偶然と言えば、つい2か月ほど前、大学の友人と酒を飲んで酔い潰れ、彼の寮に泊まった時に与えられたのが伊藤整の「若い詩人の肖像」であった。
そして数日前、しばらく里依子からの手紙がないことに不安を抱き、どうしても彼女に会いたくなって千歳までの航空券を買ったのだ。里依子に黙っていて、一瞬でも彼女に会う機会があればそれでいいと思っていた。そのことを千歳の居酒屋で打ち明けると、悪趣味だと里依子は笑った。
ところが実際には出発の前日に里依子からの手紙が届き、彼女の心に安心してその夜里依子に電話を入れたのであった。
その時彼女は驚いたようだが、爽やかな声で応えてくれた。
私が会いたいと言うと、土曜は小樽の親戚の家に行くことになっていて、次の日はニセコに帰るつもりだと言った。ニセコは彼女のふるさとであった。
私ががっかりした声を返すと、
「でも、じゃあ日曜は田舎に帰るのをやめにします」と明るい声が返ってきた。
私の心は突然100万ボルトの電飾が輝いたように思えるほどだった。
そしてこのとき、伊藤整と小樽散策を結びつけることになったのだった。
HPのしてんてん
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