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畑に出かけて、秋野菜のために、草取りや畝づくりが始まった。悩まされるのは、プーンと耳元で鳴きながら射す蚊だ。汗を拭きながら、持参した冷たい水を飲んでいると、あまり可愛くないコウロギに交じって、ひときわ澄んだ虫の声が聞こえた。同じコウロギでもツヅレサセコウロギと呼ばれているものかも知れない。
秋風にほころびぬらし藤袴つづさせてふきりぎりす鳴く 在原 棟梁
コウロギが鳴くと、やがて寒い冬が来る。ほころびた衣類をかがり直さねばと、コウロギの音を聞きながら、昔の人は思った。ツヅレサセとは、何とも人の暮らしを暗示させる懐かしい呼び名ではある。ものの本によると、「リィリィ」という鳴き声を「肩刺せ、裾刺せ、綴れ刺せ」と聞きなして、着物の綻びを刺さねばと考えたのだと言う。秋を感じさせる虫の音ではあるが、この秋の気温の高さはどうなっているのか、近年にないものだ。