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「はァ?」係員は耳慣れないことを聞いたような顔をして、カウンター内を窮屈そうに通って私の方にやってきた。
私はすがる思いで事の一部始終をその係員に話し、荷物の受け取り場所を重ねて尋ねた。
「ああ、あそこ検査だけですから、すぐに取りに行ってください。まだそこにあるはずですわ。」係員は少し驚いた顔をし、気の毒そうな声で答えた。
「ええっ!!そうですか。」私は大声を上げた。その声は心の中の声だったのか口から出た声なのか自分でもよくわからなかったが、その一瞬で私の疑問は一気に解決したのだ。言われて見れば当たり前のことだ。私は全身が恥色のペンキを頭からかぶせられたようになった。
ほとんどの乗客が搭乗を済ませてしまっていた。私はいまや、直進行動しか出来ない機械のようになっていた。
荷物を取りに行かねばならない。しかも改札まで一番遠い搭乗口から。間に合うのか。私の頭の中はもうそれだけしかなかった。
手には搭乗券を持っていた。脇にはスケッチブックを抱えて。
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