そんな私を前にして、里依子はやがて悲しげに私が一緒に帰ることを認めた。どうして彼女が苦しそうなのか私には理解できなかったが、しかしこのように里依子を苦しめることしかできない自分に、熱い怒りのようなものを感じないではおれなかった。
札幌の駅で預けておいた手荷物を受け取っている間に里依子は千歳までの切符を買って、それを私に渡した。その時の里依子を私はどのように表現していいのか分からない。
それは鮮明に私の瞼に焼き付きながら、その姿は私の理解を踏み越えたものだったのである。
切符を持った手を私に差し出したまま身を固くして私に近寄ってきた。そのぎこちない姿は悲しみを通り越した諦観のようでもあり、恥じらいの姿のようでもあり、あるいはまた、私を憐れむ姿のようにも見えた。
そんな里依子が怖いもののように思え、あるいはいじらしいもののようにも感じられて、私はただ曖昧に笑ってそれを受け取るしかなかった。
HPのしてんてん
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