9月の名月にススキは欠かせない。花言葉は隠退、閑寂。秋の川原にみるもの淋しい感じは、ススキが演出しているといってもいいだろう。古来言われてきた尾花は、ススキに穂がでたものを言う。花ススキも同じことである。秋の七草のひとつである。
人皆は萩を秋と云ふよし我は尾花が末(うれ)を秋とは云はむ 山上 憶良
もうすぐ中秋の名月が見られる。一昨日きれいな三日月であったが、あっという間に満月となる。満月をさして望月ともいう。欠けるところのない月は、人の幸福を現していることでもあろう。この月にススキや畑で採れた野菜をを供えて、感謝をささげる。古来からの風習である。満月翌日(16日)の月は「いざよひの月」という。満月に比べて地平線から顔を出すのが遅いので、躊躇(いざよ)ひながら出てくるからこう呼ばれる。次の17日は「立待ち月」になり、出てくるまで立ち尽くして待つ月である。月の出はどんどん遅くなる。次の18には、立って待っていられないほど遅い。そのために「居待ち月」という。
月の呼び名が、これほど多彩であるのは、月が古人の生活密着していたことの証しでもあるだろう。電灯が普及し、夜も暗さから解放された現代人は、豊かな生活を享受していると言えるが、月の美しさが心に響くという微妙な自然の営みとは縁遠くなった。
山は暮れ野は黄昏の芒かな 蕪村