柿の青い実をみると、昔聞いた「サルカニ合戦」を思い出す。カニと猿が、持っていたおにぎりと柿の種を交換する話だ。まんまとカニを騙した猿が、おにぎりを平らげてしまい、木に自由に登ることができるので、柿の実も自分のものにしてしまう。木に登れないカニが猿に柿の実をくれるように頼むと、これでも食らえと青くて硬い柿の実をカニにぶつける。そのショックでカニのお腹の子が生まれたが、カニは死んでしまう。
カニの子供たちが、栗や蜂、臼と語らって親の敵撃ちをする。この話で出てくる決まり文句がある。カニが猿から貰った柿の種を育てるときのことである。「早く芽を出せ柿のタネ。出さなきゃハサミでチョン切るぞ」と呪文のように唱える。この呪文を聞いて、柿はたちまち芽を出し、葉を出し幹が成長する。植えて一週間もすると柿に実が生った。
こんな他愛もない話を何故か記憶している。柿の実を見ても、猿がこの実をカニに投げつけるのは無理であるように思うが、話の筋はとても分りやすくなっている。子供ごころに、猿はとても悪で、憎らしい動物のような気がした。尾花沢のスイカ畑に猿が入って、食べごろのスイカを荒らしまわっている。サルカニ合戦より。猿のイメージさらに悪化し、憎まれる存在になっている。
最近、噛み付き猿が出没しているという。カニを騙すどころか、人家で餌をあさり、あまつさえ人を傷つけている。昔話はカニと猿がその後、仲直りをする筋たてにしているようだが、人との共存にはなかなか解決しがたい難しい問題がある。