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スケール号の冒険 第1話 (6)

2017-02-11 | スケール号冒険 第1話

 

 

12 怪盗チュウスケ(1)

「お前達は何者だ」
 ばい菌Xは渦巻きの玉を構えて言いました。

 するとばい菌Xの目の前にボーッと人の形のような影が浮かび上がりました。
 その影がはっきりすると、それはのしてんてん博士の姿になったのです。

 博士がスケール号の中から電波を送っているのです。

「ばい菌X、私だ。のしてんてん博士だよ」
「こんなところまで追ってきても、俺は捕まらないぞ」
「お前は本当はいいばい菌なのだよ。 逃げたりしないで帰ってくるのだ」
「うるせー、俺は誰の言うこともきかねえ。俺は宇宙の支配者になってやるんだ。この毒を使ってな」
 ばい菌Xは紫の袋に入った毒を揺らせて言いました。

「バカな事をいうな、その毒は人間の害になるばい菌をいいばい菌いするためのものだぞ。
 悪者が使うと大変なことになるんだ。無茶を言わないでそれを返しなさい」

「そんなに言うなら、まずお前からやっつけてやる」
 そう言ってばい菌Xは水鉄砲に紫の袋から毒を取り出して詰め込みました。

「ばかな事はやめるんだ」
「これでもくらえ」
 ばい菌Xは博士に向って毒入りの水鉄砲を撃ちました。

 毒は博士の体を通り抜けて艦長達のいる手前に落ちました。
 ソーダ―水の中ではあまり飛ばないようです。

「みんな気をつけろ。あの毒に当たると誰でもばい菌Xの言う事をききたくなるんだ」
 博士が大声で言いました。

「ちくしょう」
 ばい菌Xはとうとう渦巻きの玉を発射しました。

 ゴオオ―ッと大きな音を渦巻が博士の体を通り抜けて襲いかかってきました。

 博士の姿はゆらゆらと揺れて消えてしまいました。

 今度こそもう逃げられません。

 そのときです。

「チュウスケチュウチュウ」
 チュウスケの呪文の声が聞こえました。

 すると目の前に大きな氷の壁ができあがったのです。そして、その壁はばい菌Xの渦巻き攻撃を跳ね返したのです。

 しかしもう、ばい菌Xはもうそこにはいませんでした。

 ばい菌Xは高く飛び上がり、みんなの後ろに回っていたのです。

 ばい菌Xは次の攻撃のために身構えました。

 それを見てぐうすかが両手を大きく広げて見せました。

 ばい菌Xは一瞬ひるみましたが、ぐうすかの見かけ倒しの技はすぐに見破られてしまいました。
 

 それでもその合い間にみんなはばらばらになって、ばい菌Xを取り囲んだのです。

 

 

怪盗チュウスケ(2)

「これでもくらえ」
 ばい菌Xは水鉄砲をぐうすかめがけて発射しました。

 とっさにぐうすかはゴロリと寝ころがって水鉄砲から逃げました。
それと同時にもこりんが得意のつるはし投げをします。

 つるはしはクルクル回って相手に襲いかかると、そのままクルクル回ってもこりんのところに帰ってくるはずだったのです。

 ところが、ばい菌Xは逃げるどころか、そのつるはしに飛び乗ってしまったのです。
つるはしは、ばい菌Xを乗せたままクルクルともこりんのところに帰ってきました。

 そのつるはしの上でばい菌Xが水鉄砲をもこりんめがけて発射しました。

「あぶない!」
 ぴょんたが叫んでもこりんに体当たりしました。

 二人はもつれるように転がりました。

 その脇をばい菌Xの発射した毒が落ちていきました。

「ちくしょう」
 ばい菌Xがつるはしから飛び降りました。

 そのとき艦長が空に飛び上がりました。艦長の銀色の長靴は空を飛べるのです。
飛びながら艦長は腰につけた光線銃を引き抜きました。

 ばい菌Xは真下にいます。艦長は空の上からばい菌Xに向って光線銃を撃ちました。
黄色い光が稲妻のように走ってがばい菌Xの頭のてっぺんに当たりました。
するとばい菌Xはまるで氷ついたように動かなくなったのです。

 艦長の持っている光線銃は生き物を殺しませんが、その代わりに体を痺れさせて動きを止める効果があるのです。

「やっただス」
 ぐうすかが躍り上がって叫びました。

「よし、ばい菌Xが動き出す前に捕まえろ」
 艦長がぴょんたに言いました。

「わかりました」
 ぴょんたは腰につけたカバンから生物採集箱を取り出しました。

 それは片手でも持てるような四角い箱です。ふたの部分には採集と書かれた赤いボタンが付いています。

 ぴょんたはその赤いボタンを押しました。
 すると動かなくなったばい菌Xがあっという間に採集箱の小さな穴に吸い込まれてしまったのです。

「艦長、捕まえました」
 ぴょんたが得意そうに言いました。

「よくやった。みんな大丈夫か」
「大丈夫でヤす」
「怪我はないだス」
「異常なしでチュ」
 チュウスケも笑顔で応えました。

「博士、ばい菌Xを捕らえました。これからスケール号に帰ります」
「よくやってくれた。途中気を付けてな。泡に捕まると大変だからな」
「了解!」
 こうして艦長と隊員達、それにチュウスケとばい菌姫がスケール号に帰ってきました。
博士は大喜びです。

「これで世界は救われた。本当によくやってくれた」
 そう言いながら博士は生物採集箱を受け取りました。

 博士は箱についているスコープをのぞいてばい菌Xを確かめると、初めてほっとした顔になって言いました。

「これが世の中に広がったら大変なことになるところだった。本当によかった」
「博士、ばい菌Xはシャックリの毒だけではなかったのですね」
 艦長は博士からシャックリの毒のことしか聞いていなかった事に気付いて博士に聞きました。

「実はそうなんだ、あまりこのことが知れ渡ると困った事になるからね。だから君達には悪かったがこのことは黙っていたのだよ。
ばい菌Xの素晴らしいところは、何でも言う事をきく毒を造ることが出来ることなんだ。
この毒さえあれば、有害なばい菌を人間の言う事をきくいいばい菌に変えることが出来るんだ。
もうこの世から病気はなくなるんだよ」

「でもそれが悪ものに利用されたらどうなります」
 ぴょんたが心配そうに聞きました。

「悪のもがこれを使うと、世の中はみんな悪ものにされてしまうだろう。だから秘密にしたまま、ばい菌Xを捕まえたのだ。礼を言うよ」
 博士はみんなに頭を下げました。

「ばい菌Xはそんなに珍しい生き物なんでチュか?」
「そうだ、世界で一匹しかいないだろう。私が作った最高の傑作だよ」

「素晴らしいでチュ! もう一度わたチュにも見せてもらえませんでチュか」
「ああいいとも、このスコープからのぞくんだ」
 そう言って博士は生物採集箱をチュウスケに渡しました。

 チュウスケの目がきらりと光りました。

 

 

怪盗チュウスケ(3)

「ふふ・・・。これだチュ。これこそまさに、ばい菌X。やっと手に入れられたチュウ」
 チュウスケは、ばい菌Xの入った箱をなで回しました。

「ああ。君たちのおかげだよ」
 博士がニコニコと言います。

「・・・カン違いするなチュよ?」
 チュウスケが急に冷たい声で言いました。

「え?どういうことなんだ」
 博士が驚いてききかえしました。

「チュハハハハハハハ!おめでたいやつだチュな。まだ気が付かないのかチュウ。
 わたチュの本当の名前は、怪盗チュウスケ!!このばい菌Xをいただきにやってきたのチュ。 では、確かにこれをいただいてゆくチュよ」

 チュウスケは生物採集箱を片手にヒラリと後ろへ飛び退りました。

「その箱を返すんだ」
「チュハハ、せっかく手に入れたものをわざわざ返すバカがどこにいまチュか」
「バカな真似は止めろ チュウスケ」
「しつこいでチュね。 ま、館長さんがお人よしで助かったチュよ」

 とっさにもこりんがツルハシを構えました。

「チュウスケ、かくごでヤす!」

 ツルハシは輪を描くように飛んでいきます。

 ヒラリと、チュウスケがそれをかわしました。

「チュハハ!そんなものはきかないチュ」

 ツルハシはブーメランのようにもこりんの元へ帰ってきました。

「箱を渡せ!チュウスケ」

 今度は艦長が光線銃をチュウスケに向けました。

「まだわからないのかチュウ」
 チュウスケは軽く笑うと、箱を持っていない手を軽く振りました。

 とたんに、チュウスケの周りからもうもうと黒い煙が立ち昇ってきました。
 煙はまたたく間にチュウスケを包み込んでいきます。

「チュハハハハハハハ!!」
 高らかな笑い声を残し、チュウスケはとうとう煙で見えなくなってしまいました。

「待つんだチュウスケ!」
 館長はとっさに光線銃を撃ちました。しかし、手応えはありません。
 煙が消えると、そこには隊員たちだけが取り残されていました。
 チュウスケは煙とともにスケール号から消えてしまったのです。

 スケール号の中は、しんと静まり返っていました。
 ばい菌Xは、チュウスケに持ち去られてしまってのです。

 

 果たして、艦長たちはばい菌Xを取り返すことができるのでしょうか。

 

 

 

13 チュウスケを捕まえろ(1)      

 せっかく捕まえたばい菌Xを、怪盗チュウスケに持っていかれてしまいました。
 チュウスケはどこに行ってしまったのでしょう。

 スケール号の中を捜しても見つかりません。
 隊員たちはくたびれて床に座り込んでしまいました。

「最初から怪しい奴だと思っていたんでヤすがね」
「まさか泥棒だなんて思いもよらなかっただス」
「一体どこに逃げたんですかね」
 みんなはぐったりしています。

「船内で探していないところはもうありません、艦長」

「どうしましょう博士、チュウスケはもうここから逃げ出してしまったのかも知れません」
 艦長は困って博士にききました。

「いや、いくら魔法だといっても、このスケール号から出ることは出来ない。チュウスケは必ずこの中にいるはずだ」

「本当ですか博士」
「スケール号はどんな世界にでも入っていけるように出来ている。 魔法だってこのスケール号を通り抜けることは出来ないんだ」

「ということは、どういことなんでヤすか」
 もこりんがめんどくさそうにききました。

「つまり、チュウスケだってスケール号の入り口を開けない限り外に出ることは出来ないというわけさ」

「するとチュウスケはまだこの中にいるんですね。でも一体どこに・・・」
 艦長は考え込んでしまいました。

「まだこの中にいるのでヤすね、やいチュウスケ、どこにいるのでヤすか、返事をするでヤす!」

 もこりんはやけになって叫びました。

 

 

チュウスケを捕まえろ(2)

博士の説明で、チュウスケはまだスケール号の中にいることはわかりましたが、どれだけ捜してもチュウスケは見つかりませんでした。

「博士、何かいい方法はありませんか」
「ふむ、それなんだが・・・」
 博士も考え込んでしまいました。

「きっとチュウスケは魔法で隠れているのでヤす」
「透明になっているのダすか」
「魔法だから分らないでヤすよ」
「あーーっっ!!もう、どうしたらいいんだよ」
 ピョンタがいいました。

「チュウスケ出て来い!! かお出せ~~!!め出せーあたま出せ~」
 もこりんが、つるはしを振り回しながら叫びます。

「やめろよ、もこりん。そんな事しても無駄だよ」
「でもでも艦長!何かしないと」
 もこりんが、イライラとしながらいいました。

「あの・・・もしよろしければ、私がお役に立てるかもしれません。」

 さっきまでぐったりと横になっていたばい菌姫が、よろよろと起き上がって言いました。

「え?どういうことですか」
 艦長はばい菌姫を助けおこしました。

「私達ばい菌の仲間は、離れていてもお互いにテレパシーで話ができるのです。
 ばい菌Xがまだこの中にいるのでしたら、居場所はすぐにわかるでしょう」

「本当なのかい!ばい菌姫」
 博士が驚いてきき返しました。

「はい。ただしばい菌Xが生きていればの話ですが」

「それは大丈夫です。この光線銃は、少しの間敵の動きを止めるだけのもので、体に傷をつけるようなものではありませんから。いまごろ、採集箱の中で動き出しているはずです」
 艦長が言いました。

「では、少しやってみましょう」

 そういって、ばい菌姫は手を合わせてめをつむりました。
 スケール号のなかが、シーンと静まりかえりました。
やがて、ばい菌姫の体がピンク色に輝き始めたのです。

 

 

(つづく)

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今日はトークの日、緊張してない?

 

はるひ美術館による北籔和展(ナウイズムの夢)4日目

2017/2/8~2/26

  

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6 コメント

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無事トーク終わりました (のしてんてん)
2017-02-12 01:03:43
お父さんに連れられた3~4才の女の子がやってきました。

絵を不思議そうに見ていますので、声をかけますと、

「どうして名前がついてないの」
と聞いてきます。

「うーん、まだ名前がないんだけど、名前付けてくれるかな?」と問いかけますと、

女の子はちょっと指を口に当てて考えています。そしてしっかり私の作品に名前をつけてくれたのです。

44枚の組み作品を「地球のいのち」

f12号の卵が光っている作品を「希望の卵」

三角錐の上に横たわっている菊の花を「未来の花」

私はびっくりして、思わず抱きしめて、すごいすごいと喜びました。

女の子の言ってくれたタイトルは、私が思って描いた言葉とほとんど変わらなかったのです。

お父さんも、何のことかわからず、一緒に喜んでいました。

子供の感性はすごい。そう思わされた一瞬でした。


その後のトークでは、早速そのエピソードも使わせてもらいナウイズムの話につなげました。

作品を見ながらの話には臨場感があって、うまく伝わった気がします。

和歌山から、大阪から、東京から、そして地元のかたがた、作家仲間の大先輩と、気持ちのいい交流ができました。

早速、ナウイズム関東支部が生まれ、将来はナウイズム展をと、半分冗談のような話もまとまりました。

最後は焼肉にもつれていってもらい、ありがたい、うれしいうれしい一日となりました。

今日は宿が取れていなかったので、若者に混じってまんが喫茶体験。

使い方がわからないので、隣の子に教えてもらい、今PCを触っています。

ずいぶん若返っておりま^す^



返信する
☆ナウイズム関東支部誕生おめでとうございます♪ (真鹿子(まかこ))
2017-02-12 07:15:43
のしてんてん様


ナウイズム関東支部誕生!
おめでとうございます♪


それにナウイズムの 
聖なる申し子のようなお嬢ちゃん☆
素晴らしいです^ね^


ナウイズムの芽が次々に芽生え
元気よく育ってゆく様子、
うれしいかぎりです。


焼き肉も美味しそう!
喫茶体験も楽しそうですが、
お疲れが出ませんように
お願いいたします。


そして、若返られましたのしてんてん画伯☆
ますますのご活躍をお祈り申し上げます♪


追伸

ただし、あまりご無理はなさいませんよう^に^;;
返信する
すごい❗ (むっちゃん)
2017-02-12 07:34:21
ナウイズム展ならびにトーク、御成功おめでとうございます。

すごい、ですね。
幼い子供にも伝わる『絵』のすごさ、その『絵』から受け取ったメッセージを言語化できる彼女もすごい❗です。

数々の素晴らしい出会いを含め、御成功おめでとうございます。
返信する
実は・・・ (のしてんてん)
2017-02-13 11:40:14
漫画喫茶の話しです。
個室が満室で、椅子席しかなくて、夜行バスよりはましだろうと決め込んだのですが、さすが寝るには苦労しました。

そこで漫画に目を付けまして、前々から気になっていた漫画「エヴァンゲリオン」を読んでやろうと思いつきまして、書棚を探しましたらありました。

5巻まででタイムオーバーとなりましたが、
久しぶりに漫画を楽しみました^よ^

途中で出ましたので、この続きを次週という思いが出てきまして、せっかく予約していた宿をキャンセルして帰ってきました。

いいんかいなと思いながら、体力と相談しながら、気を付けて楽しみます^ね^
返信する
すごい!!すごい! (のしてんてん)
2017-02-13 11:52:47
幼い子供にも伝わる『絵』のすごさ

そんな視点で考えたことがなかったものですから、新鮮な驚きを頂きました。

既成概念に固まったお客さんを相手にしていて、長い説明を求められたあげく、でもねえの一言で覆るむなしさを、

実はその前に体験していまして、そこに現れた女の小を、比較の対象に考えてしまっていたようです。

既成概念に縛られない無垢の心の素晴らしさ、そんな風にしか見えませんでした。

確かに、
幼い心に、絵が通じた。
そう考えると、絵が描けている証しにもなりますし、
メッセージを言語化できる彼女もすごい❗
となるわけですね。

「この子は天才だよ」と、
お父さんと三つ巴で喜んだ風景が最高でした。

返信する
すごい❗ 2 (むっちゃん)
2017-02-13 15:20:09
いや、ホントスゴい。
伝わった、というのもスゴいですけど、それはマスター、画伯のこと、当然、というモノかも。

でも、伝わったからと言っても、それを言語化できるのは別次元の能力ではないのでしょうか?
その彼女、ホントスゴい❗
あやかりたい、くらいです(苦笑)。
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