のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

第 三 部  五、生けにえ (革 命)

2014-12-25 | 小説 黄泉の国より(ファンタジー)

革 命

 

  黒い森では再び激しい戦いが起こっていた。森を取り巻く警備隊の軍をその背後から、ユングの率いる民衆の反乱軍が襲い掛かったのだ。

 「解放軍万歳!」

  「警備隊を倒せ!」

  反乱軍の武器は棍棒や石がほとんどだったが、押し込められて鬱屈していた民衆のエネルギーが一気に解き放たれた勢いは、まるでダムが決壊して下流の建物をあっという間に押し流すような力をもっていた。

 反乱軍はすでに、王軍の三倍に膨れ上がっていた。その勢いに押されて王軍の指揮は乱れた。それを見て、森の中から『黄色いふだ』の戦士が攻撃に出た。

 前後を挟まれた王軍は横に走り、左右に割られて勢力を分断されると兵士達は士気をほとんど失った。二手に分かれた王軍はそのまま敗走し始めた。

 黒い森は完全に解放軍の手に落ちた。

  ユングが民衆にかつぎ上げられた。一段高くなった岩場にユングが立ち、民衆に向かって演説を始めた。

  「我々は我慢の限界に来ている。王は悪魔と手を結んだ。王は自らが生き延びるために我々の死ぬ権利を奪ったのだ。我々は正しく死に、そして新たな命を受け取る権利がある。もう、終わりのない苦しみはごめんだ。我らに新たなる命を、そして王には追放を!

 今や救い主が現れた。パルマとパルガは王城の中にいる。この悲惨で惨めな我らの境遇を廃し、世界を救うために王と悪魔に戦いを挑んでいるのだ。我らはどうしてもこの戦いに勝たねばならない。負ければ我らは永遠に苦しみ続けなければならないだろう。この苦しみから解放するのは今しかない。立ち上がるのだ諸君。今こそ王城を襲撃し、城を落とすのだ。王を倒すのだ。悪魔を追放するのだ。」

 大きな拍手が沸き起こった。

 「王を倒せ!」

 「我らの政府を作るのだ!」

 「王を倒せ!」

 「王を追放せよ!」

 民衆が口々に叫んだ。ユングは『黄色いふだ』と合流し、民衆と共に黒い森を動いた。解放軍は王の追放を叫びながら王城に向かって行進を始めた。セブズーの市街を通ると、さらにその勢力を増やした。中央通りを解放軍の行列が通り過ぎると、市街に残ったものはほとんど身動きの出来ないもの達だけだった。敗走した王軍の兵士達も多数投降して仲間に加わっていた。

 

 

         次を読む

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 二人で | トップ | 第 三 部  五、生けにえ (... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

小説 黄泉の国より(ファンタジー)」カテゴリの最新記事