一七、最後の道程
スケール号は再びピンクの川の上空に戻って来た。緑の海の中に渦を巻くようにピンクの川が流れている。
以前に見た光景そのものだった。おばあさんの心の世界では、このピンクの川は、途中で流れが止められて、紫色に変色していたが、ここは健康そのもののようだった。
ただ見ているだけでは気づかないが、目前のピンクの川は、前に見たものよりはるかに大 . . . 本文を読む
一八、神ひと様
ついにやって来たのだ。みんなは窓の外の光景に釘付けになった。
初めて見る神ひと様。長い旅の果てにようやく巡り会う事が出来るのだ、その姿の一部始終を見逃さないようにと、誰の心も踊っていた。
だが、どうした訳か、次第にあらわになってくる光景は、乗組員達の心を裏切り始めたのだ。
人肌を接写したカメラが対象を捕らえながら . . . 本文を読む
「あっ、花だス。」
「ほんとでヤす。ほら、あの島のまんなかに見えるでヤす。」
霧で隠されていた島が現れたとき、その中央に咲く一輪の花が初めてみんなの目に止まったのだ。花は幾分オレンジがかった色味を帯びて、白い風景の中で浮かび上がるような光を放っているのだった。ここから見えるのだから、かなり大きな花に違いない。
「博士、あれは何でしょう。」
「もしかしたら神ひと様と関係 . . . 本文を読む
「この花がどうしたんだ。」艦長はもこりんに聞いた。
「ほら、覚えがないでヤすか。スケール号が巨大化していく間、ずっと窓から外を見ていたでヤしょう。」
「それで?」
「そのとき、一瞬、確かにこの花を見たでヤす。」
「そう言われれば、そんな気もするだスなぁ」
ぐうすかも、なんとなく、そんな気がして同意した。
「気づかなかったがなあ。」
ぴょんたは首を . . . 本文を読む
「博士、これは。」
「スケール号が、このプレートの文字を解読したのだ。」
「この言葉、聞いたことがあります。」ぴょんたが言った。
「そうでヤすね。えっと、どこでヤしたかね。」
「確か、ここにありて、はるか彼方にありしもの、我ら、太陽族の生まれた理由がそこにある。お日様がそう言っていただス。」
「そうそう、お日様が言っていましたね。」
「太陽族の伝説だと、確かそ . . . 本文を読む
「神ひと様、こういうことですね」
博士が口を挿んだ。
「私たちの身体は、原子でできています。皆もそれは知っています。それと同じように、神ひと様の身体は、太陽でできているということもこの目で見てきました。つまり原子と太陽は、大きさこそ違え、おなじ一族だと分かったのです。太陽族はものの単位として存在しているのだと。」
「そうじゃ、博士。知っての通り、我らの起原はともに太陽族か . . . 本文を読む
「きれいだス」
「こんなにきれいなことろだったのでヤすね。墓場だなんて言って、すまなかったでヤす」
皆は一様にこの美しい風景に魅了されていた。
湖の中州に、神ひと様のいる病院があった。といっても建物が在るわけではない。青々とした木々が茂り、そこからまっすぐに向こう岸まで歩道が伸びていた。皆が歩いてきた道だ。
その道を女性らしき人が歩いてくる。手に何かを持っていた。
. . . 本文を読む
一九、帰還
今回の旅で、スケール号を操る艦長の腕はずいぶん上達した。博士に言わせれば、ほとんど満点に近い出来だそうだ。
だから、もちろん一気に地球に戻ることも出来そうだったが、無理をしないで、少しずつスケールを戻して行くことに決めた。
もう一度世界をしっかり見ておきたいと言う思いがみんなの気持ちの中にあったのも事実だ。
スケール号はまず . . . 本文を読む
二十 エピローグ(博士の回想)
宴たけなわの頃、スケール号の隊員たちは、神ひと様の街を案内してもらうことになった。すっかり打ち解けた神ひと様の子供たちと隊員たちは、大はしゃぎで、案内の奥様について行った。
偶然、あの岸辺の足跡の謎が解き明かされた。
湖から続いていた足跡が、立ち止まったまま消えていたのだが、奥様に従って付いてきた隊員たちは、そこか . . . 本文を読む
7月7日七夕の日から、連載してまいりました、スケール号の冒険第4話は、38回で終了となりました。
長いあいだご愛読いただきましてありがとうございました。深く御礼申し上げます。
スケール号の冒険は、のしてんてん系宇宙(五次元)の解説として、書いたものです。全4話からなり、3話、4話を公開いたしました。
(1話、2話は、物語の舞台を設定するための作品で、特に五次元を正面からとらえたものでは . . . 本文を読む