その立体は見上げるほど大きく、千歳市の記念碑であることが知れた。そこにどのような意味がこめられているのか知る術はなかったが、目にしている立体は、簡素な大理石の前衛彫刻に違いなかった。鏡面のように磨かれたその立体の表面は明度の深い石の味わいがあり、そこにおや?と思わせる驚きが仕組まれていた。
一瞬立体が背景に溶けて透明に見えるのである。立体の表面に写った木立だと知るまでの間、私の心は完全に支配されていた。その写った木立が立体の背景に拡がる林の風景に溶解して一つの風景に見えているのだ。
私は美術を志す者として、この心憎い演出を前に意味もない対抗心をかき立てられて立ち尽くすのだった。
記念碑から右手に広い道がある。それがふもとまで続いているように思われた。ここは公園になっていて、ここはその正面の通りだと思われた。その証拠となるほとんどの物証は雪の中に覆われていたが、その痕跡が雪原の大雑把な形の上から伺い知れた。私はわざとその方向には行かず、左手のまだずっと続いている一条の足跡を追うことにした。
HPのしてんてん
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