朝、時雨のなかに雪が交じっていた。山形で見た初雪かも知れない。家の北側の遠くに見える葉山は冠雪して、白く輝いている。きのう書いた通りに平地にも雪が降ってきた。今年の冬は、初めの暖冬の予報が覆されて、寒い冬とのことだ。さすがに去年ほど寒い冬ではなさそうだが、どうなることか、年の瀬から、大寒になってみないと分からない。
虎落笛という言葉がある。俳句では冬の季語にもなっているが、虎落は竹を荒く斜め十字に組んだ垣根のことであるが、この垣根に北風が当たるとヒューヒューと風を切って音を出す。これを虎落笛といった。我が家は10階建ての集合住宅だが、風が外壁に当たると、強烈な虎落笛になる。布団のなかでこの音を聞くと、自然の営みに、ふと恐怖のようなものを感じる。
神々の空ゆく哄ひ虎落笛 渡辺千枝子
冬籠りは北国の冬にこそ似合う暮らしの様式である。雪を避けて、ひっそりと籠もり居の冬を楽しんだのは、与謝蕪村である。
うづみ火や我かくれ家も雪の中 蕪村
練炭の火鉢の灰に隠れるようにして、中へ中へと燃えていくのは練炭の特色である。蕪村は練炭のようなありようを自分の生になぞらえたのかもしれない。それにしても、練炭の赤い火は、いかに力強いものであるか。空気にも触れることなく、じっと燃え尽きるまで、部屋中にほのかな暖を広げていく。