常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

静夜思

2016年06月28日 | 漢詩


ある雑誌が「漢詩国民投票」というものを実施した。その結果、好きな漢詩では李白の「静夜思」が5位に入った。因みに第1位は杜甫の「春望」で、2位に杜牧の「江南の春」、3位王維の「元二の安西に使いをするを送る」、そして4位孟浩然の「春暁」となっている。好きな詩人を見ると1位杜甫、2位李白、3位白居易、以下杜牧、王維、陶淵明と続く。日本の詩人では7位に頼山陽が入っている。この投票は、2002年に漢詩の専門雑誌が行ったもので、投票数も363名に過ぎないので、実態を示しているとは言えないが、その傾向は得心がいく。

今週の実施される山形岳風会山形地区本部の吟詠大会で、わが教場の合吟がこの「静夜思」を吟じることになり、教場で出吟する人たちで練習をしている。

 静夜思 李白

牀前 月光を見る

疑うらくは是れ地上の霜かと

頭を挙げて山月を望み

頭を垂れて故郷を思う

詩の意味は、ここで書くまでもなく明瞭だが、月光を地上の霜と詠んでいることに注目したい。実際に中秋の名月に北京の行った人の話では、日本の光景とは違い庭の土が霜の真っ白に見えるということである。乾いた黄土に月光があたれば、白く見えることに注意を置く。また、頭を垂れるのは、望郷の念に駆られた人の姿勢である。井伏鱒二にこの詩の名訳がある。

ネマノウチカラフト気ガツケバ

霜カトオモフイイ月アカリ

ノキバノ月ヲミルニツケ

ザイショノコトガ気ニカカル (井伏鱒二 訳詩)
コメント
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