のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

道立近代美術館 4

2009-09-14 | 小説 忍路(おしょろ)
無理をしている。そう思うと私は里依子が健気なもののように思えてならなかった。考えてみれば、千歳に発つ前日に突然電話をし、会いたいという私に田舎に帰る予定だった里依子がそれを取りやめて会ってくれたのだ。
 しかも明日、大切な仕事を控えていてどうしても休むわけにはいかない体を、風邪気味であるにもかかわらずこうしてやって来てくれた。それは私にとって言い知れぬ喜びだった。
 同時に私のためにこうまでしてくれる里依子に済まないという気持ちが盛り上がってきて、それが感謝の気持と混ざり合って私の胸に苦いものを積み上げていくようにも思えるのだった。
 しかしやがて元気にふるまう里依子を見ているうちに、彼女に会えた嬉しさがそんな私のすべてを包み込んでくれ、札幌の街が愛らしく輝くのだ。
 里依子の案内で私たちは地下鉄に乗り、道立近代美術館に向かった。
 地下鉄の電車は私の予想とは違って、頭が斜めにつぶされたようなユーモラスな形をしていた。そして車輪には大きなゴムタイヤがついていた。その車輪はホームに滑り込んできた車体の側面に、そのホームから上にもタイヤの孤を見せているほど大きなものであった。
 それを見たとき、昨夜北大の前の居酒屋で若い板前が話していたことを思い出した。彼はここの地下鉄は車輪がゴムでできていると言ったのだ。話には聞いていても、それはおそらく車輪の目立たない所に使われているのだろうと思っていただけに、思わず笑ってしまうのだった。






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