もう私たちはだめなのかも知れない。そういう思いを打ち消すことが出来ずに私は自分の心を苦しめた。それでもこの列車がいつまでも千歳に着かなければいいと思うのだった。私には何より彼女の傍にいることが重要な事のように思われ、どんなに胸を焦がしてもこのままいつまでも立っていたかった。
しかし列車は千歳の駅に止まった。私たちは重苦しい気持ちで列車から降り、駅舎から出た。
「寮まで送りませんよ。」
私は振り向いて里依子にそう云うと、彼女は嬉しそうな顔をしたように見えた。それが私の胸の暗い部分をガンガンと打ち鳴らした。私はもはや彼女と一緒にいることも出来ないのだと思った。
駅舎を出てすぐの街角に立ち止まり、私はじゃあと言って里依子に手を差し出した。
「これでもう会えないんですね。」
里依子はそう言って私の手を取った。
ちょうどその時、子供を連れた老人が通りかかり、里依子に声をかけた。まあ、と言って里依子は私の手を放してその老人の方に歩み寄った。偶然会ったごく親しい人のようで、老人が早口で近況などを語り始め、里依子は笑顔で応えるのだった。
私はしばらく二人の会話を見ているしかなかった。私たちはまださよならの言葉も交わしていなかったのだ。
それに気付いた里依子が振り向いて「じゃあ、さようなら。」と言った。
「それじゃぁ、元気で」
私はそれだけ言うと里依子に背を向けて歩きだした。
HPのしてんてん
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