常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

ライ麦畑でつかまえて

2014年12月02日 | 読書


みぞれのような雪になる。家にいて本棚の本を読む。気になっていたサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』。この小説は以前に話題になり、読むつもりで買っていたのだが、本棚の隅に埋もれたままになっていた。この小説が、アメリカで発表されたのは1951年で、野崎孝訳で白水社uブックスに収められている。別に村上春樹訳のものあって、アメリカ文学の古典ともいえる小説だが、今なを長く読み継がれている。

この小説は若いペンシルベニアの高校生が、成績不良のために落第となり放校されてしまう。その高校の寮から家のあるニューヨークに帰るまでの3日間の出来事を、若い高校生の語り口で書いた一人称小説である。ホールデン・コールフィールドが主人公の名前である。訳者が書いているところによると、文体、つまり主人公が自分の経験を語って聞かせるその語り口は、1950年代のアメリカテェーン・エージャーの口調を再現したものとされている。この日本語の訳文が、いかにも1960年から70年代にかけて、若者の話言葉に影響を与えたものであるように思える。

喧嘩、飲酒、売春婦、暴力。もっともホールデンは、非力でもっぱら打ちのめされる方だ。放校になった16歳は、ニューヨークで、こんな都会の洗礼をめいっぱいに受ける。やっとのことで辿り着いた家にいる幼い妹から、辛らつな質問を受ける。

「なんになりたいの?ばちあたりな言葉はよしてよ」
「とにかくね、僕にはね、広いライ麦の畑やなんかがあってさ、そこで小さな子供たちが、みんなでなんかのゲームをしているところが見えるんだよ。何千っていう子供たちがいるんだ。そしてあたりには誰もいないーー誰もって大人はだよーー僕のほかにはね。で、僕はあぶない崖のふちに立っているんだ。僕の仕事はね、誰でも崖から転がり落ちそうになったら、その子をつかまえてやることなんだ。」

半分大人になりかけたホールデンには、学校でも、街でも見る人間はみんなインチキに見える。そのために、いつもいらいらしている。精神分析を受けなければならないような神経症になっているのだ。人々に口ずさまれている、「ライ麦畑でつかまえて」のリフレインが、そのクライマックスに登場する。

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