メリーゴーランドはオルゴールの曲とともに、ゆっくりと回り始めた。たくさんの馬がゆるやかな波を描いて動いている。
「一体誰が、」そう思った時だった。メリーゴーランドの木馬の上に子供達の姿が見えたのだ。まるでそこだけが、昼間の光景を切り抜いて来て張り付けたように見えた。子供達は馬の動きに合わせて手を上げたり下げたりしてはしゃいでいる。夢を見ているのだろうか。
メリーゴーランドの音楽と子供達の歓声が夜の遊園地に響いて、闇に吸い込まれるように消えて行く。
「あれは消えた子供達なのでしょうか。」艦長が小さな声で博士にたずねた。
「あるいはそうなのかも知れない。とにかく向こうに気づかれないように様子を見るんだ。」
「あっ、ピピ!」ぴょんたが大声を上げた。
みんなの手がぴょんたの口に重ねられた。幸い気づかれなかったらしい。子供達は無邪気にメリーゴーランドを楽しんでいる。
その中に、赤い服を来た女の子の姿が見えるのだ。ピンクのリボンと靴、あのピピに間違いなかった。
「あれは確かにピピちゃんでヤす。まちがいないでヤす。」
「ピピちゃんを助けに行きますか。」ぴょんたが博士に聞いた。
「いや、だめだ。今何が起こっているのか、それを調べるのが先決だ。今は様子を見るしかない。」
「ピピちゃんはやっぱり何者かに捕まったんだよ。」
「でも、それじゃどうしてここにいるんだスか。」
「何か大きなものが動いているのは間違いない。とにかくもう話はなしだ。」博士はみんなに念を押した。
よく見ると、メリーゴーランドの子供達はピピを中心に動いているようだった。ピピが木馬の上でお姫様ごっこや、お馬の行進ごっこをしようと言うと、すぐに子供達はそれにしたがってその遊びを始めた。ピピがやめと言えば、それだけで子供達は遊びをやめる。無邪気に遊んでいるように見えて、しかし注意深く見れば、子供達はピピの言うなりになっているのが分かるのだ。子供達はピピを楽しませようとして、遊び相手になっているように見えた。
「昼間、あんなに木馬に乗るのを怖がっていたのに。」ぴょんたがつぶやいた。
ピピは、飽きる事なく、いつまでもメリーゴーランドの木馬の上で子供達と遊び続けた。
「いつまで続けるんでしょう。」艦長が言った。
「艦長、私達はこれから静かにスケール号に乗り込むことにしよう。」 「スケール号にですか。」
「そうだ、いいかね、あの子供達は、おそらく一時間もすれば消えて行くはずだ。その時、消え行く先をスケール号で追うのだ。」
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