やっとのことで道にたどり着いた。私はその硬い土の上がなんだかまだ揺れているように感じられた。歩めば応えてくれる黒い土が何より有り難いと思うのだった。
そしていま自分がやってきた雪原を振り返ってみた。整然と静まり返った雪肌の上に一条の乱れた体の跡が続いているのを見たとき、私は満足に似た気持ちと照れくさいような気持の混ざり合った、奇妙な感情を覚えた。
キャンバスにひいた一条の線のように、この痕跡は雪が溶けるまで残り続けるだろう。それは私の全身で描いた絵と言えるかも知れない。
日が昇ってあらわになったこの絵を見て、北大の学生たちは様々な物語を想像するのだろうか。
私は結局、北大の広さに翻弄されてしまったのだったが、その思いは何やら満ち足りた気持ちを広げてくれるようだった。
北大の門を出たとき、初めて寒さが背中の方から立ち上ってくるのを感じた。酒を飲みたいと思った。
ちょうど門を出たところの、その向い側に小さな居酒屋があって、私は選ばずそこに入った。カウンター式の、十人も座れば一杯になるほどの店であった。カウンターの中では若い男女が機敏に立ちまわっていた。
女の方は大柄で美人だった。そして男の方は背が高くやせ形でおっとりした若者だった。二人はどうやら夫婦であるらしく、息が合っていて気持ちのいい印象を私に与えた。
HPのしてんてん
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