
花の命は短くて、という句もあるように花の季節は駆け足で巡っていく。5月中旬、牡丹が咲いて数日のうちに散っていったが、一足遅れてシャクヤクの花が満開になった。この花のある畑にサクランボ畑があるが、今朝、収穫が始まっていた。シャクヤクはその名の示すように薬草として中国から渡来したものであるらしい。昨今、足の筋肉の痙攣に悩む人も多いが、これに用いられる薬は、シャクヤクカンゾウ湯である。この薬にもシャクヤクの成分が使われているのかも知れない。
庭に咲くシャクヤクも美しいが、切り花にして机上の壺に投げ入れるのも、この花の美しさを引き立てるようだ。永井荷風の句に
芍薬やつくゑのうへの紅楼夢 永井 荷風
があるが、シャクヤクの花に美女の色香を連想したものであろうか。妖艶なボタンに比べて、シャクヤクには清楚な感じがするが、文人の想像力は、そんな現実も超えているような気がする。