やがて橋の上に出た。千歳川が雪解けの水を乗せて豊富な流れとなっているその上を私達は歩いた。春を待ちわびるもののために、一刻も早く冬の残り香を海に運んでしまおうとするかのように、その早い流れは私達を包む夜気とよく調和していた。
橋をわたるとすぐホテルの前に出た。それがあまりに突然であっけなかったために、私は少なからず失望を覚えた。もう1時間はこうして歩いていたかった。
里依子の寮はそれから先の、ホテルからそんなに離れていないところだと言った。私は里依子を寮まで送るためにホテルの前を通り越し、更にその先を里依子を誘うように歩き始めた。里依子は黙って付いて来た。
その道は私が昼間に歩いた、右手に公園の林が続く路であった。私はそのことが何かホッとすることのように思われ、かたわらの里依子にそのことを伝えた。
「青葉公園というのです。」
暗い夜道にまぎれて、里依子が笑った。
HPのしてんてん
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます