クリームの森へ(3)
ばい菌Xの似顔絵は次々とばい菌たちの手に渡っていきました。
その絵を見て、ばい菌たちの間にどよめきが波のようにひろがっていきます。
どうやらスケール号への警戒心はなくなったようです。
どよめきがしばらく続いたかと思うと、ピタリと話し声が止まりました。
すると静まり返った群集が中央から割れるように動いて、スケール号まで一本の道が出来たのです。
その道を白髪のばい菌が杖をついて歩いてきました。
そしてとうとう艦長たちの前までやってきたのです。
「わしはこの国の国王じゃ。よくこんなところまでやって来られた。
ところでこのばい菌Xじゃが、町のものは確かに見たと言っておる。」
「そうですか、ばい菌Xは今どこにいるんですか」
艦長は喜んで王様に聞きました。
「それが、シャックリの毒を持っておってな、それをばらまいて銀行に押し入り、お金を奪って逃げたのじゃ。
その上、我らの姫をさらっての。町のものは追いかけたがとうとうクリームの森に逃げ込んでしまったのじゃよ」
「クリームの森というと、このサクランボの国が乗っているあのクリームの事ですか」
「そうじゃ。あそこは恐ろしいところじゃ、中は迷路のようになっていて、そこに迷い込んだものは一生出てくることが出来ないのじゃ。
町のものもそこでばい菌Xを追うのをあきらめたのじゃ。
今頃姫はどうしていることやら」
王様は心配そうにあごひげをなでながら言いました。
「お気の毒に、でも大丈夫、私たちが必ずばい菌Xを捕まえてみせます。お姫様もきっと無事に助け出して見せます」
艦長は胸を張って言いました。
「おおありがたい、あなた方は神様が遣わされた勇者様に違いない。どうか姫を助けてやってくだされ」
国王はひざまずいて頭をさげました。
「勇者様お願いします、勇者様お願いします」
ばい菌たちもいっせいに声をそろえて、そして頭を下げました。
「これはこの国に伝わる勇者の勲章じゃ。受け取ってもらいたい」
「ありがとう」
艦長は頭をさげて勲章を首につるしてもらいました。
「それからこれをもって行きなされ」
そう言って国王は小さなビンを差し出しました。
「これは?」
「シャックリに効く薬じゃ。ばい菌Xの毒には気をつけるのじゃ。もし毒にやられたらこれを一口飲めばよい」
ビンにはカプセルになったくすりが入っていました。
艦長はていねいにお礼を言ってそのビンを受け取り、隊員たちとともにスケール号に乗り込みました。
スケール号はくるりと一回転して空に舞い上がりました。
ばい菌たちは一斉に手を振りスケール号を見送っています。
サクランボの国はあっという間にあめ玉ほどの大きさになって下の方に見えます。
そのまわりにはまるで雲のようなクリームの森が広がっています。
スケール号はまっすぐクリ―ムの森にむかって急降下していきました。
ズボンと鈍い音がしてスケール号はクリームの森に飛び込みました。
まわりは真っ白です。ほかには何も見えません。
シーンと静まり返り物音一つ聞こえない不気味な空気が漂っています。
10 魔のソーダ、緑の海(1)
スケール号はふわふわと、クリームの中で揺れています。
ぷーんといい香が漂ってきます。
スケール号の中は甘いクリームのかおりで一杯になりました。
みんなは、さっきクリームソーダ―を飲んだのも忘れて、ごくりとツバを飲み込みました。
「ちょっと行ってきまスだ」
ぐうすかはそう言ったかと思うと、艦長の言う事も聞かずに一人で外に飛び出しました。
「待て、今外に出るのは危険だ」
艦長がそう言った時にはもう、ぐうすかはスケール号から飛び出して、クリームの壁にくらいついているのでした。
顔をクリームだらけにしてパクパククリームを食べています。
でもそのときぐうすかは顔をゆがめて苦しみ始めたのです。
「く、苦しい」
「どうしたんだぐうすか」
艦長は艦長はスケール号のマイクに向って叫びました。
「い、息が出来ません、助けて」
ぐうすかは顔を引きつらせて言いました。
「いきができないだって、すぐに戻るんだぐうすか」
「もう動けません、苦しい・・・」
「一体どうしたんだ、何が起こっているんだ」
「空気がないんでヤすよ艦長」 もこりんが勢いよく立ち上がりながら言いました。
「そうか、クリームの森は炭酸ガスで一杯なんだ。もこりん、ぐうすかを助けに行ってくれ」
「了解でヤす」
もこりんは水中呼吸器を片手に持ち、もう一つを自分の口につけて外に飛び出しました。
ぴょんたも後に続いて行きました。
すぐにもこりんはぐうすかを助け起こして、その口に水中呼吸器をくわえさせました。
ぐうすかはヒイーと大きな音を立てて息を吸い込みました。
「死ぬかと思っただス、みんなありがとうだス」
「ぐうすか、大丈夫か」
艦長がスケール号の中から話しかけました。
「気をつけろ、そこには空気がないんだ、そのかわり炭酸ガスで一杯なんだ。みんな呼吸器を口から放すな」
「わかりました」
「わかりヤした」
「わかっただス。でも残念だス」
ぐうすかはつい今しがた死にかかっていたと言うのに、クリームをなめられないことを残念がっています。
なぜって、みんな水中呼吸器をくわえているのですから仕方ありません。
まわりをよく見ると、そこはクリームで出来た丸いドームのような部屋でした。
「ぴょんた、まわりの様子を詳しく報告してくれ」
「はい艦長、ここはクリームで出来た大きなドームです、一面真っ白でどこが壁なのかよくわかりませんがとにかく大きな丸い部屋です。所々に出入り口のドアがついています。調べますか」
「気を付けてな」
「分りました」
ぴょんたとぐうすか、それにもこりんはそれぞれ別の扉を開いてその中を調べ始めました。
魔のソーダ、緑の海(2)
丸い大きな天井と壁、まるで白いボールの中に入ってしまったような部屋にいくつもドアがついています。
甘いかおりが漂うクリームの部屋の中にいると、まるで心まで真っ白になってしまいそうです。
ぐうすかと、もこりんと、ぴょんたは思い思いのドアを開けてクリームの部屋の探検を始めました。
どの扉を開けてみても、その向こうは同じような白いドームの部屋が続いていて、その中はがらんとしていました。
どこまで行っても何の変化もありませんでした。
もこりんはドアを開けるのがめんどうくさくなって、得意のつるはしを使い始めました。
壁に穴を開けて手当たり次第に部屋を調べていくのです。
でも不思議な事に、その穴は、もこりんが通り抜けるとまるで生きものように口をふさいでしまいました。
もちろん、もこりんは気付きません。
「艦長、どこに行っても同じ部屋ばかりで何もありません」
「艦長、もう何がなんだか分らなくなりヤした」
「何もないだス、きりがないだスよ艦長」
スケール号には次々と隊員たちの報告が入ってきました。
ケンタはお母さんがクリームを作ってくれた時のことを思い出していました。
ミルクを泡立てているうちにおいしいクリームが出来てくるのをケンタは不思議そうに見ていたのを覚えています。
「みんな、その部屋はきっと泡なんだ」
ケンタ艦長はマイクに向って言いました。でもそれならクリームの泡は一体いくつあるんだろう。
それこそ無限にあるんじゃないだろか。そんなことを考えていると、隊員たちから次の報告が入ってきました。
「艦長、大変です帰る道が分らなくなりました。一体どこにいるのか分りません」
ぴょんたの泣くような声です。
「艦長道に迷っただス、どうしたらいいだスか」
「艦長、おいらはどこにいるのでヤすか」
三人はクリームの森に迷い込んでしまったのです。
部屋にはいくつも同じドアがあって一度入り込んでしまったらどこから入って来たのかも分らないのです。
そればかりではありません。どこまで行っても何もない真っ白な世界の中にいて、もう身も心も真っ白になってしまっているのでした。
「帰りたいよ」
ぴょんたはとうとう大泣きしてしまいました。
「頭がへんになりそうだス艦長」
「もうこれ以上動けないでヤす。助けて艦長」
どこまで行っても同じ部屋ばかりで、みんなはもうへとへとになっていました。
その上帰りたくても帰れないと思うと、もう泣くしかありませんでした。
「ちょっと待て、いい方法がある。みんなそこを動くな。」
艦長はそう言ってスケール号のレーザーを使いました。
ピッピッとレーザーが回転して三人の位置が画面に浮かび上がりました。
三人はもうてんでバラバラの方向にいるのでした。
魔のソーダ、緑の海(3)
「みんな安心しろ、君たちの位置は確認できた。こちらから誘導する。とにかく帰るんだ」
艦長はバラバラにいる3人をまず一つの部屋に集めるようにみんなを案内しました。
それだけでも大変な時間がかかりました。
でもみんなは必死です。やっと三人が一緒になっていよいよスケール号に帰ろうとした時です。
「待った!」
興奮した艦長の声が聞こえました。
「もう一つレーザーに生き物の影がある」
「ばい菌Xですか」
ぴょんたがききました。
「わからん、とにかく調べてみてくれ、そのまま真っ直ぐ進め」
艦長の誘導でそこに行ってみると、ネズミが一匹倒れていました。
そのネズミはシャックリがひどくて今にも死にそうでした。
このままでは大変な事になるでしょう。
「とにかくスケール号までつれていくだス」
ぐうすかはネズミを背負いました。なんといってもぐうすかは力持ちです。そのまま3人はスケール号に帰ってきました。
「チュヒ、チュヒ、チュヒ」
ネズミはスケール号の中でも苦しそうにシャックリを繰り返しています。
「ばい菌Xのしわざに違いない」
艦長はそう言いながらばい菌の国でもらってきたシャックリを止める薬をネズミに飲ませました。
するとネズミのシャックリは嘘のように止まってしまいました。ネズミはみる間に元気な姿になったのです。
「はー、死ぬかと思ったチュ。助けてくれてありがとうでチュ」
ネズミはていねいにお礼を言いました。それを聞いてみんなは大喜びです。
ネズミは一人で歩いているところを後ろからばい菌Xの毒にやられたのだと言いました。
力を振り絞ってばい菌Xを捕まえようとしたがシャックリがひどくなってとうとう逃がしてしまったと、ネズミは説明しました。
そして、ばい菌Xの逃げた方向をスケール号の隊員たちに伝えました。
ばい菌Xはクリームの森を抜けてソーダ―水の海に向って行ったというのです。
ネズミは、スケール号の仲間がばい菌Xを捜していると知って、自分も仲間になりたいと言いました。
みんなは大歓迎です。
ネズミの名前はチュウスケと言いました。
でもこのとき、スケール号の乗組員でもないのに、ネズミがこんな小さな世界にどうしているのか、おかしいと思ったものはいませんでした。
ネズミのチュウスケは愛想がよく、助けてもらった恩返しのつもりでよく働きましたので、
いつのまにか昔からの仲間のようになったのです。
こうしてスケール号の仲間はチュウスケの案内でばい菌Xを追いかけることになったのです。
スケール号はクリームの森を猛スピードで進んでいきました。新幹線の速さで走っても、ばい菌のような大きさになったスケール号はなかなかクリームの森を抜ける事が出来ません。
ようやく前の方が緑色になってきました。
ゴーゴーと不気味な音が聞こえてきます。その音が少しずつ大きくなってきました。その先にソーダ―水の海があるのです。ばい菌Xはその海に逃げ込んで行ったようです。
もうすぐばい菌Xを追い詰められる。みんなの胸に希望がわき上がりました。
でも、ソーダ―水の海は今まで以上に恐ろしい魔の海だったのです。
そんなことも知らないスケール号の仲間達は、魔のソーダ―、緑の海に向って勇気りんりんと進んで行くのでした。
(つづく)
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本日はオープンの日、雪、降らないといいんだけど。
はるひ美術館による北籔和展(ナウイズムの夢)初日
2017/2/8~2/26
学芸員ブログなどでたぶん紹介されると思う
ブログ内の関連記事
ナウイズム宣言(改定)
もちろん気を使って小声でしたが、響いていると叱られ、あわててラウンジに出てから納得。そこからシャワー室の中での会話となった次第。
そんなこんなで、一人暮らしも馴染んできて、初日を迎えることができました。
結局初日からアーティストトークをする羽目になりましたが、よかったです。
宿に帰って、弁当を食って、いつの間にか寝てしまい、めがさめたら、朝。草引きの時間。自然に浜の石ころが目に浮かびます。
のしてんてん様
おはようございます!
ご来展の皆様に心のデッサンを
ご紹介くださいましてありがとうございま^す^
のしてんてん画伯心のデッサンファンといたしまして、
大変うれしゅうございます。
因みにわたくしは今、
スノークリスタル☆
天心極微(極美)雪の結晶をテーマに
心の線引きをさせて頂いております。
もちろん、天が造り出す瞬間瞬間一期一会の
天心極微(極美)クリスタルの形は、
わたしたち人類の心とも直結しており、
天心極微(極美)クリスタルの神秘の形は
宇宙極美創造物の設計図のようで
無我夢中になってしまいます♪
天心極微(極美)クリスタル
雪の結晶心のデッサン
のしてんてんさんにも
お薦めです^よ^
今日も瞬間瞬間一期一会☆
一瞬謳歌無限大♪
かけがえのない唯一無二の貴重な今!
どのような今でも、
今、今があることこそ奇跡の
今を謳歌!
素敵な1日をお過ごしください^ね^
感謝∞8∞八方拝です☆
こんにちは!
毎日コンビニのお弁当、牛丼では、
なんだか心もとないです^ね^
そこで『お手軽栄養三種の神器!』
納豆、海苔、くるみ
検索でご覧くださいましたら、
お手軽三種の優秀な栄養価が
お分かりいただけると思いますが、
納豆はもともと発酵食品ですから、
寒い今時分、冷蔵庫なしでも大丈夫でしょうし、
野菜不足には『ビタミンの宝庫海苔が一番!』
海苔をせっせとお願いいたします。
また、バナナもお手軽優良食品です^ね^♪
どうぞよろしくお願いいたします。
それではまた♪
懐かしき
浜の石ころ
こころの浜に
真鹿子(まかこ)
唯一無二の素晴らしい世界との、そこでしか出会えない奇跡、ご盛況を願っております。
良き展覧会になることを!
(私の方は私事で忙しくなりそうです。主に会社がらみで笑)
しかも、
天心極微(極美)クリスタル雪の結晶心のデッサン
見事な展開です。
なんだか目に見えてきそうです^よ^。
確かに、雪の結晶は神秘的。二つとない独自の形を作るといわれていますね。宇宙極美創造物の設計図そのものですね。
こころのデッサンでそれを楽しむのは、まかこさんの独創、すばらしいです。
まかこさんの生み出す結晶も、この世に二つとないもの。
描いた本人さえ、生まれた結晶との一期一会、さどかし恭悦のこととお察しいたします。
出来上がった何枚ものデッサンを後から眺めるのもいいでしょうね。
デッサンと宇宙詩をあわせると、ますます深い境地に進まれることでしょう^ね^。
それに朗読が加わりますと、三位一体の意思が現れるかも知れませんね。
食事・・・きをつけます。
人との出会いは本当に不思議なもので、神様の意思を感じるときがありますね。
わたしもそれを願っております。
お仕事、忙しくなるのですね。
無理をしないで、仕事もまとめて楽しむような生活を!!
ゆとりをもってすごしてください^ね^