人は孤独を感じたとき、空を見上げ、月や星、また雲を見ながら空想をたくましくする。しかし、そこで思い知らされるのは、あまりにも小さな己の存在である。まして、いつ止むかも知れない雨を降らす雲に恐怖を感じるのは、ここのところの気象の異常性によって途方もない被害を出ている昨今、その思いはいっそう大きく膨らんでいる。しかし、空に浮かぶ雲の移ろいに比べて、自分の心中の意思の強固さを示す詩もある。
臥雲室 高 啓
夕べに臥せば白雲合し
朝に起くれば白雲開く
惟だ心の長に在る有り
雲に随いて去来せず
元末明初の詩人高啓の詩である。当時の詩人の4傑に数えられていた有名人であった。宮仕えを嫌い、権力者になびかない強い意思の持ち主であった。記憶力が抜群で、古詩の研究に打ち込んだ。時代は新しい時代に向かって乱れ、天下を握ったのは、貧農出身の朱元璋であった。洗練された都会的教養人を嫌い、詩の4傑と謳われ人々ことごとく囚われ、刑死の憂き目に会った。