のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

北大 7

2009-08-28 | 小説 忍路(おしょろ)

 主屋に続く広い通りは左手に大きな木が巨人の世界を思わせるスペースで並木を作っており、右手には色調豊かな淡い色合いの木造建築が並んでいて夜の雪によく合っていた。
 大時計を間近に見上げ、やがて右に折れ、左手に主屋をかわしながら雪の残ったほとんど人の歩いていない白い地面に足を踏み込んでいった。当り前の所を歩いても面白くない。その時そう思ったのだ。
 主屋の側面が尽きるころ、雪の地面が一段低くなっているところに出た。そこからは土のむき出しいなっている細い道がまっすぐ西の方に伸びていた。キャンバスの上に墨で一本線を引いたように雪面に一丈の黒い線が沈み込んでいるように見えた。私はこの道を行けるところまで行こうと思った。北大の西の果てまで行ってみてもいいと思ったのだ。人影は完全に途絶えていた。
 道はいつまでも続いた。予想を超えてどこまで行ってもその道の果てはやって来なかった。闇の中で視界はせまく、どこを歩いているのか分からなくなる。気おくれがして幾度か引き返そうと考えたが、そのたびに思いとどまって私はその先に進んで行った。
 私はこの道の先に何があるのか知らなかった。未知なるものに向かう不安と期待が入り乱れ、せかされるように足を運んだ。道以外に雪ばかりが見えた。いつまでも変化はなかった。 



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