十一、赤ちゃん星
スケール号は暗黒星雲の入り口にいた。
艦長の意識が集中して高まり、その一瞬、スケール号はピンクの銀河、メルシアの前から、メルシアのおなかの中にある暗黒星雲に縮小しながら移動したのだった。
乗組員達は軽いめまいを起こしている。まだこの瞬間移動に慣れていないのだ。
それにしても、 . . . 本文を読む
一二、最後の決戦
ある日、それは突然のことだった。赤ちゃん星が育っている暗黒星雲の中に、想像すらしなかったブラックホールが出現したのだ。気が付いたときには、ブラックホールは恐ろしい勢いで、暗黒星雲のエネルギーを吸い込み始めていた。
ブラックホールはいくら食べても満腹しない亡者のように、赤ちゃん星のために必要なエネルギーを吸い込み続け、ついには赤ち . . . 本文を読む
艦長も、博士も、頭をフル回転させた。何か方法を見つけなければ、スケール号もろとも、宇宙の塵と消えてしまうのだ。しかもあと五分で。
さあ、どうすればいい。落ち着いて、必死で考えるのだ。あきらめてしまいそうになる自分を奮い立たせるように、艦長は思いを巡らせた。時間がない。スケール号を操るだけでは素粒子爆弾を外すことは出来ない。船体に同化している以上、打つ手はない。ためしにスケ . . . 本文を読む
もこりんがようやく、命綱を手繰ってスケール号の背中までたどり着いた。刺された傷は大きいが、気力を振り絞って立ち上がった。
もう時間がない。四人は素粒子爆弾の箱の回りを取り囲んだ。
「艦長、爆弾は外せそうか、もう時間がないぞ。」博士がスケール号の中からマイクを使って話しかけて来た。
「何とかやって見ます。」
「四人で一度に持ち上げるだス。」
「よし、 . . . 本文を読む
十三、子守歌
スケール号の中は喜びに満ちあふれていた。大変な戦いだった。もしやと思った隊員達は皆、生きて戻って来たのだ。
無事を祝って乾杯もした。博士が特別にカカオジュースを作ってくれたのだ。うまい。
それにしても、ここはまるで病院のようだった。
もこりんはお腹に包帯を巻いている。カンスケのクチバシで突き刺されたのだ。
ぴょんたは右 . . . 本文を読む
十四、メルシアの約束
「よく帰りましたね。」
メルシアが優しく語りかけて来た。再び見るメルシアの姿は、さらに白く輝くローブに身を包んで、晴れやかな笑顔をしていた。
「メルシア、あなたの病気はよくなりました。病気のもとを退治してきました。」
艦長が胸を張って言った。
「よかった、なんとお礼を言っていいのか。・・・・それで . . . 本文を読む
「ありがとう、メルシア。たくさん教えを頂きました。感謝いたします。」
「いいえ、私は、あなた方の愛と勇気に動かされたのです。地球からここまで来られたものはあなた方のほかにありません。宇宙が生まれてから、あなたたちによって初めて成し遂げられたことなのです。あなたたちの旅が最後までうまくいくことを願っています。」
白いローブを着たメルシアは、話しが進むうちにその姿を変え始めていた . . . 本文を読む
一五、黒い海
スケール号はメルシアに礼を言い、その場を離れた。そしてさらにその体を大きくし始めたのだ。
スケール号がもとのネコの大きさから一億倍の大きさになって、地球の大きさになった。さらにその一億倍の大きさに拡大して暗黒星雲に至り、暗黒星雲の十万倍の大きさになってピンクの銀河に到達したのだ。
博士の計算ではここからピンクの川に行くに . . . 本文を読む
一六、チュウスケの秘密
スケール号は念のためにエネルギーのシールドを張った。船体が青い膜で覆われた。突然攻撃されても、シールドを張っておけば、スケール号の中は大丈夫なのだ。
いつしかスケール号は黒い海の上にやって来た。黒い海は静かで、様々な色が不気味にうごめき、ゆっくりと混ざり合っていた。
黒と思っていたのは実は無数の色が混ざり合っていたのだ。すべての . . . 本文を読む
「雨でヤす。」
「こんな雨、見たことないだス。」
雨は海面に落ちると。瞬間に黒い雲がもこりと立ちのぼり、それがしっぽの形になったり、魚や小鳥や、指や耳の形になって消えた。
雨が一粒落ちる度に海面にぽこりと小さなものの形が生まれて消えるのだった。
「何ですかあれは、気持ち悪いような、おもしろいような。」
「あの雨は、役目を終えて、目的を失ってしまったもの達なんだ。海 . . . 本文を読む