のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

里依子 12

2009-10-08 | 小説 忍路(おしょろ)
やがてこの道が支笏湖に続いている国道だと分かった。支笏湖まで25キロという道路標識を見たとき、私は真っ先に里依子のことを思った。
 支笏湖は紅葉の深い秋晴れの日に、里依子が同僚達と一緒に闊歩したところであった。そのどこかに発電所の高台があって、胸に可愛らしい動物のイラストが入った白いセーターを着た里依子が支笏湖を背にして立っている。一枚のスナップ写真が届いたのはいつのことだったか。以来私は毎日机の上で里依子と支笏湖を見続けてきたのだ。
 私は再び歩こうと強く思った。行けるところまで歩いて、日が暮れたら帰って来ればいい。決して行きつきはしないだろうが、自分の足で澄み切った支笏湖に一歩でも多く近付きたい。
 激しい気持ちの高ぶりを足の裏から放出するように、私はぐんぐん歩き始めた。すると気持ちが少しずつ和らいでくる。
 しばらく行くと、小さな庭園が見えてきた。何気なく心をくすぐられて立ち寄ると標識に成吉思汗の庭園と書かれていた。
 そこはすぐ横手にある喫茶店の所有であるらしく、当店利用者の方のみ自由に入れます。という立て札があった。
 店に入り、庭園に入りたいのだがと伝えると、前掛けをした主人があっさりいいと言うので、私は喫茶店を利用もせずにその庭園に入って行った。
 庭園は千歳川の清流を引き入れて池をつくり、そこに島をかたどった築山をいくつも並べたもので、その島と島の間には思わせぶった橋が架けられていて歩いて島巡りが出来るのだった。その小さな橋に雪が降り積もっていた。


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