常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

山姥退治

2014年12月17日 | 民話


八戸の村に、権之助とお覚という若夫婦が住んでいた。権之助が年越しの品を買いに街へ出かけるとき、山姥が来ては困るので、お覚を長持に入れて鍵をかけて高いところへ吊るしておいた。お覚は妊娠していて7ヶ月の子を孕んでいた。用心したにも拘わらず、山姥が来てお覚を探し出して食べてしまった。ただ、固い足の踵だけは食べ残してあった。街から帰った権之助は、変わり果てたお覚を見て嘆き悲しんだが、残された踵を大切に袋に入れて吊るし、毎日念仏を唱えた。

ある日のこと、踵が割れて男の子が生まれた。権之助は喜んで、この子に踵(あくと)太郎と名づけて、大事に育てた。踵太郎は逞しく成長し、20歳になると、山姥退治に出かけた。山姥に焼いた餅だといって石を食べさせ、煮立った油をかぶせた。山姥がまだ死に切れずにいるので、首に太い縄を巻き、氷の張っている川に突き落として退治した。

山姥はこのように人間を食ってしまう鬼で、恐ろしい存在だが、山の入り口に山姥の像を立て、悪霊を退散させるものとして祀られていることも少なくない。退治した山姥の祟りを怖れて、社を建て、産土神として祭っているところもある。昔話のなかの、恐ろしいものと適切な距離をとるところに、日本人の精神の深層が存在することを指摘するのは、心理学者の河合隼雄である。


日記・雑談 ブログランキングへ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする