打ち捨てられた空き地の雑草も、この季節には心にせまる趣きをかもし出す。まして、それが歴史を持った宮廷の廃墟ともなれば、そこを訪れる詩人に、懐旧の念をよびさます。唐の詩人高適は、漢の宮廷の跡を訪れて、その栄華を偲んだ。
悠悠たり一千年
陳迹惟だ高台のみ
寂寞として秋草に向かえば
悲風千里より吹く
またドイツの叙情詩人クロアサンに「秋」と題する詩がある。
秋風わたる青木立
葉なみふるひて地にしきぬ。
きみがこころのわかき夢
秋の葉となり落ちにけむ。
洋の東西を問わず、秋には寂寞の情がそこはかとなく人の心に宿る。華やかな紅葉もいくばくもなく、冷たい秋風が吹き落としていく。