牛蒡の葉が大きくなった。丈は1mを超えているようだ。収穫は10月の中旬ころと考えているが、この作業は大変である。「ごんぼ掘り」という青森の方言があるが、酔ってくだをまいたり、ぐずぐずと不平を言って譲らない、つまり扱いづらいことを言う。それほどに牛蒡掘りは大変である。牛蒡の根の周りの土を慎重に掘り進め、根が伸びている深さを確認してから一気に引き抜く。それでも途中で折れて、先が地中に残ることもしばしばだ。
老の息うちしづめつつ牛蒡引く 後藤 夜半
最近、牛蒡の栄養価が見直されている。食物繊維のあることは、早くから知られているが、ポリフェノールの一種であるクロロゲン酸のほか、ビタミンやマグネシューム、葉酸も豊富に含まれている。この栄養素を損なわないようにするため、皮を剥かない、水にさらさない、新鮮なうちにすぐに調理することが大切である。自家製の牛蒡茶を作る人も増えている。
牛蒡はヨーロッパで若い葉をサラダで食べるが、この根を食べるのは日本と韓国ぐらいしかない。韓国や中国の一部でも食べられるが、これは戦時日本が支配していた地域であるから日本人が広めたものであろう。戦時中、捕虜になった欧米人に牛蒡を食べさせたところ、日本は木の根を捕虜に食べさせると、抗議されたという話も残っている。
辰巳浜子の『料理歳時記』に牛蒡サラダの酒のつまみが紹介されている。「細いごぼうを選んで紙のごとく薄く細く笹がきにしましょう。水にさらして(二回だけ、さらし過ぎるとごぼうの香がぬけます)よく水を切って、つんもり小鉢に盛り、花かつお(手かき、袋入りの花かつおでは駄目)を盛り合せ、食べるときちょっと醤油をかけます。日本酒、ビール、洋酒どちらにも万能です。
当時は牛蒡を水にさらすのは、普通に行われていたが、辰巳浜子は香りを損なわないよう、さらし過ぎないように注意をしている。料理のプロはまだ栄養素の分析がない時代から、そのおいしさでどうすれば栄養素が損なわれるかを見分けていた。