「おてしょ」はとりわけ用に用いる「小皿」の意。
広辞苑第四版には、「【御手塩】 (女房詞) 手塩皿(てしおざら)。」とあります。
漢字の意味するとおり料理の塩加減を調節するために小皿に盛った塩をさすますが、いつの間にか塩を盛っていた小皿その物を指すように変化したようです。
我が家ではこの「おてしょ」に塩を盛り、おにぎりを握る時に使っていました。文字通り「御手塩」という事になります。
我が家では「てしょざら」も同じ意味で用いていました。
例文
「おてしょ くれとくりや」=「小皿をください」
「おてしょ にまい おくりや」=「小皿を二枚ください」
「そこの おてしょ とって くりや」=「そこの小皿を取ってください」
「おてしょ おとしたら われちまった じ」=「小皿を落としたら割れてしまいましたよ」
「おしゃれな えがら の おてしょ だね」=「お洒落な絵柄の小皿ですね」
「おてしょ にんずうぶん ようい して くりや」=「小皿を人数分用意してください」
「いちまつもよう の おてしょ ろくまいぞろい ひとはこ」=「市松模様の小皿6枚揃い1箱」
「おおざら に もりつけられた りょうり を おてしょ に とりわける」=「大皿に盛り付けられた料理を小皿に取り分ける」
「そこ の あいいろ の おてしょ みっつ に やくみ の きざみねぎ もりわけて くりや」=「そこの藍色の小皿三枚に薬味の刻み葱を盛り分けてください」
山口の萩が故郷の私の祖母も使ってたし、たしか壷井栄の小説にも出てきたように記憶してます。
三河出身の友人も使いますし•••
東京辺りの居酒屋で「おてしょ下さい」といっても「はぁ?」と言われそうな感じはしますが•••
どちらかというと、方言というより「古語」なのかもしれません。
松本ではまだ生きたタームとして使われているのでしょうね。
おてしよはとても上品な言葉に聞こえました。初めて聞く言葉です。
調べてみるとかなり通用しそうなところがあるようです。
今回の松本弁については「信毎松本専売所」が発行した「信州松本 お国ことば」を参考にしていますが、この冊子には「おてしょ」の記載がありました。
大分前になりますが、近所の方から「おてしょ」は松本の方言で、宮中の女言葉というようなことをお聞きしたことがあり、てっきり松本でしか通用しない言葉だと思いこんでいました。
宮中で使われていた古い言葉が残っている松本市、素晴らしいと感じています。
これからまたいくつかの方言をのせてゆきますが、その中には言葉の響きが綺麗でないものや、標準語ではとんでもない意味になってしまうものもあります。