間「使い捨て」について、みんなが「これではいけない」と思っている。社会全体から待ち望まれていたニュースだからこそ、NHKもトップで伝えたのだと思います。

 大内田 いすゞは、千四百人の期間・派遣労働者を十二月二十六日に全員解雇すると一方的に通告していましたけれど、そのうち五百五十人の期間従業員についてはともかく中途解雇の撤回を決めました。

 志位 これは重要な前進の一歩だと思います。会社側は、期間従業員への中途解雇を撤回しましたが、なお早期退職を迫り、派遣労働者については解雇の方針を変えていない。引き続くたたかいが非常に大事ですが、大企業がいったん解雇通告をして、それを撤回したというのは、戦後の労働運動の歴史のなかでもあまり例のない、特筆すべき出来事だと思います。

 日産ディーゼル、大分キヤノン、マツダなど、各地で労働者が立ち上がっている。いすゞで労働者のみなさんが勇気をもって旗揚げした、この動きが全国各地に広がり、大きな流れになろうとしている。これはほんとうに未来ある動きです。

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(写真)志位和夫委員長

 

大企業に労働者の思いをぶつける

 

「死人が出ないとわからないのか」という悲

 

痛な訴え

 

 奥原 労働者のたたかいと結んで、委員長ご自身、昨年はキヤノンから始まって、いすゞ、トヨタと会談し、日本経団連とも会談しました。私は、歴史的事件だと思っていますが、党本部にもこんなメールが寄せられました。

 「『歴史が動いた』日になりました。志位氏の記者会見の最後に、路頭に迷うひとが、でないように、がんばっていく、としめくくっていました。首切りを絶対に、許さないとの決意表明に、感激です。すべての、良心ある、ひとびとの心をとらえる、大事な行動です。…歴史の一ページに刻んだ日にばんざい」

 こうした行動を起こそうと考えたきっかけは…。

 志位 昨年末、麻生首相との党首会談をやりましたが、政府が本気で乗り出していって、「派遣切り」「期間社員切り」をやめさせようという姿勢が伝わってこない。一方で、大量解雇の波がいよいよ荒れ狂っている。私たちのもとには、「冬に外で寝ろというのか。死人が出ないとわからないのか」という悲痛な訴えが殺到する。そのもとでやむにやまれぬ思いがありました。私たちは野党で、権力を持っているわけでもない。しかし寄せられた労働者の訴えを直接ぶつける責任がある。事実と道理をもって話せば、大企業でも動かざるをえない面もあるだろう。たたかっている仲間への多少なりともの激励になればという思いもありました。

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(写真)奥原紀晴赤旗編集局長

 大内田 実際に会談をやってみた感想はどうですか。

 志位 やはり日本共産党は自由だな(笑い)ということです。大企業と面と向かって話しても、言いたいことが何の気兼ねもなしに言える。企業献金を一円ももらわない、腐れ縁がない党ですから。日本共産党員であることの誇りを、私自身も感じました。

 

相手も容易には否定できない事実と道理を

 

しめして

 

 奥原 なるほど。日本経団連との会談はいかがでしたか。

 志位 日本経団連というのは財界の総本山です。日本共産党とは、もとより立場が対立しているわけです。しかし、対立する相手であっても容易には否定できない事実と道理があるはずです。それを「要求書」にまとめあげて、大量解雇の不当性をしっかり説き、撤回を求めるという姿勢が大事だと考えました。

 大内田 まず人道上許されるのかとズバリのべていますね。

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(写真)大内田わこ編集局次長

 志位 「真冬の冷たい巷(ちまた)に放り出していいのか」と。これには経団連側も結構だとはいえません。「苦渋の選択」だとしかいえない。そして、「雇用の安定のためには、景気回復が求められる」と繰り返すわけです。しかしこんな矛盾した議論はありません。個々の企業でみれば、人員削減をすれば、瞬間的には財務状況を良くするかもしれない。しかし、大企業がみんな横並びで「首切り」競争を始めたら、日本経済の底が抜けてしまって、「景気回復」はいよいよかなわなくなるじゃないですか。そこを話すと、相手は返す立場がないわけですね。

 奥原 大企業としても見通しをもってやっているわけではない。

 志位 そうです。私は、「いま大企業が周章狼狽(しゅうしょうろうばい)してどうするのか」と言ったのです。世界金融危機が起こった、これはたいへんだ、ともかく人員削減をすれば身軽になるだろうと、われもわれもと「首切り」競争をやったら、いったい日本経済はどうなるのか。それは結局は、企業にとっても自殺行為になるではないか。そこは、日本経団連が会員企業に対して、きちんといわなければだめではないですかという話をしました。

 

株主に配当増、労働者は「首切り」――資本主義の堕落

 

 大内田 続いてトヨタの幹部ともお会いになりました。

 志位 トヨタは日本を代表するリーディング・カンパニー(主導的企業)であるわけですね。そのトヨタが真っ先に「派遣切り」の引き金を引いた責任は重い。トヨタと会ったのはそういう理由でした。

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(写真)メディアが注目する中、開かれたJMIUいすゞ自動車支部結成大会=昨年12月3日、宇都宮市

 ちょうど会談の前日に、共同通信が、大量「首切り」を進めている自動車と電機・精密の大手十六社で、内部留保が最高になったという記事を配信し、各地の地方新聞が一面トップで報じました。この記事によると、株主への配当は、この不況下に、増配が五社、維持が五社、未定が六社、減配のところは一つもない。大株主への配当を増やしながら、労働者をどんどん切る、これは資本主義のあり方としても堕落ではないかと先方の認識をただしました。

 これについては、トヨタの幹部は「アメリカ的株主優先は、あまりにもどうかなと思う」、「日本型経営とアメリカ型経営についていま議論されるべきだ」とのべました。

 奥原 ここでも経済界が進んでいる道に不安がある。

 志位 「これでいいのか」という思いはある。もちろん、私たちがトヨタに話しただけで事が進むということにはなりません。やはり、労働者とともにたたかってこそ、事態を打開していくことができます。

 

野党であっても民主的規制のための努力を

 

 奥原 財界・大企業とも、問題があれば会談するという関係がつくられたことは、新しい一歩ですね。

 志位 この問題を考えてみますと、私たちは、二十一世紀の早い時期に民主連合政権をつくろうという大目標をかかげています。この民主的政権の経済政策は「ルールなき資本主義」を正して「ルールある経済社会」をつくろうということです。その手段として「大企業にたいする民主的規制」をおこなうと、綱領に明記しているわけですが、この民主的規制というのは、私たちが政権を担ったら初めて始めるというものではないんですよ。

 野党であっても、国民と連帯したたたかい、国会での論戦、立法措置、直接の働きかけ、さまざまな力を総合して、大企業への民主的規制を、一定の範囲でやっていくことはできるし、その努力をつくさなければならない。大企業や経団連との一連の会談も、私たちなりのそういう努力の一つとして始めたものなのです。

 私たちが政権を担った場合は、政府の権限を最大限に活用して、大企業への民主的規制を進めるわけですが、その場合でも、相手を事実と道理をもって説得していく努力が必要でしょう。私たちが昨年始めた一連の行動は、何よりも労働者の苦難を打開するうえで緊急に迫られたものでしたが、政権を担う政党へと力量を高めていく一つのプロセスとしても、意義があると思っています。

 

「赤字だと?黒字の金はどこ行った」

 

 奥原 昨年の秋以降、大企業の大量解雇が始まって、一般メディアの報道で「これはアメリカ発の金融危機で、急速な減産が始まっているからしょうがないんだ」という論調や報道も目立ちました。それに対して「しんぶん赤旗」は、そうではなく、企業には雇用を守る体力はあるということを書き続けました。これは、問題を解決していくうえで、一つの重要なカギになると思いますね。

 志位 私は、トヨタとの会談で、新聞に載った川柳を紹介しました。「赤字だと?黒字の金はどこ行った」(笑い)

 大内田 庶民はよく見抜いていますね。(笑い)

 志位 ええ。それでも連日これだけ「派遣切り」「期間工切り」のニュースが続くと、「しょうがないのではないか」という気分にさせられかねない。そのときに、「しんぶん赤旗」が果敢に、資本金十億円以上の大企業では、二百二十九兆円ため込んでいると書き、「雇用を守る体力はある」と連打しました。そのなかでさきほど紹介した共同通信の配信も出てきた。

 たとえばトヨタ自動車とそのグループ企業の内部留保は十七・四兆円にのぼり、そのわずか0・2%を取り崩せば「首切り」計画は撤回できます。だいたいだれのおかげで、このため込み金は積み上がったか。派遣・期間労働者の血と汗と涙の上にため込んだお金でしょう。恩人を切っていいのかという話ですよね。

 

働くみなさんに背中を押されてとりくんだ質問

 

 奥原 私が去年、雇用問題で「流れを変えたな」と思ったのは、二月に委員長が国会の予算委員会で派遣労働の問題を正面から追及した質問でした。あのときはどういう思いで質問されたんですか。

 志位 あの質問は、多くの方々のたたかいに支えられて、はじめてできたものでした。質問準備の過程で、全労連、首都圏青年ユニオン、派遣ユニオンなどのみなさんから、実態を詳しくうかがいました。派遣労働者の方々からも直接お話を聞きました。そうした方々がつくってくれた質問というのが実感なのです。

 実態をうかがって、あまりの非人間性に慄然(りつぜん)とする思いでした。究極の不安定雇用、低賃金、そして労働災害が多い。これは何としても変えなくてはという責任を感じました。ですから質問では、政府の姿勢の問題点はきちんとただしながら、一歩でも二歩でも前に動かさないといけない。そうしないと、責任を果たせないという思いが強かったですね。働くみなさんに背中を押されてやった質問でした。

 奥原 質問の最後に、人をモノのように使い捨てる状況を放置したら、日本社会に未来がないと言われた。あれは、大義の声だと私は聞きました。

 志位 ほんとうに未来はないと思います。私は、派遣問題の質問を、昨年の二月と十月におこないましたが、党の議員団としては、この十年来の積み重ねがずうっとあるんですよ。たとえば一九九九年に労働者派遣法の原則自由化が強行されたときに、日本共産党は堂々たる反対の論陣をはっています。参議院労働・社会政策委員会で市田さん(現書記局長)が反対討論をしていますが、いま議事録を読みなおしても、先をみた的確な批判点が提起されています。このときにきっぱり反対したのは共産党だけだった。それがずうっと後に生きてくるわけです。

 労働者の立場に立って頑張りぬく政党、大企業に堂々とモノが言える政党、そして綱領で「ルールある経済社会」を掲げている政党ならではの一貫したものがあるということを痛感します。

 大内田 新年は、雇用と暮らしを守るたたかいがいっそう広がっていくと思いますけれど…。

 志位 そうですね。昨年は社会的反撃が本格的に始まった年だと言いましたが、今年は、雇用、社会保障、中小企業、農業、重税反対、あらゆる分野でさらに発展させ、ひとつの大きな流れに合流させて、社会的連帯で政治を変える――「ルールある経済社会」にむかう一歩を築く、そういう年にしたいですね。

 

日本資本主義のあり方が根本から問われている

 

労働と金融の規制緩和は表裏一体で労働者を苦しめている

 

 奥原 いったい日本の雇用がなぜこんなひどいことになったのか。けっして自然災害などではないことを、きちんと明らかにすることがたいへんに大事ですね。

 志位 私は、「政治災害」という言葉を使っているんです。一九九〇年代後半から労働法制の規制緩和をどんどん進め、派遣労働を九九年に原則自由化し、二〇〇四年には製造業にも拡大した。「使い捨て自由」の労働がどんどん広がりました。景気のいいときは大企業は派遣に置き換えてコストダウンでもうけ、景気が悪くなったら「調整弁」として真っ先に切り捨てる。景気悪化が現実に起こるもとで、派遣労働とは、こういうときのためにつくったものでもあるということを、つくづく感じます。政治の責任は、たいへんに重いものがあると思います。

 大内田 さっき内部留保でたくさんため込んできたという話が出ましたけれど、株主への配当もものすごい。それでいて労働者は平気で切る。こんな非人間的なことを、どうしてやるのかと思うのですが。

 志位 労働者の首を切りながら、大株主への配当は維持・増配というのは、どう考えても異常で許しがたいことです。こうした企業行動に対しては、個々の企業もそれぞれがきびしく社会的責任が問われることを強調したい。同時に、そういう行動に企業を駆り立てていくシステムにも目を向ける必要があると思うんです。

 大内田 どういうことでしょう。

 志位 それは証券市場の投機化ということです。橋本内閣いらい進められてきた「金融ビッグバン」といわれる金融の規制緩和によって、いま東京証券取引所(東証)の株の売買の六割から七割は外国人投資家によるものとなっています。そのほぼ半分はヘッジファンド(投機的基金)だと言われている。そうした投機マネーが跋扈(ばっこ)する市場となってしまっているのです。

 投機マネーは、短期的な株の売買で利益をどんどん上げていく稼ぎ方をする。短期でみて利益が上がらない企業の株はどんどん売られるのです。企業も四半期(三カ月)ごとに業績開示が求められるようになり、短期でみて利益を上げるかどうかで企業価値が決められるようになった。そういう投機的市場が、労働者の首を切ってでも株主への配当を増やすことを個々の企業に強制する、圧力になって働いているのです。

 新自由主義のもとでの労働の規制緩和によって、派遣労働など「使い捨て」労働が広がった。同時に、金融の規制緩和によって投機化した証券市場をつくってしまった。それが「派遣切り」を強制し、国民の暮らしを破壊している。両面で新自由主義はいよいよゆきづまった。

 奥原 労働と金融の規制緩和は、裏表の関係にあるわけですね。

 志位 そうです。表裏一体の関係にあって、労働者を苦しめているのです。この仕掛けを根本から転換させなければなりません。

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