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スケール号の冒険 第1話 (7)

2017-02-12 | スケール号冒険 第1話

  

 

チュウスケを捕まえろ(3)

 

 しばらくしてばい菌姫が言いました。

「ばい菌Xの声が聞こえます」
 ばい菌姫は目をつむったまま意識を集中させています。みんなは息を飲んでばい菌姫を見つめました。

「・・・今、ばい菌Xは助けを求めています」

「ふむそうか。ではばい菌姫、今までのことは許して助けてあげるからチュウスケの居場所を教えてくれるようにと、ばい菌Xに頼んでみてくれないか」

「はい・・・やってみます」
 ばい菌姫の体はますます明るくなり、鮮やかなピンク色に輝きはじめました。

「・・・ばい菌Xは、今までのことは反省しているといっています」

「そうか、わかってくれたのか」
 博士は嬉しそうにうなずきました。

「それで、ばい菌Xはどこに?」
「ばい菌Xはどこでヤすか」
 

 みんなはばい菌姫の口元に集中しました。ばい菌姫はまるで夢を見ているような表情をして口を開きました。

「本棚の下です」
「え、本棚の下だって?」
 ぴょんたが耳を立てて本棚に近づきました。

 ぴょんたの耳は地獄耳です。どんな小さな音でも逃がしません。耳をすませると確かに何かがいます。

 ゴソゴソと動いている音が聞こえるではありませんか。

「なにか動いている」
 小さな声でぴょんたが言いました。

 それを聞いてもこりんがそっと本棚の下にもぐりこみました。
 本棚の下にはちょうど板一枚分ぐらいの小さなすき間が空いていました。
 もこりんはモグラですから、簡単に土の中に潜ることが出来ますし、どんな小さなすき間だって入っていけるのです。

 中は薄暗く最初真っ暗に見えましたが、目が慣れてくると目の前にゴキブリが一匹隠れているのが見えました。

 もこりんがツルハシをかまえるとゴキブリは慌てた様に逃げ出しました。

 本棚の下から勢いよく一匹のゴキブリがでてきました。

「出てきたぞ、こいつにちがいない」
 艦長は紙を丸めて追いかけました。

 ゴキブリはかさかさ逃げ回りましたが、広い場所に出てしまうと、とても逃げ切れません。
 とうとう部屋の隅に追い詰められてしましました。

 艦長が丸めた紙を振り上げた時、ポンと煙が上がってそこにチュウスケが姿をあらわしたのです。

 

 

 チュウスケを捕まえろ(4)

 

「どうしてわかったのだチュウ」
 チュウスケがくやしそうに艦長をにらみつけました。

「あきらめるんだチュウスケ、もう逃げられないぞ」
「わたチュをなめるんじゃないチュウ」

 チュウスケは横に飛んでスケール号の操縦席を背にして身構えました。

「おとなしくばい菌Xを返すんだ」
 博士が大きな声で言いました。

 そのとき艦長が、博士の横からチュウスケめがけて光線銃を撃ったのです。

「チュウスケチュウチュウ!」
 呪文の声が響き渡りました。

 すると一瞬でチュウスケの前に氷の柱が出来たのです。
 艦長の放った光線銃の光が氷の柱に跳ね返されてしまいました。
そして反射した光がぴょんたに当たってしまったのです。

 ぴょんたは長い耳を稲妻のようにしびれさせたまま固まってしまいました。

「ぴょんた大丈夫か」

 艦長はあわててぴょんたを見ました。ぴょんたはビックリした顔のまま止まってしまっています。

「チュハハハハ、ばかめ、わたチュを怒らせるとどうなるか思い知らせてやるチュウ」
 そういうとチュウスケは再び呪文を唱えました。

「チュウスケチュウチュウ!」

 すると今度はスケール号の中が何もかもパリンパリンに凍りついてしまったのです。
 博士も艦長も、もこりんもぐうすかも、ばい菌姫もみんな凍りついて動けなくなりました。
 ぴょんたは光線銃で動けなくなった上に凍り付いてしまったものですから、その凍り方は気の毒なほどでした。

「チュハハハハ、どうだ動けまいチュウ」

 チュウスケはしばらく高笑いをしてからスケール号の操縦席に座りました。

「何をする気だ」
 艦長が凍りついたまま口だけを動かして言いました。

「スケール号を動かすのだチュウ」
「やめろ!お前には動かせない」

「だてにここで働いていたのじゃないチュウ。操縦方法はちゃんとこの目で覚えているだチュよ。バカめ」
 チュウスケは勝ち誇ったように言いました。

「やめるんだチュウスケ。危険だ、スケール号に命令してはいけない!」
 艦長は必死で言いました。

「何をバカなこと言ってるのだチュ。まあ見ているんだなチュウ」

 チュウスケは艦長と同じように操縦桿を握りました。
 チュウスケは艦長がスケール号を操縦するのを横で見ていて、すっかりその方法を覚えていたので。チュウスケは赤いボタンを押してスケール号に命令しました。

「スケール号、入り口をあけるんだ!」

 

 

チュウスケを捕まえろ(5)

 

 スケール号は、艦長以外のものが命令するとその反対の動きをするのです。
それを知らないチュウスケがいくら入り口を開けろと命令しても、スケール号は堅く入り口を閉ざすばかりでした。

「分ったかチュウスケ、お前にスケール号は動かせないんだ」

 艦長はチュウスケに何度も言い聞かせましたが、チュウスケは聞きません。

「よし、それなら一度ここから飛び出すチュウ。見ていろ、必ず動かして見せるチュウチュウ」

 チュウスケは艦長のやり方をまねてスケール号に命令しました。

「スケール号、飛び上がれ!」
「ゴロニャゴー」

 突然スケール号は狂ったように動き出しました。
船内が激しく揺れてチュウスケは床に投げ出されました。
ガリガリ大きな音が響きわたっています。

 スケール号がグラスの底を砕きながら下へ下へと潜りはじめたのです。

「うわ-、助けて、たチュけてくれー」
 チュウスケは床を転げまわっています。

「止まれ、止まるんだ」

 チュウスケの命令に、スケール号はますます大暴れをするばかりです。
すべてが凍り付いている中で、チュウスケだけがまるで飛び跳ねるピンポン球のようにスケール号の中を転げまわっています。

 スケール号を操縦しようと、魔法の杖を手放した後の出来事ですからチュウスケお得意の魔法もかけられません。

 とうとうチュウスケはテーブルの角に頭をぶつけて気を失ってしまいました。
するとチュウスケの魔法が解けて凍り付いていたみんなの体が動き出しました。

「スケール号、止まるんだ!」
 艦長は急いでスケール号に命令しました。

「ゴロニャ-ン」
 スケール号は優しい鳴き声を上げて動きを止めました。

 静かになったスケール号はもうグラスの底を半分以上も掘り進んでいるのでした。
チュウスケは目を回して床に倒れています。その間に艦長はばい菌Xを取り返してチュウスケを縛りあげました。

 

 

 

14 チュウスケをやっつける

 

「やったやった」

「ついにやったでヤすな」

「これで安心ダす」

「よかったよかった」
 博士はばい菌Xを確かめてほっとした様子で言いました。

「みんな、けがはないか?」
「はいでヤす艦長」
「大丈夫ダす」
「艦長・・・たしけて」
 見ると、ぴょんたがまだ、驚いたままで固まっています。

「おお、忘れていた。ぴょんたごめんごめん、すぐ動けるようにするよ」
 艦長は光線銃のボタンを「動く」の方に押してから、ぴょんたにむかって光を発射しました。

「ヒエーッ、」
 途中で止まっていた悲鳴をあげると、ぴょんたは元通りに動き始めました。

「大丈夫かぴょんた」
「ひどい目にあいましたよ艦長」
ぴょんたはちょっと文句を言いましたが、嬉しそうです。
「よかったダす」
「よかったでヤすな、ぴょんた」
「では帰るぞ」
 そういって艦長は操縦席に座りました。

「スケール号、飛べ!」
「ゴロニャ-ン」

 スケール号は音もなく飛び上がりました。ソーダ-水の中は相変わらずゴーゴーと音を立てて泡が昇っていきます。

「スケール号、あの泡に乗って上昇するのだ」

 艦長はもうソーダ-水の海をよく分っています。よく知れば、ソーダ-水の海も決して魔の海ではありません。

 スケール号はソーダ-水の中を泡とともに昇っていきました。やがて頭の上には真っ白なクリームの森が見えてきました。

 

 

 

15 帰ってきたスケール号

 

 スケール号は白いクリームの森を一気に突き抜けて外に飛び出しました。
そのクリームの上に、真っ赤な地球が姿を現してきました。

 そうです、そこはスケール号が最初に立ち寄ったところ、サクランボの地球だったのです。

「ゴロニャ-ン」

 スケール号はサクランボの地球に向ってどんどん降りていきました。

 真っ赤な地球は、最初つるつるした丸い形でしたが、スケール号が近づくとどんどん目の前に迫ってきました。

 すると何もないと思っていた表面に山や谷が見えてきした。

 窓から外を眺めていたばい菌姫が涙を流しました。そうです、目の前にはばい菌姫の国が見えているのです。

 ばい菌姫が帰ると、ばい菌の国では、お祭り騒ぎになりました。

 ご馳走が運ばれ、歌や踊りが次々と続いていきました。

 食いしん坊のぐうすかでも食べきれないほどのご馳走をいただくと、スケール号の隊員たちは上機嫌でスケール号に帰ってきました。

 スケール号の中には、チュウスケを縛っていたロープだけが輪になったまま床に落ちていました。

「逃げたか」
 艦長はロープを取り上げてちょっと残念そうに言いました。

「スケール号の入り口が開いたので、一目散に逃げ出したんだろう」
 博士が笑いながら言いました。

「とにかく、ばい菌Xを捕まえたんだ、我々も帰るぞ」
「おおーっ」
 

 艦長のことばに、みんなが元気よく声を合わせると、スケール号はすっとばい菌の国を飛び立ちました。

 窓の外には、ばい菌の群集がスケール号に向って手を振っています。
その中でひときわ美しく、ピンク色に輝いているのはばい菌姫でしょう。

「ありがとう」
 みんなの心の中にばい菌姫の声が届きました。

「ゴロニャ-ン」

 スケール号は一声ないて空の上で宙返りをしてお別れを言うと、あっという間に空高く舞い上がりました。

「スケール号、大きくなってもとの大きさに戻れ」
 艦長が命令すると、スケール号はどんどん大きくなっていきました。

 すると窓の外の世界がどんどん小さくなっていって、赤い地球のようなサクランボも、魔の緑の海も、もとのおいしそうなクリームソーダ-に変わっていくのです。

 こうしてスケール号は無事に帰ってきました。

 ばい菌Xの機嫌もなおり、すっかりいいばい菌になっていました。博士は大喜びです。
艦長は勇気りんりん、家に帰ってきました。

「ケンタ、どこに行ってたの」
 艦長の姿を見ると、お母さんが心配顔から急に嬉しそうな顔になって言いました。

「母さん、僕艦長になったんだよ」
「そう、艦長さん、お使いはどうしたの」
「へ、」
「へ、じゃないでしょうおばかさん」

 お母さんは文句を言いながら、ケンタに温かいミルクを飲ませてくれました。

 そしていつの間にかすやすやとテーブルにもたれて眠りこんでいるのでした。

              

  おわり

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とにかく今日で一旦家に帰ります。たぶん疲れております。

 

 

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