常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

雪降り

2014年12月03日 | 読書


11月の下旬は比較的温暖な日が続いた。ここへきて寒気が入り、日本海側の北日本では風雪が強まり寒さが厳しくなった。ここ山形でも、民家の屋根にうっすらと雪が見える。陽射しもないので薄暗いような空模様である。

『枕草子』を開いて、雪の記事を探してみた。清少納言は、短い段落で気づいた事柄を書いているので、見たい記事を探すのに便利だ。第247段、

「雪高う降りて、いまもなほ降るに、五位も四位も、色うるはしうわかやかなるが、うへのきぬの色いときよやらにて、革の帯のかたつきたるを宿直姿にひきはこえて、むらさきの指貫も、雪に冴え映えて濃さまさりたるを着て、袙のくれなゐならずは、おどろおどろしき山吹をいだして、からかさをさしたるに、風のいとう吹きて横さまに雪を吹きかくれば、すこしかたぶけてあゆみ来るに、深き沓、半靴などのはばきまで、雪のいと白うかかりたるこそおかしけれ。」

平安朝の女房たちの関心は、参内してくる王朝人の着物の色合いや、傘を傾ける様子などに向けられている。道には雪が積り、靴に雪がかかっているさまを風情あるものとして眺めていた。衵(あこめ)というのは、単と下襲の中間に着るもので襟首のその色目が出る。普通は紅であるが、老年になると白を用いた。なかに山吹色で目立たせたものもあったのであろう。袴は紫で裾をしばっていた。長い沓は皮製で、雪に対応したものと思われる。革の帯は袍を腰のところで締める革の帯で、石帯と呼ばれた。現代のベルトのようなものである。

背景に雪があって、それに映える衣装に清少納言の目が注がれている。それは、その身分によってこまかな決まりがあり、一目であの人は五位、あの人は四位と見分けることができるのだ。正装のほかに、宿直のときに着用する衣冠もあり、貴族の多様で美しい衣装が、雪のなかでみられたのであろう。


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