常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

秋冷

2021年10月18日 | 日記

ここへきて一気に冷え込んできた。蔵王の雁戸山に初冠雪。月山に八合目付近は積雪で、冬タイヤを履かなければもう走れない。散歩道にあるコキアが色づき、ムラサキシキブの色もぐんと深みをましてきた。庭に植えているのが目立ってくるのだが、この実がこれほど多くの人から愛されていることが、この季節にあらためて知らされる。

うち綴り紫式部こぼれける 後藤夜半

台風の季節は終わりを告げ、変わって移動性高気圧の季節である。大陸から冷たい高気圧が3日ほどの周期で、日本の上空を通りすぎていく。秋の晴天をもたらす。本州南岸に低気圧があれば、高気圧にかわって雨の主役となる。一雨ごとに気温は下がり、雪の季節が忍びよる。
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菊花

2021年10月17日 | 漢詩

夕ぐれの散歩で菊の花を撮った。あまり使わないフラッシュを焚いて、ヒナギクの白い花を愛でることができた。漢詩の世界では、菊は秋の詠題として好まれる。白居易に『菊花』がある。その後半に

寒に耐うるは東籬の菊のみありて
金粟の花は開いて暁更に清し

と霜が下りて、花や植物の枯れていく季節に、咲く菊の花への賛辞を惜しまない。東籬の菊を詠んだのは、陶淵明が隠居した地でのことはよく知られている。白居易が44歳で左遷されて江洲に流された処こそ、淵明が住んだ地であった。菊は雑草の繁る荒地にあっても、勢いのない雑草を圧するように、過ぎていく秋に咲き誇る。

卒業式に歌われるのは「蛍の光り」だが、蛍雪の功の中国の故事が歌のもとになっている。東晋の車胤は油が買えずランプがないので、蛍のわずかな灯りで、また孫康は窓の雪あかりで書物を読んだという伝説がある。北宋の魏野という詩人は、この蛍雪の向こうを張って「白菊」をたよりに書を読んだ隠者である。

濃霧繁霜着けども無きに似
幾多の庭除を照らす
何ぞ須いん更に蛍と雪を待つを
便ち好し叢辺夜書を読まん

しかし、暮れていく白菊を見た限りでは、ここで書を開くのは難しいような気がした。詩人が言わんとするのは、白菊の夕べの輝きは蛍や、窓べの雪に劣るものではないことを強調したのであろう。
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名残りの紅葉、栗駒山

2021年10月15日 | 登山
紅葉の栗駒山を見たい、とこの山の山行を計画して3年越しになる。ことごとく、山行と悪天候が重なって中止となっている。今年もまた計画の当日は雨天で、天気の回復を待っての実行となった。しかし、栗駒山の紅葉がこれほど有名になったのは近年のこ
とだ。特にいわかがみ平の登山口は、駐車する車が多すぎて、ここへの乗り入れを止めてしまう日さえあるという。テレビに映し出される全山が紅葉に包まれる光景を目にして、全国から登山者や観光客が集まっているらしい。この山には3度ほど登っているが、記憶にあるのは秋田の湯沢から須川温泉から登ったものだ。もう20年も前になる。

栗駒山は標高1626m、それほど高い山とは言えない。コニーデ型の火山で、その裾野に湧く硫黄温泉や山のところどころに噴出する湯煙が見られてそのことに得心する。東北に移り住んで栗駒山の山麓にある演習林の管理者として、  森林の研究をしている西口親雄先生がいる。その西口先生が紅葉の調査にを始めたのは樹種の確認からであった。最も早く紅葉を始めるのがベニヤマザクラ。9月中旬には始まる。紅葉現象の一番乗りはヤマウルシ。これは赤いだけで単調、次が浅い赤に黄緑を交えたウリハダカエデ。これに続いてイタヤカエデなどの黄色が目立つようになる。赤に黄色を交えた時期を第一紅葉期、やがて黄色が落ちて真紅の深い赤に主役を交代するのが第二紅葉期とされている。
この日、紅葉は第二紅葉期を終え、草紅葉も枯色を見せ始めたいた。山道は前日までの雨が残り、汚泥を混ぜたような道でやや期待に沿えない面もあった。それでも、やっとの思いで栗駒山の山行を実現できた一行7名には、願いがかなった満足が感じられた。この日のコースは須川コースが火山ガスで閉鎖されているため、蒸し風呂付近から三途の川を渡り、産沼へと迂回するコースである。

産沼は丁度中間点、帰路ここが昼食をとる地点となった。8時の出発時点ではやや曇り、産沼を過ぎてから、ごろごろした石の山道になる。高い丈のある石の前には、足をかける小さな石が置かれ、登山者への温かい配慮が見える。比較的なだらかな坂だが、四苦八苦の坂など面白い名がついている。稜線に出て坂が少し急になる。下山してきた人が声をかけてきた。「ここが最後の胸突き八丁のさかですよ。頂上までもう少しです。上は風が強く、展望もないので、早々に下山してきたのだという。昨日からの天気の好転もあってか、入山の人は多い。ここは若者ばかりではなく、老夫婦の二人連れも、お互いを気遣いながら登っている姿も見られた。多分、お昼にかけて100人前後の人が登頂したように思う。頂上で記念撮影の頃には、小ぬか雨のような雨が降ってきた。時刻は10時半。コースタイム通り、二時間半ほどの登りであった。
帰路、名残りの原分岐から賽の河原に向かう。石が積まれているわけではないが、草紅葉の向うにそれらしい石がポツンポツンと姿を見せている。あたりには温泉の硫黄の匂いがたちこめている。その向うに奇岩が、このあたあり景色を特徴づけている。山中に比して紅葉の色が鮮やかに見える。帰路は秋田の湯沢への道を通ったが、紅葉前線が麓の山へと下っているのが手にとるように分かる。今夜からは雨、しばらくぐずついた天気が続く。




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秋はふみ

2021年10月14日 | 読書
読書の秋である。夜の長さに、本を2、3冊寝室に持ち込むが、2、3ページ読んで眠気がさしてくる。漱石の句に

秋はふみ吾に天下の志 漱石

というのがある。明治の文豪には、国家や国民に役に立つ、という強いモラルがあった。漱石の心情は「自由な書を読み、自由なことを言い、自由な事を書く」というのであったが、その根底には「世の中に必要なもの」という大前提があった。そうした心意気が詠まれた句だが、それに比して自分の現状ははなはだ心もとないものである。

漱石の句に因んで、『草枕』のページを開いてみる。唯一、本棚の漱石全集はほるぷの復刻版で、出版されたときのままの豪華装丁である。明治40年1月1日、春陽堂から発行されている。小説というには、筋のない話が続く。旅の絵描きが泊まった九州の温泉で、絵描きとその宿の娘那美さんとの会話が面白い。

「あなたは何処へ入らしつたんです。和尚が聞いて居ましたぜ、又一人散歩かって」
「えゝ鏡の池の方を廻って来ました」
「その鏡の池へ、わたしも行きたいんだが・・・」
「行って御覧なさい」
「絵にかくに好い所ですか」
「身を投げるに好い所です」
「身はまだ中々投げない積りです」
「私は近々投げるかもしれません」

絵描きは宿で持っていった英書を読んでいたが、日本語で読んでくれとせがまれてしぶしぶ読む。小説はぱっと開いたところに何が書いたあるか、それが面白い読み方と那美さんに教えている。その通りに『草枕』を読んでみると、なるほど面白く感じる。会話の部分には、ユーモアがあり、落語を聞いているような雰囲気がある。『草枕』は漱石40歳の作品。『猫』の執筆中、2週間ほどで書き上げた。テンポも話題も、漱石の小説の特徴がてんこ盛りの作品である。
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庄内柿

2021年10月13日 | 日記
柿の実があちこちで目立つようになった。昔はどこの家でも柿の木を植え、秋になると生った実を焼酎で渋抜きをして食べたが、家族が少なくなったり、ほかの果物がたくさん手に入るようになったせいか採らずに鳥のために木にならせたまま冬を迎える家が増えている。実際、写真のような大木になると、老人が一人で脚立をかけて収穫するのは難しい。山形大学農学部で教鞭をとっていた阿部襄先生に『庄内の四季』という随想があり、庄内柿の産地松山地区での柿採りの記事があって興味深い。昭和54年に書かれたものだが、先生の追想で戦後まもないころの光景も入り混じっている。むろん先生は柿農家ではなく、庭に植えた柿の木は、知り合いの農家の人が消毒や施肥をやってくれた。先生は、赤くな柿をもぎ、木箱に詰めて渋抜きをして知り合いに送る作業をする。

羽黒町にある松ヶ岡開墾地がある。ここには農業の研修道場があり、地区の青年が入所して実地の訓練が行われた。最初に始めたのが柿作りであった。
「農場の柿林は実にみごとなもので、柿の葉が広く、緑色が濃く、つやつやと光っているのをみるとこうもなるのかと思われた。柿の肥料には化学肥料は使用せず全部堆肥堆肥を施しているということであった。こうした栽培をしているので、ここの庄内柿は、粒も大きくとくに甘味が強く、庄内地区の最高品と言われている。」

入所していた青年たちが、自分の農地に帰って、習得した技術をもとに作らたのが名声高い庄内柿である。そろそろ、coopの店頭に庄内柿が並ぶ季節がやってきた。

丘の家に柿かがやけり田の家も 水原秋桜子
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